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第2章
美味しい紅茶と古書資料室
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学校の図書室を通り過ぎ、その隣の『古書資料室』の戸が開かれる。
「じゃーん! ここが恋研の部室(仮)でーす!」
満面の笑みで部室の紹介をしてくれる静先輩をぎぎぎっと音のしそうなほどぎこちなく見上げて、私は質問した。
「ここが、先輩達の部室なんですね?」
「そう!」
「ところで、今って放課後ですよね?」
「そう!」
「……なんで私はここにいるんでしょう?」
「なぜなら、俺達が夏帆ちゃんを2年A組から拉致って……じゃなかった。恋研のことを知ってもらおうと思って招待したからだよ~」
てへっと笑う静先輩に悪びれる様子は全くない。
昼休み、「まぁ、詳しくは後で説明するね!」と言って一度は自分のクラスへ帰って行った先輩達は、言葉どおり放課後、再び2年A組へやって来た。
帰る支度をしていた私はあれよあれよと右脇を静先輩、左脇をジロー先輩に抱えられ、捕らえられた宇宙人よろしく古書資料室に連れて来られたんだけど。
「夏帆、立ち話もなんだからとりあえず、その辺に座れよ」
「はぁ……」
ジロー先輩に促されて、破れて中が少しむき出しになった古いソファーへ腰かける。
「今、温かい紅茶淹れるね~」
「え、学校で紅茶?」
「古いポットを卒業した先輩に譲ってもらったんだ~」
差し出されたティーカップには綺麗に抽出された紅茶が注がれて、とてもいい香りがする。
「今日はアッサムにしてみましたー」
「あ、ありがとうございます」
どうぞどうぞ、と勧められて、カップを口に運ぶと、ほっとする味がたちまち口の中に広がった。
「おいしい……!」
「静は大の紅茶党だからな。紅茶を淹れる腕だけは確かだ」
「だけって何。だけって」
緊張が少しほぐれて、私は改めて先輩達の部室を見回す。
広さは8畳くらい。かつては来客用として使われていただろう茶色のソファーに、足の長さの揃わないガタガタした応接テーブル。
備え付けの古い本棚が部屋の両サイドにあってその中にはびっしり漫画が収まっている。
棚に入りきらなかったのか床にも漫画のタワーがいくつも出来ていて、ぶつかったらたちまち崩れて大変な事になりそうだ。
……それにしても、ここに置いてある漫画ってどれも。
「少女漫画?」
「そうだよ。これ、ぜーんぶ少女漫画!」
私の言葉に静先輩が胸を張った。
壁に目をやれば、月間マリーゴールド新人賞締め切り日と書かれたA4サイズのポスターが貼られている。
「じゃーん! ここが恋研の部室(仮)でーす!」
満面の笑みで部室の紹介をしてくれる静先輩をぎぎぎっと音のしそうなほどぎこちなく見上げて、私は質問した。
「ここが、先輩達の部室なんですね?」
「そう!」
「ところで、今って放課後ですよね?」
「そう!」
「……なんで私はここにいるんでしょう?」
「なぜなら、俺達が夏帆ちゃんを2年A組から拉致って……じゃなかった。恋研のことを知ってもらおうと思って招待したからだよ~」
てへっと笑う静先輩に悪びれる様子は全くない。
昼休み、「まぁ、詳しくは後で説明するね!」と言って一度は自分のクラスへ帰って行った先輩達は、言葉どおり放課後、再び2年A組へやって来た。
帰る支度をしていた私はあれよあれよと右脇を静先輩、左脇をジロー先輩に抱えられ、捕らえられた宇宙人よろしく古書資料室に連れて来られたんだけど。
「夏帆、立ち話もなんだからとりあえず、その辺に座れよ」
「はぁ……」
ジロー先輩に促されて、破れて中が少しむき出しになった古いソファーへ腰かける。
「今、温かい紅茶淹れるね~」
「え、学校で紅茶?」
「古いポットを卒業した先輩に譲ってもらったんだ~」
差し出されたティーカップには綺麗に抽出された紅茶が注がれて、とてもいい香りがする。
「今日はアッサムにしてみましたー」
「あ、ありがとうございます」
どうぞどうぞ、と勧められて、カップを口に運ぶと、ほっとする味がたちまち口の中に広がった。
「おいしい……!」
「静は大の紅茶党だからな。紅茶を淹れる腕だけは確かだ」
「だけって何。だけって」
緊張が少しほぐれて、私は改めて先輩達の部室を見回す。
広さは8畳くらい。かつては来客用として使われていただろう茶色のソファーに、足の長さの揃わないガタガタした応接テーブル。
備え付けの古い本棚が部屋の両サイドにあってその中にはびっしり漫画が収まっている。
棚に入りきらなかったのか床にも漫画のタワーがいくつも出来ていて、ぶつかったらたちまち崩れて大変な事になりそうだ。
……それにしても、ここに置いてある漫画ってどれも。
「少女漫画?」
「そうだよ。これ、ぜーんぶ少女漫画!」
私の言葉に静先輩が胸を張った。
壁に目をやれば、月間マリーゴールド新人賞締め切り日と書かれたA4サイズのポスターが貼られている。
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