秀才くんの憂鬱

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Break Time 2

②Break Time ☕️ 賛(現代社会人)の日常

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※本編とはまったく関係のない話です。とばしていただいて構いません。


③ 父の日

 久しぶりの、のんびりとした昼下がり。日美と鈴は、公園に遊びに行った。ここのところ、一学期に移行した運動会の準備でバタバタだったから、鈴と遊ぶ時間も、ちょっと減っている。
 ソファで横になって昼寝をしていると、ガチャっとドアが開く音がした。それで目が覚める。でも、瞼は下がってくる。
「ただいまー!」
「鈴、パパ寝てるかもだし、シー」
そんな会話が廊下から聞こえてくる。
リビングのドアが開いて、鈴が入ってくる。
「鈴、先に手を洗わないとダメでしょ。戻ってきて」
「ねー、ママー、ホントにパパ寝てる!」
「パパもお仕事で疲れてるんだよ。寝かしてあげよ」
日美、ありがとー!心の中でそう思う。
日美は鈴の手を引いて、洗面所までつれていく。

「わー、ほらほら、濡れた手はタオルで拭くんだよ」
「拭いた!」

パタパタと洗面所から駆けてくる音がして、ドスッとお腹に鈴が乗ってくる。
「パパー、起きてー」
こうなれば、起きるより他はない。目を開けると、想像通り、鈴の顔が近くにあった。
「ママー、パパ起きた!」
「起きた、じゃなくて、起こしたでしょ」
後からやって来た日美が鈴を、賛のお腹から鈴をおろす。賛はムクッと起き上がる。
「ん、おかえり。公園楽しかった?」
「うん!」
「そうかー、良かったなー」
鈴の頭を撫でる賛。
「今日、友達と公園で会ったんだよね」
「へー、前に行ってた最近こっちに引っ越してきた子?」
「ううん、ユウスケくん」
「保育園でよく一緒に遊んでるみたいで、帰ろって言ってもなかなか遊ぶの止めなくて大変だったよ」
なんだろう、この気持ちは。なんか、寂しい。いや、父親として娘が友達と遊ぶのは成長過程のひとつとして大事だと思うが…
「ママ、おやつ食べていい?」
日美は壁にかけられた時計を見る。3時。
「良いよ。じゃ、おやつ、選ぼっか」
台所の方に二人が向かう。
はらりと鈴のポケットから一枚の紙が落ちる。

「なんか、紙、落としたよ」
賛がそう言っても、鈴はおやつ選びに夢中みたい。返事がない。
賛は、なんとなくその折り畳まれた紙をカサカサと開く。

『ぱぱよりだいすき すず』

ガーン
ん、良いんだよ、うん、全然いいんだよ。
娘のラブレター…

「あれ、鈴、パパの持ってるの」
「あ!パパ、見たの?」
バナナを手に持った鈴は、賛の力が抜けた手から手紙を取る。
賛は、ガーンとまだショックを受けている。

「ん、パパ、いつもありがと」
鈴はその手紙を賛に渡す。
「え?」
「どうしたの?パパ、元気ないけど」
日美が手紙を覗きこむ。そして、笑った。
「鈴、これじゃ意味が変わってくるよ。
パパへ  大好きだよ  鈴より  っていう意味だよパパ」
「ほんと?!」
思わず、大きな声出た。
「わ!パパ、びっくり」
それを、ほほえましく見つめる日美。
「賛、いつもありがとう。大好きだよ」
日美に耳元で囁かれ、ポッと赤くなった頬と耳。
「な、なんだよ、急に」
「なんだよって、今日は父の日でしょうが。いつものお返し」
テレビ横のカレンダーに小さな文字で父の日と書かれている。
「…じゃあ、来年の父の日もよろしく」
「鈴、来年のためにお手紙の練習しなくちゃねー」
「うん!」
笑顔で見つめあった二人。
なんて、可愛いんだ!日美、鈴!
と、心が叫んだ。
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