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仲間入り です。
とある男 です。
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「相変わらず、物好きだね。そんな、昔の人の本ばっかり読んでさ」
「母がどんな人物を目指していたのか知ることは悪くないだろう?」
ユウは、賛にまつわる本を読みながら歩く。母はこの人がやっていた政策を色濃く受け継いでいるらしい。
「でも、読みながら歩くのは危ないよ」
「大丈夫。人っ子一人いない、東国に続く一本道、危険はないさ」
ユウは、サワの注意をたいして気にする様子もなく歩く。
「あれ?誰かいる」
イチナは、斜め前方に広がる草原の方を指差す。
「ん?」
サワは目を凝らす。
「あ、ほんとだ。男?」
「近くにムラでもあるのかもな」
ユウは、本をパタンと閉じて懐に閉まって、瑠璃の手綱を持って、その男の方へ歩き出す。二人もユウと瑠璃についていく。
「ん?なんだ、あの三人。みすぼらしい格好はしてるが、腰の刀は相当良いもんだ。どっかの王子か?」
鼻まで覆うスカーフが風に靡いた。
「おーい、この近くにムラでもあるのですかー?」
「私たち、草薙剣を探してて、知ってることがあったら教えてほしいでーす!」
ユウとサワが呼び掛けてみる。
草薙剣を探してる?俺が探してるのと同じじゃないか。向こうが何の為に探してるかは知るよしもないが、狙っている者がいれば排除する。そして、今まで仕入れた情報を洗いざらい吐かせてやる。
道を外れて、草原に分け入ってくる3人と2頭。ずんずんと俺に近づいてくる。
「ん?な、なんて綺麗な方なんだ」
あの、腰に刀を差した男の隣を歩く可憐な方は、私が見た中で最も美しい。
草原の中程で、三人と一人は向き合うような形になった。
男は唐突にサワの手をとった。そして跪く。
「私と祝言を挙げないか」
は?みたいな顔をサワは浮かべる。対して、男は大真面目。
そこに、ピキッと額の血管が浮かんだのはユウ。
「ちょ、何を言っているのですか?初対面で」
ユウは、サワと男の手を振りほどく。そして、男の手首をグッと握った。
「私とやりあおうと言うのか?」
「いや、できればそれは避けたい。そのために、彼女に無闇に言い寄らないでいただきたい」
男は、ブンと腕を振ってユウの手を振り払う。
「ところで、さっき草薙剣がどうとか言っていたが、君も探しているのか?」
様子をけろっと変えて、ヘラヘラと笑う。愛想がよくなる。
「あぁ、何か知っていることがあれば教えてほしいと思っています」
「分かってるのか?草薙剣は一本しかない。つまり、君がそれを探すということは私にとって非常に迷惑なんだ。だから、ここで諦めてくれないか?」
「それはできません」
サワがきっぱりと断った。
「そんなに、かたくならないでよ。大丈夫、私は、このいかにも頑固で古くさそうなこの男が諦めてくれればそれで良いからさ」
それを聞いてムッとしたユウ。
ジリット半歩分、男に近づく。
「怖い怖い、さては、君さ隣の彼女が好きなのか?」
「そうです」
迷いなくそう言いはなったユウにボッとサワは赤面する。
「そうか、ならば、なおさらに…」
男は、ユウの着物の襟を掴んで、背負い投げをする。
ユウは、咄嗟に受け身を取って衝撃を逃がす。それでも背中全体が痛む。
「情けない。君、相当、身分が良いんだろう?いいじゃないか、君は何だって叶えられる」
「ユウに何やってんだよ!」
サワからの強烈な回し蹴りを寸でかわす。 こいつ、できる…サワの顔に僅かに焦りが浮かんだ。本気
男は、サワから繰り出される技を避けつつ、ユウに技をかける。女には手を出さないって決めてるのか?
手が何本も生えてるみたいな動きだ…僕も、避けるのが精一杯。体をそらせたり、腕をひゅんと胸の前にしまったりしながら、男の腕にとらわれないようにする。
ユウはサッと刀を抜いた。
「ほう、良い刀だな」
男は、ユウが振りかぶった刀を素手で止めた。なんだよ、この馬鹿力。刀が押し戻される。刀に血が伝って、ポタポタっと草に赤いシミがつく。
「名はなんという?」
「ユウです」
ここでも名乗りができてしまうのか!ユウ。
男は、刀から手を離した。
バン!とサワの蹴りが、男の腰の少し上辺りにはいって、男は手を地面についた。ユウは、スッと刀を振って血を飛ばしてから鞘に戻す。
「イチナさん、濡らした手拭いをこちらに」
イチナは、ユウの指示通り濡らした手拭いを持ってくる。
男は未だに立ち上がれないようだった。
物が二重に見えてクラクラする。立ち上がれ、俺の脚。まだ、動けるだろ。
「横になりなさい、熱がひどいのに無理をするからです」
「は?俺は、大丈夫」
立ち上がったものの、ふらふらとしていて、その人の下だけ地面が揺れているみたいだ。
「そうでしたか、やはり、ご自身で自覚がなかったのですね」
男は十数歩行ったところで、膝から崩れて横になった。
イチナがそれを追いかけて、額に濡れた手拭いを置く。
「しんどかったら、言ってくださいね」
イチナは男の頭上に布を広げて影を作る。
「なぜ、私を助けようとする?君の仲間だろう?彼らは。私は、彼らに負けたというのに」
男の視線の先には、背中を大きく擦りむいて、それを水で流してもらっているユウと、手当てをしているサワ。イテテとユウの声が少し離れたこちらにも聞こえてきた。
「こんなに、しんどそうなあなたを、見捨てることが出来ない人たちだから」
「優しいのだな、君たちは」
「母がどんな人物を目指していたのか知ることは悪くないだろう?」
ユウは、賛にまつわる本を読みながら歩く。母はこの人がやっていた政策を色濃く受け継いでいるらしい。
「でも、読みながら歩くのは危ないよ」
「大丈夫。人っ子一人いない、東国に続く一本道、危険はないさ」
ユウは、サワの注意をたいして気にする様子もなく歩く。
「あれ?誰かいる」
イチナは、斜め前方に広がる草原の方を指差す。
「ん?」
サワは目を凝らす。
「あ、ほんとだ。男?」
「近くにムラでもあるのかもな」
ユウは、本をパタンと閉じて懐に閉まって、瑠璃の手綱を持って、その男の方へ歩き出す。二人もユウと瑠璃についていく。
「ん?なんだ、あの三人。みすぼらしい格好はしてるが、腰の刀は相当良いもんだ。どっかの王子か?」
鼻まで覆うスカーフが風に靡いた。
「おーい、この近くにムラでもあるのですかー?」
「私たち、草薙剣を探してて、知ってることがあったら教えてほしいでーす!」
ユウとサワが呼び掛けてみる。
草薙剣を探してる?俺が探してるのと同じじゃないか。向こうが何の為に探してるかは知るよしもないが、狙っている者がいれば排除する。そして、今まで仕入れた情報を洗いざらい吐かせてやる。
道を外れて、草原に分け入ってくる3人と2頭。ずんずんと俺に近づいてくる。
「ん?な、なんて綺麗な方なんだ」
あの、腰に刀を差した男の隣を歩く可憐な方は、私が見た中で最も美しい。
草原の中程で、三人と一人は向き合うような形になった。
男は唐突にサワの手をとった。そして跪く。
「私と祝言を挙げないか」
は?みたいな顔をサワは浮かべる。対して、男は大真面目。
そこに、ピキッと額の血管が浮かんだのはユウ。
「ちょ、何を言っているのですか?初対面で」
ユウは、サワと男の手を振りほどく。そして、男の手首をグッと握った。
「私とやりあおうと言うのか?」
「いや、できればそれは避けたい。そのために、彼女に無闇に言い寄らないでいただきたい」
男は、ブンと腕を振ってユウの手を振り払う。
「ところで、さっき草薙剣がどうとか言っていたが、君も探しているのか?」
様子をけろっと変えて、ヘラヘラと笑う。愛想がよくなる。
「あぁ、何か知っていることがあれば教えてほしいと思っています」
「分かってるのか?草薙剣は一本しかない。つまり、君がそれを探すということは私にとって非常に迷惑なんだ。だから、ここで諦めてくれないか?」
「それはできません」
サワがきっぱりと断った。
「そんなに、かたくならないでよ。大丈夫、私は、このいかにも頑固で古くさそうなこの男が諦めてくれればそれで良いからさ」
それを聞いてムッとしたユウ。
ジリット半歩分、男に近づく。
「怖い怖い、さては、君さ隣の彼女が好きなのか?」
「そうです」
迷いなくそう言いはなったユウにボッとサワは赤面する。
「そうか、ならば、なおさらに…」
男は、ユウの着物の襟を掴んで、背負い投げをする。
ユウは、咄嗟に受け身を取って衝撃を逃がす。それでも背中全体が痛む。
「情けない。君、相当、身分が良いんだろう?いいじゃないか、君は何だって叶えられる」
「ユウに何やってんだよ!」
サワからの強烈な回し蹴りを寸でかわす。 こいつ、できる…サワの顔に僅かに焦りが浮かんだ。本気
男は、サワから繰り出される技を避けつつ、ユウに技をかける。女には手を出さないって決めてるのか?
手が何本も生えてるみたいな動きだ…僕も、避けるのが精一杯。体をそらせたり、腕をひゅんと胸の前にしまったりしながら、男の腕にとらわれないようにする。
ユウはサッと刀を抜いた。
「ほう、良い刀だな」
男は、ユウが振りかぶった刀を素手で止めた。なんだよ、この馬鹿力。刀が押し戻される。刀に血が伝って、ポタポタっと草に赤いシミがつく。
「名はなんという?」
「ユウです」
ここでも名乗りができてしまうのか!ユウ。
男は、刀から手を離した。
バン!とサワの蹴りが、男の腰の少し上辺りにはいって、男は手を地面についた。ユウは、スッと刀を振って血を飛ばしてから鞘に戻す。
「イチナさん、濡らした手拭いをこちらに」
イチナは、ユウの指示通り濡らした手拭いを持ってくる。
男は未だに立ち上がれないようだった。
物が二重に見えてクラクラする。立ち上がれ、俺の脚。まだ、動けるだろ。
「横になりなさい、熱がひどいのに無理をするからです」
「は?俺は、大丈夫」
立ち上がったものの、ふらふらとしていて、その人の下だけ地面が揺れているみたいだ。
「そうでしたか、やはり、ご自身で自覚がなかったのですね」
男は十数歩行ったところで、膝から崩れて横になった。
イチナがそれを追いかけて、額に濡れた手拭いを置く。
「しんどかったら、言ってくださいね」
イチナは男の頭上に布を広げて影を作る。
「なぜ、私を助けようとする?君の仲間だろう?彼らは。私は、彼らに負けたというのに」
男の視線の先には、背中を大きく擦りむいて、それを水で流してもらっているユウと、手当てをしているサワ。イテテとユウの声が少し離れたこちらにも聞こえてきた。
「こんなに、しんどそうなあなたを、見捨てることが出来ない人たちだから」
「優しいのだな、君たちは」
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