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仲間入り です。
シキ です。
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木と木の間を縫うように光が差し込む。ユウはザクザクと落ち葉がたまった土を踏みしめる。
「熱を下げる薬だ。これを、飲みなさい」
ユウは男に丸薬を渡す。
「そんなものはいらない。自分で治す」
横になっている男。イチナが男にかけられたタオルケットのようなものを掛けなおす。
後ろからやって来たサワがユウに話しかける。
「ユウ、本気でその人も連れていくの?」
「剣についてよく知っている様子だし、腕っぷしも強い。それに、剣を探す人であれば、いずれか会うことになるだろう」
「私は賛成できないね」
「どうして?」
「仲間に加えるってことは、この男の行動に私たちだって少なからず影響を受けるってこと。会ってすぐに、祝言を挙げないか なんて言うし、私たちがなにもしていないのに手を挙げるような人だよ」
サワの言うことにも納得はできたが、ユウ的にどうもこの男は気になる。仲間として、共にこの長い旅を助け合えるように思えた。
この男、僕とやりあったときに、頑なに人の体にいくつかある急所を外して攻撃していた。あれほどの体術の腕前であれば急所は知っているはずだ。初めに、僕を投げたときも、頭からいかないように襟と袖を最後まで掴んでいた。サワに対しては攻撃を仕掛けていなかったように見えた。だからといって、完全にこの男を信頼しているわけではないが。
「仲間?そんな甘ったるい関係性に足を入れる私ではない。私は、8年も旅をしている」
「イチナさん、どう思う?私は、彼と旅をしてみたい」
日夜もっともこの男の側で、男の看病をしてくれたイチナ。男が熱にうなされていた夜も、イチナは甲斐甲斐しく世話を焼いていた。イチナはもともと、薬師補佐という看護師のような職も経験していたらしい。それでも、並みの人には出来ないだろう。敵の可能性がある男の看病など。
イチナは、肌身離さず持っている弓と矢筒に入った矢を、一本取り出して、キリキリと構えた。
「な、何をするんだ?」
男は、イチナの動向に注目せざるを得ない様子だった。イチナが弓を構えると空気がピンと張りつめる。
放たれた一本の矢は、100mは離れている木になっている果実に刺さった。果実はボトンと矢の勢いを受けて、地面に落ちた。
男はゴクリと唾を飲んだ。
「私は、この男が仲間になっても良いと思う。でも、私たちは、貴方が思っている程、弱くはないし、意志もある。それは、わかってほしい」
生まれてはじめてだ。この女だけは敵にまわしたくない。そう思ってしまた。
イチナはいつになく真剣な眼差し。
サワは、一度ムッと顔をしかめた。しかし、サワは口を開いた。
「二人がそう言うのなら、それは尊重する。私たちはまだ旅の途中だから、時間はかけられない。早く、体を治しなさい」
サワは、とても苦い丸薬を男が口を開こうとした瞬間に口にめがけて投げた。綺麗な放物線を描き丸薬は口に吸い込まれる。丸薬は口内の水分ですぐに溶ける。
「綺麗な花にはトゲがある。とはよく言ったものだな」
男はヘラっと笑った。サワはあきれたと言わんばかりの表情をしてから、男とイチナの元から離れる。ユウはそのサワは追って離れる。
急に二人だけ残された。男とイチナ、微妙に気まずい空気が流れる。
「ところで、貴方、お名前はなんて言うの?私は、イチナ」
「…シキ」
そうか、名乗っていなかったな。
「シキか…季節の意味?」
名の意味は四季ではないが、思わず嘘をついた。
「…あぁ。何年もずっと巡る四季からだ。よく、分かったな。…イチナ、すまないな。私がこのように迷惑ばかりかけて」
「これから、いくらでも挽回する機会はあるから、今は、謝るよりもサワちゃんが言ったように治すのに専念して」
イチナはシキの額の手拭いを取り換える。
「ありがとう」
「シキさんは、歳はいくつ?」
「19。イチナさんの歳はいくつなんだい?」
「私は17。どうして、剣を探すの?」
シキはためらうように、イチナに背中を向けた。
「…私は、あと1年しか生きられない体。家族も住んでいたところも全て失って、私にあるのは亡き父が探し求めていた草薙剣を探すということ。初めて、できた夢だったんだよ。ただ、一日でも一秒でも生きて生きて、私が生きる意味を知りたいんだ」
「そっか」
イチナは静かにそう言って頷いた。表面はヘラヘラとして読めない感情。それは、本心を隠すための虚勢なんだと悟る。
「イチナ、私の話は秘密にしてもらえないかな」
「分かった」
イチナは立ち上がって、2頭の馬に餌をあげにシキから離れた。
ユウが、瑠璃にバシャッと水をかける。瑠璃はブルルと鼻をならす。
「イチナさん、あの男の体調はどうだい?」
「名前と年齢を聞いたよ。シキという名で19歳らしい。体調はよくなってきていて、明日には治ってるかなと」
「8年の旅か。それこそ、シェキナさんが今も生き延びていたら、彼くらいの年齢だったのかもしれないね」
独立集落の処刑台から逃げ出した少年。
ユウは何気ない気持ちでポロッと言っただけだった。でも、イチナはドキッとした。家族も住んでいたところも全て失った。というシキの言葉が浮かんだからだ。
「どうした?」
「え?あ、何でもない。そうだ、サワちゃんはやっぱり反対してる?」
「口ではああ言ったが、サワの性格ではこうコロコロと意見を変える感じじゃないからね。内心では、反対かもな。でも、サワだって気がついたはずだよ。シキが強いことも、闘いでも気を遣えるくらいには優しいことも」
ユウはそう言うと、次は翡翠に水をぶっかけた。
「熱を下げる薬だ。これを、飲みなさい」
ユウは男に丸薬を渡す。
「そんなものはいらない。自分で治す」
横になっている男。イチナが男にかけられたタオルケットのようなものを掛けなおす。
後ろからやって来たサワがユウに話しかける。
「ユウ、本気でその人も連れていくの?」
「剣についてよく知っている様子だし、腕っぷしも強い。それに、剣を探す人であれば、いずれか会うことになるだろう」
「私は賛成できないね」
「どうして?」
「仲間に加えるってことは、この男の行動に私たちだって少なからず影響を受けるってこと。会ってすぐに、祝言を挙げないか なんて言うし、私たちがなにもしていないのに手を挙げるような人だよ」
サワの言うことにも納得はできたが、ユウ的にどうもこの男は気になる。仲間として、共にこの長い旅を助け合えるように思えた。
この男、僕とやりあったときに、頑なに人の体にいくつかある急所を外して攻撃していた。あれほどの体術の腕前であれば急所は知っているはずだ。初めに、僕を投げたときも、頭からいかないように襟と袖を最後まで掴んでいた。サワに対しては攻撃を仕掛けていなかったように見えた。だからといって、完全にこの男を信頼しているわけではないが。
「仲間?そんな甘ったるい関係性に足を入れる私ではない。私は、8年も旅をしている」
「イチナさん、どう思う?私は、彼と旅をしてみたい」
日夜もっともこの男の側で、男の看病をしてくれたイチナ。男が熱にうなされていた夜も、イチナは甲斐甲斐しく世話を焼いていた。イチナはもともと、薬師補佐という看護師のような職も経験していたらしい。それでも、並みの人には出来ないだろう。敵の可能性がある男の看病など。
イチナは、肌身離さず持っている弓と矢筒に入った矢を、一本取り出して、キリキリと構えた。
「な、何をするんだ?」
男は、イチナの動向に注目せざるを得ない様子だった。イチナが弓を構えると空気がピンと張りつめる。
放たれた一本の矢は、100mは離れている木になっている果実に刺さった。果実はボトンと矢の勢いを受けて、地面に落ちた。
男はゴクリと唾を飲んだ。
「私は、この男が仲間になっても良いと思う。でも、私たちは、貴方が思っている程、弱くはないし、意志もある。それは、わかってほしい」
生まれてはじめてだ。この女だけは敵にまわしたくない。そう思ってしまた。
イチナはいつになく真剣な眼差し。
サワは、一度ムッと顔をしかめた。しかし、サワは口を開いた。
「二人がそう言うのなら、それは尊重する。私たちはまだ旅の途中だから、時間はかけられない。早く、体を治しなさい」
サワは、とても苦い丸薬を男が口を開こうとした瞬間に口にめがけて投げた。綺麗な放物線を描き丸薬は口に吸い込まれる。丸薬は口内の水分ですぐに溶ける。
「綺麗な花にはトゲがある。とはよく言ったものだな」
男はヘラっと笑った。サワはあきれたと言わんばかりの表情をしてから、男とイチナの元から離れる。ユウはそのサワは追って離れる。
急に二人だけ残された。男とイチナ、微妙に気まずい空気が流れる。
「ところで、貴方、お名前はなんて言うの?私は、イチナ」
「…シキ」
そうか、名乗っていなかったな。
「シキか…季節の意味?」
名の意味は四季ではないが、思わず嘘をついた。
「…あぁ。何年もずっと巡る四季からだ。よく、分かったな。…イチナ、すまないな。私がこのように迷惑ばかりかけて」
「これから、いくらでも挽回する機会はあるから、今は、謝るよりもサワちゃんが言ったように治すのに専念して」
イチナはシキの額の手拭いを取り換える。
「ありがとう」
「シキさんは、歳はいくつ?」
「19。イチナさんの歳はいくつなんだい?」
「私は17。どうして、剣を探すの?」
シキはためらうように、イチナに背中を向けた。
「…私は、あと1年しか生きられない体。家族も住んでいたところも全て失って、私にあるのは亡き父が探し求めていた草薙剣を探すということ。初めて、できた夢だったんだよ。ただ、一日でも一秒でも生きて生きて、私が生きる意味を知りたいんだ」
「そっか」
イチナは静かにそう言って頷いた。表面はヘラヘラとして読めない感情。それは、本心を隠すための虚勢なんだと悟る。
「イチナ、私の話は秘密にしてもらえないかな」
「分かった」
イチナは立ち上がって、2頭の馬に餌をあげにシキから離れた。
ユウが、瑠璃にバシャッと水をかける。瑠璃はブルルと鼻をならす。
「イチナさん、あの男の体調はどうだい?」
「名前と年齢を聞いたよ。シキという名で19歳らしい。体調はよくなってきていて、明日には治ってるかなと」
「8年の旅か。それこそ、シェキナさんが今も生き延びていたら、彼くらいの年齢だったのかもしれないね」
独立集落の処刑台から逃げ出した少年。
ユウは何気ない気持ちでポロッと言っただけだった。でも、イチナはドキッとした。家族も住んでいたところも全て失った。というシキの言葉が浮かんだからだ。
「どうした?」
「え?あ、何でもない。そうだ、サワちゃんはやっぱり反対してる?」
「口ではああ言ったが、サワの性格ではこうコロコロと意見を変える感じじゃないからね。内心では、反対かもな。でも、サワだって気がついたはずだよ。シキが強いことも、闘いでも気を遣えるくらいには優しいことも」
ユウはそう言うと、次は翡翠に水をぶっかけた。
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