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クウとヒミカ
休日
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4か月後
「ヒミカ、こうやって話すの久々じゃない?」
今日は、何か月ぶりかの休みの日。カンとお茶をしていた。
「そうだね」
「ヒミカのおかげで、こんなに早く暮らせるクニになるんだから、やっぱり凄いよね」
「私なんて何も。みんなが凄いんだよ」
「やっぱり、ヒミカって賛くんの国づくりを目指しているの?」
「まあね。私の意見がないとかじゃなくて、私は賛さんの考えが本当に素敵だと思うから」
「ふーん」
「えー、興味無さそう」
「ヒミカのことだから、そんなことだろうと思っただけ」
「そんなことって」
「近くで見てたんだから分かるよ。ずっと、賛くんの一番の味方はヒミカだったし」
一番の味方ねぇ。それは、たぶん、なれてないな。
「あ、そういえば、シューさんから聞いたんだけど、子供が出来たって本当?」
「うん、本当」
「おめでとう!」
「まだ、小さいけどね」
「いやいや、この時期が大事だから。カン、お酒とか飲んだらダメだし、ナマモノも避けた方が良いからね。しんどいなと思ったらゆっくりして、重たい荷物とかシューさんに持たせてね。薬も飲めるのと飲めないのが出てくるから、不安だったら、近くの薬師か私に聞いて」
真剣すぎるヒミカに思わず笑ってしまうカン。
「ヒミカってば心配しすぎ、もう、やってるから大丈夫。シューも、よく料理とか洗濯とか家事もやってくれるし」
「まあでも、困ったりしたら何でも言って、私、全力で支えるよ?それと、無事に生まれたら会いに来てもいい?」
「うん、もちろん」
カンのこんな幸せそうな顔、本当に嬉しくてたまらないんだろうな。
「ヒミカは?」
カンは小指を立てて、それを揺らす。恋人がいるのか?というサイン。
「私?」
「そう」
「いないかな」
ズイッと前のめりになるカン。
「縁談も多いでしょうに、なんで?やっぱり、賛くんを忘れられないから?それとも、縁談を申し込むのがクズみたいな男ばっかりだから?」
「ちょ、カン。お見合いした人も、クズってことはないから」
「じゃあ、賛くんかぁ~」
「ち、違うって」
「じゃあ、お見合いをしている人以外で、好きな人がいるんだ」
「そうじゃないけど…」
店の戸が開いて、風が入ってくる。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「3人です」
「では、あちらのお席に」
ヒミカたちの隣の席に座った3人の男。男たちは、いくつもの書籍を机に広げながら、あーでもない、こーでもないと話す。
「こっちの表現の方が」
「ここに、図を入れたら」
「でも、そうすると、こっちの会話表現を次の項にしないと」
ちらりと、その3人を見る。
「え…」
「どうしたの?知り合い?」
「あ、うん」
「3人とも?」
「真ん中の人だけ」
真ん中の人が顔をあげる。その瞬間に、ヒミカは目があって、さっと視線を下にする。
「え?誰?」
「教育部教科書科副組織長兼外交部対外国情報科三課代表補佐官」
なんでこんなところに、クウさんが!
「呪文?早口すぎん?」
「あ、ヒミカさん!こんにちは」
どうやら向こうも気が付いていたらしい。挨拶と笑顔をセットで向けてくるクウ。
「こ、こんにちは、どうぞ、お仕事頑張ってください。私たち、何も邪魔しないんで」
カンがヒミカの足を机の下でコンコンと蹴る。
「ねぇ、ヒミカ、向かいの店、見に行きたいんだけどいい?」
「あ、うん、いいよ!」
逃げるように店を出てしまった。
「知り合いが隣で仕事してると、せっかくの休日なのに休めないでしょ?」
「まぁ、そうだね」
「でも、感じの良い人だったね、えっと、なんだっけ、教育部なんちゃら兼外交部なんちゃらの人」
「クウさんっていうひと」
「へー、っていうか、なんで、ヒミカさん呼び?」
「あー、外で呼ぶときは、女王とか言われると、周りの人があれだし、そう呼んでって」
「っていうことは、外で会うのは今日がはじめてっていう訳じゃないんだ」
「うん、お祭りとか一緒に行ったし、墓参りでも何回かあってるし、一緒に学校の視察に行った帰りにご飯も食べたし」
ぎょっと驚く顔をしたカン。
「ただの官吏でしょ?」
「そうなんだけど、なんか、話があってね」
「ふーん」
意味深な演技っぽい相槌。
「え、何?」
「続報待ってまーす」
「いやいや、ないない、カンが思ってるようなあれじゃないから」
「どうだか」
カンはクウの方を見る。
なんか、恥ずかしいんだけど。見られているのは、クウで私じゃないのに、そうまじまじと見られると。
「ヒミカ、こうやって話すの久々じゃない?」
今日は、何か月ぶりかの休みの日。カンとお茶をしていた。
「そうだね」
「ヒミカのおかげで、こんなに早く暮らせるクニになるんだから、やっぱり凄いよね」
「私なんて何も。みんなが凄いんだよ」
「やっぱり、ヒミカって賛くんの国づくりを目指しているの?」
「まあね。私の意見がないとかじゃなくて、私は賛さんの考えが本当に素敵だと思うから」
「ふーん」
「えー、興味無さそう」
「ヒミカのことだから、そんなことだろうと思っただけ」
「そんなことって」
「近くで見てたんだから分かるよ。ずっと、賛くんの一番の味方はヒミカだったし」
一番の味方ねぇ。それは、たぶん、なれてないな。
「あ、そういえば、シューさんから聞いたんだけど、子供が出来たって本当?」
「うん、本当」
「おめでとう!」
「まだ、小さいけどね」
「いやいや、この時期が大事だから。カン、お酒とか飲んだらダメだし、ナマモノも避けた方が良いからね。しんどいなと思ったらゆっくりして、重たい荷物とかシューさんに持たせてね。薬も飲めるのと飲めないのが出てくるから、不安だったら、近くの薬師か私に聞いて」
真剣すぎるヒミカに思わず笑ってしまうカン。
「ヒミカってば心配しすぎ、もう、やってるから大丈夫。シューも、よく料理とか洗濯とか家事もやってくれるし」
「まあでも、困ったりしたら何でも言って、私、全力で支えるよ?それと、無事に生まれたら会いに来てもいい?」
「うん、もちろん」
カンのこんな幸せそうな顔、本当に嬉しくてたまらないんだろうな。
「ヒミカは?」
カンは小指を立てて、それを揺らす。恋人がいるのか?というサイン。
「私?」
「そう」
「いないかな」
ズイッと前のめりになるカン。
「縁談も多いでしょうに、なんで?やっぱり、賛くんを忘れられないから?それとも、縁談を申し込むのがクズみたいな男ばっかりだから?」
「ちょ、カン。お見合いした人も、クズってことはないから」
「じゃあ、賛くんかぁ~」
「ち、違うって」
「じゃあ、お見合いをしている人以外で、好きな人がいるんだ」
「そうじゃないけど…」
店の戸が開いて、風が入ってくる。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「3人です」
「では、あちらのお席に」
ヒミカたちの隣の席に座った3人の男。男たちは、いくつもの書籍を机に広げながら、あーでもない、こーでもないと話す。
「こっちの表現の方が」
「ここに、図を入れたら」
「でも、そうすると、こっちの会話表現を次の項にしないと」
ちらりと、その3人を見る。
「え…」
「どうしたの?知り合い?」
「あ、うん」
「3人とも?」
「真ん中の人だけ」
真ん中の人が顔をあげる。その瞬間に、ヒミカは目があって、さっと視線を下にする。
「え?誰?」
「教育部教科書科副組織長兼外交部対外国情報科三課代表補佐官」
なんでこんなところに、クウさんが!
「呪文?早口すぎん?」
「あ、ヒミカさん!こんにちは」
どうやら向こうも気が付いていたらしい。挨拶と笑顔をセットで向けてくるクウ。
「こ、こんにちは、どうぞ、お仕事頑張ってください。私たち、何も邪魔しないんで」
カンがヒミカの足を机の下でコンコンと蹴る。
「ねぇ、ヒミカ、向かいの店、見に行きたいんだけどいい?」
「あ、うん、いいよ!」
逃げるように店を出てしまった。
「知り合いが隣で仕事してると、せっかくの休日なのに休めないでしょ?」
「まぁ、そうだね」
「でも、感じの良い人だったね、えっと、なんだっけ、教育部なんちゃら兼外交部なんちゃらの人」
「クウさんっていうひと」
「へー、っていうか、なんで、ヒミカさん呼び?」
「あー、外で呼ぶときは、女王とか言われると、周りの人があれだし、そう呼んでって」
「っていうことは、外で会うのは今日がはじめてっていう訳じゃないんだ」
「うん、お祭りとか一緒に行ったし、墓参りでも何回かあってるし、一緒に学校の視察に行った帰りにご飯も食べたし」
ぎょっと驚く顔をしたカン。
「ただの官吏でしょ?」
「そうなんだけど、なんか、話があってね」
「ふーん」
意味深な演技っぽい相槌。
「え、何?」
「続報待ってまーす」
「いやいや、ないない、カンが思ってるようなあれじゃないから」
「どうだか」
カンはクウの方を見る。
なんか、恥ずかしいんだけど。見られているのは、クウで私じゃないのに、そうまじまじと見られると。
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