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八岐大蛇 です。
ここで です。
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サワは、上下しないユウの胸を見て頭が真っ白になった。
「ユウ!なんで、起きないの!?ユウ!」
サワはユウに声をかける。震えた声で、ユウの名前を必死に呼ぶ。ユウはピクリとも動かない。グッグッと心臓の上に手を重ねて蘇生させようにも、サワ自身も大怪我を負っていて力をかけられない。
静かに眠るみたいな綺麗な顔をしたユウの頬に、サワの涙が落ちる。
「ユウ…絶対に死なないで」
サワは大きく行きを吸い込んで、ユウの唇に自分の唇を持っていく。そして数秒かけてユウに息を吹き込む。
※※
水に沈んでいくような感覚に体が包まれる。いつからだろう、僕に求められるのは常に完璧な姿。偉大な母のせいか、あるいは、青い瞳を持った不義の子と思われるからか。理由は何だって良かったんだ。勉強も訓練も嫌いじゃない。だから、それに集中していられた。それなのに、いつも、いつも、僕の側で無駄話をしたり、馬鹿みたいに笑ったり、それでいて真剣で、誰よりも真面目な人が居るから、いつも心のどこかで、油断が出来てしまう。僕が目指すべき完璧から遠ざかってしまう。でも、それが、僕に色んな景色を見せてくれるんだ。見慣れたはずの空も、海も、川も、森も全部明るく色付いて世界が輝いて、小鳥のさえずりも、虫の鳴き声も、風の撫でる感触も変わっているんだ。口調も態度も全部、気がつくとちょっと君の真似をしてしまう。
逢いたい!
全て、僕の五感をまるで別物に変えてくれた、君に逢いたい!ここで、死ねない。僕はまだ、生きないとダメだ!
誰かが、僕の腕を掴んで沈む体を引き上げてくる。君は誰?眩しい水面が歪んでいく。
※※
ゴホゴホむせるような咳をして、ユウは目を覚ます。
サワは、涙と傷と砂でボロボロになった顔を手で強引に拭う。そして、目を覚ましたユウに抱きついた。生きてる。心臓の鼓動が聞こえる。
「良かった、生きてる」
「サワ、ありがとう」
ユウはサワの背中をトントンと優しく叩く。サワの温もりが手に伝わる。
「愛しい人と引き換えに命を落とす、そんな覚悟で戦ったんだが、僕は、いつも、サワに助けられてばかりだから」
「私が死なせない、ユウのこと」
ユウはサワの言葉を聞いて、ハハハと声を出して笑う。
「本当に心配したんだよ?」
何がおかしいの?と言わんばかりのサワ。
「分かってるよ。サワは僕が守る。約束しよう」
「一つ、お願い、聞いて」
「うん?」
「もう少し、こうしていて良い?」
サワは、ユウの隣で安らいだ顔を見せた。ユウは、サワの手を握って、お互いの呼吸を重ねるみたいにする。
しばらくして、3人が降りてくる。
「ゆ、ユウ?」
気まずそうにするイチナとシキ。
「シキ、」
「二人とも立てますか?」
「痛そう」
イチナは、サワの脚を見るや否や顔をしかめた。
「サワには、瑠璃に乗ってもらおう」
「ユウは大丈夫なのか?」
「あぁ、サワが助けてくれたからな」
「良かった。まあ、それはいいんだけどよ、その…」
「うん?」
「上、着ないのか?」
ユウはペタペタと胸の辺りを触って、上半身裸であることに気がついた。
「あ!破いてそのままだ!」
「気まずいだろう!」
「ごめん、ごめん、」
「まぁまぁ、二人とも無事だったんだし」
「ユウ!なんで、起きないの!?ユウ!」
サワはユウに声をかける。震えた声で、ユウの名前を必死に呼ぶ。ユウはピクリとも動かない。グッグッと心臓の上に手を重ねて蘇生させようにも、サワ自身も大怪我を負っていて力をかけられない。
静かに眠るみたいな綺麗な顔をしたユウの頬に、サワの涙が落ちる。
「ユウ…絶対に死なないで」
サワは大きく行きを吸い込んで、ユウの唇に自分の唇を持っていく。そして数秒かけてユウに息を吹き込む。
※※
水に沈んでいくような感覚に体が包まれる。いつからだろう、僕に求められるのは常に完璧な姿。偉大な母のせいか、あるいは、青い瞳を持った不義の子と思われるからか。理由は何だって良かったんだ。勉強も訓練も嫌いじゃない。だから、それに集中していられた。それなのに、いつも、いつも、僕の側で無駄話をしたり、馬鹿みたいに笑ったり、それでいて真剣で、誰よりも真面目な人が居るから、いつも心のどこかで、油断が出来てしまう。僕が目指すべき完璧から遠ざかってしまう。でも、それが、僕に色んな景色を見せてくれるんだ。見慣れたはずの空も、海も、川も、森も全部明るく色付いて世界が輝いて、小鳥のさえずりも、虫の鳴き声も、風の撫でる感触も変わっているんだ。口調も態度も全部、気がつくとちょっと君の真似をしてしまう。
逢いたい!
全て、僕の五感をまるで別物に変えてくれた、君に逢いたい!ここで、死ねない。僕はまだ、生きないとダメだ!
誰かが、僕の腕を掴んで沈む体を引き上げてくる。君は誰?眩しい水面が歪んでいく。
※※
ゴホゴホむせるような咳をして、ユウは目を覚ます。
サワは、涙と傷と砂でボロボロになった顔を手で強引に拭う。そして、目を覚ましたユウに抱きついた。生きてる。心臓の鼓動が聞こえる。
「良かった、生きてる」
「サワ、ありがとう」
ユウはサワの背中をトントンと優しく叩く。サワの温もりが手に伝わる。
「愛しい人と引き換えに命を落とす、そんな覚悟で戦ったんだが、僕は、いつも、サワに助けられてばかりだから」
「私が死なせない、ユウのこと」
ユウはサワの言葉を聞いて、ハハハと声を出して笑う。
「本当に心配したんだよ?」
何がおかしいの?と言わんばかりのサワ。
「分かってるよ。サワは僕が守る。約束しよう」
「一つ、お願い、聞いて」
「うん?」
「もう少し、こうしていて良い?」
サワは、ユウの隣で安らいだ顔を見せた。ユウは、サワの手を握って、お互いの呼吸を重ねるみたいにする。
しばらくして、3人が降りてくる。
「ゆ、ユウ?」
気まずそうにするイチナとシキ。
「シキ、」
「二人とも立てますか?」
「痛そう」
イチナは、サワの脚を見るや否や顔をしかめた。
「サワには、瑠璃に乗ってもらおう」
「ユウは大丈夫なのか?」
「あぁ、サワが助けてくれたからな」
「良かった。まあ、それはいいんだけどよ、その…」
「うん?」
「上、着ないのか?」
ユウはペタペタと胸の辺りを触って、上半身裸であることに気がついた。
「あ!破いてそのままだ!」
「気まずいだろう!」
「ごめん、ごめん、」
「まぁまぁ、二人とも無事だったんだし」
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