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第3章
聞いてください!
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私は静先輩を軽く睨んでいた。
だって、先輩が1年生に嘘をついたらだめだよね!
入部するかしないかはっきり断れなかった私も悪いけれど、恋研メンバーじゃない私が、話しづらそうにしているこの子の『お願い』とやらを聞くわけにはいかない。
本当の事を話して、やっぱり帰ろう。
そう思って口を開きかけるとー……。
「良かった」
心底ほっとしたかのような女の子の表情に今度は私がぽかんとする番だった。
良かった? え、良かったって何が?
「女子の先輩もいたんですね! 私、部活が茶道部で女子の先輩ばかりで、男子の先輩と話す機会あんまりなくて、ここに来るまでどきどきしてたんです。女子の先輩がいるって聞いて安心しました」
女の子は人懐っこい笑顔を見せると私の両手をがしっと取った。
その勢いに私はたじろぐ。
「御手洗先輩!」
「は、はい!」
「私の話、聞いてくれますか?」
真剣なまなざしで見つめられて、困った私はすぐに静先輩達にSOSを求めた。
……求めたんだけど。
「まぁ、とりあえずこっちに座って俺の淹れた紅茶でも飲んでよ~」
静先輩は1年生に紅茶を淹れるべく電動ポットに向き合っていて、ジロー先輩にいたっては何やら応接テーブルに『依頼帳』と書かれたノートを広げていて全くこっちを見ていなかった。
「……」
がくっと力の抜ける私の手をぎゅっと握ったままの1年生。
期待感に満ちたそのキラキラした目の輝きに負けて、つい聞いちゃったんだ。
「えーと……話っていうのは、何かな……?」
「私の恋の悩みを解決して欲しいんです!」
苦しそうに、彼女は唇を噛んだ。
★
「私、間山莉理っていいます」
間山さんはうつむきながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
手には静先輩の入れたアッサムの紅茶の入ったティーカップ。
静先輩は私とジロー先輩にも「おかわりいる~?」と聞いて、カップに2杯目を注いでくれた。
「1年B組です。恋研のことは同じ茶道部の先輩から聞いて、ここだったら私の悩みを何とかしてくれるんじゃないかって」
間山さんの話を聞きながら、うんうん頷く静先輩。
「まぁね。うちには優秀な人材が3人も在籍しているからね」
……3人は少ないんじゃないかなぁ。それに私まだ部員じゃないし。
自慢気な静先輩とは対照的に、ジロー先輩は黙々とノートにペンを走らせている。
「その先輩にも相談したんですけど、アドバイスするのは難しいって言われちゃって。もう、私この気持ちをどうしたらいいか分からなくて、そんな時に、先輩がぽつりと言ったんです。そこまで悩んでるならいっその事、恋研に相談してみるのはどう? って」
「そっかそっか。恋研の誉高さは茶道部にまで届いてるんだね。部長としてはなんか嬉しいなー。で? 茶道部の先輩、なんて言ってた? どんな風にうちのこと褒めてた?」
ソファーにふんぞり返る静先輩の視線を受けて、間山さんは膝に手を添えて、少し考えた。
「先輩が言ったとおりの事、伝えていいんですか?」
「いいよ! もちろんだよ! 超ウェルカム!」
「静、止めといたほうがいいと思うぞ」
書記に徹していたジロー先輩が口を挟む。
「何言ってんの、ジローちゃん。誉め言葉っていうのはね、ただ待ってても降って来ないんだよ。歩いて自分でつかみ取らなきゃいけないんだよ」
さぁ、どうぞ! 静先輩が間山さんに向き直る。
「本当に、いいんですか?」
間山さんが念を押した。
だって、先輩が1年生に嘘をついたらだめだよね!
入部するかしないかはっきり断れなかった私も悪いけれど、恋研メンバーじゃない私が、話しづらそうにしているこの子の『お願い』とやらを聞くわけにはいかない。
本当の事を話して、やっぱり帰ろう。
そう思って口を開きかけるとー……。
「良かった」
心底ほっとしたかのような女の子の表情に今度は私がぽかんとする番だった。
良かった? え、良かったって何が?
「女子の先輩もいたんですね! 私、部活が茶道部で女子の先輩ばかりで、男子の先輩と話す機会あんまりなくて、ここに来るまでどきどきしてたんです。女子の先輩がいるって聞いて安心しました」
女の子は人懐っこい笑顔を見せると私の両手をがしっと取った。
その勢いに私はたじろぐ。
「御手洗先輩!」
「は、はい!」
「私の話、聞いてくれますか?」
真剣なまなざしで見つめられて、困った私はすぐに静先輩達にSOSを求めた。
……求めたんだけど。
「まぁ、とりあえずこっちに座って俺の淹れた紅茶でも飲んでよ~」
静先輩は1年生に紅茶を淹れるべく電動ポットに向き合っていて、ジロー先輩にいたっては何やら応接テーブルに『依頼帳』と書かれたノートを広げていて全くこっちを見ていなかった。
「……」
がくっと力の抜ける私の手をぎゅっと握ったままの1年生。
期待感に満ちたそのキラキラした目の輝きに負けて、つい聞いちゃったんだ。
「えーと……話っていうのは、何かな……?」
「私の恋の悩みを解決して欲しいんです!」
苦しそうに、彼女は唇を噛んだ。
★
「私、間山莉理っていいます」
間山さんはうつむきながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
手には静先輩の入れたアッサムの紅茶の入ったティーカップ。
静先輩は私とジロー先輩にも「おかわりいる~?」と聞いて、カップに2杯目を注いでくれた。
「1年B組です。恋研のことは同じ茶道部の先輩から聞いて、ここだったら私の悩みを何とかしてくれるんじゃないかって」
間山さんの話を聞きながら、うんうん頷く静先輩。
「まぁね。うちには優秀な人材が3人も在籍しているからね」
……3人は少ないんじゃないかなぁ。それに私まだ部員じゃないし。
自慢気な静先輩とは対照的に、ジロー先輩は黙々とノートにペンを走らせている。
「その先輩にも相談したんですけど、アドバイスするのは難しいって言われちゃって。もう、私この気持ちをどうしたらいいか分からなくて、そんな時に、先輩がぽつりと言ったんです。そこまで悩んでるならいっその事、恋研に相談してみるのはどう? って」
「そっかそっか。恋研の誉高さは茶道部にまで届いてるんだね。部長としてはなんか嬉しいなー。で? 茶道部の先輩、なんて言ってた? どんな風にうちのこと褒めてた?」
ソファーにふんぞり返る静先輩の視線を受けて、間山さんは膝に手を添えて、少し考えた。
「先輩が言ったとおりの事、伝えていいんですか?」
「いいよ! もちろんだよ! 超ウェルカム!」
「静、止めといたほうがいいと思うぞ」
書記に徹していたジロー先輩が口を挟む。
「何言ってんの、ジローちゃん。誉め言葉っていうのはね、ただ待ってても降って来ないんだよ。歩いて自分でつかみ取らなきゃいけないんだよ」
さぁ、どうぞ! 静先輩が間山さんに向き直る。
「本当に、いいんですか?」
間山さんが念を押した。
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