王への道は険しくて

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クウとヒミカ

仕事

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「クウなんか最近調子いいよな。なんかあったのか?」
気がつくと同期の二人に囲まれていた。
「いえ、いつも通りですけど?」
一度手を止める。
「嘘をつけ、さては、好きなおなごでも出来たんだろう?」
「あー、この顔、図星っすね」
「誰なんだ?同期の俺たちにくらい教えてくれよ」
「言っても、馬鹿にするだろう?」
「しないしない」
「そうだ、長年の付き合いだろう?厳しい激務を耐え抜き続けた我らの仲ではないか」
「そうだぞ。良いじゃないか、クウ以外、みんな結婚も決まっているし気を使わなくともいい」
「さては、文を貰ったのだろう?」
肩に手を置かれる。
後ろ斜め上を向いて、同期に目を合わす。
「馬鹿を言うな、貰えるわけがない!」
「クウがそう大きな声を出すとは」
普段、穏やかである分大きな声を出しただけで驚かれた。
「でも、これは好きな人がいると認めたようなもの。さ、誰だ?」
「……女王様が好きだ」
ブッと吹き出した二人。
「んだ?それは新手の冗談か?」
「女王陛下は、天涯孤独を貫かれると噂だぜ。何でも、夫であった先代の王を忘れられないから」
「俺の聞いた噂では、軍部大臣の甥っ子と良い感じだとか」
「それを言うなら、王都長のご子息とも」
耳を塞ぐクウ。
その反応と今までの素直で真面目な性格から、二人の顔が変わる。
本気まじ?嘘じゃなくて?」
「当たり前だ。必ずや、女王様を振り向かせます!」
側にいた二人はドッと吹き出した。無理もない。誰が、女王とただの職員とが恋をするなんて思うだろう。


クウは、それから、女王に会う口実を色々と考え、それらを実行するために仕事を頑張った。生半可な気持ちで、女王の前に立てるわけがない。相手は、忙しい時間をわざわざ取ってくれている。

「女王様」
「また、クウさんですか?今度はどういったお話ですか?」
「軍学校用の防衛学を学ぶ教科書の中身で、馬を用いた戦術を扱いたいのですが、文献が少なく…」

「分かりました。また、王の蔵書と、魏からの文献の使用権を認めます。無ければ、外交部にその旨を伝えて、魏から取り寄せてください」

ヒミカは、ただただ丁寧に業務をこなしていく。それは、女王の姿勢として、正しいことだろう。ただ、何か一つきっかけの欲しいクウにとってちょっぴり寂しいものでもある。

「では、次の仕事が控えておりますので」
そう言って立ち上がった、ヒミカ。クウは勇気をもってそれを引き留める。
「あの、お待ちください」
「どうしたんですか?」
「女王様は、このクニの子供に、どのような大人になって欲しいとお思いですか?」
教育に力をいれ、人を育てることに注力しようと決めたのは賛。ヒミカは、賛がこのクニの未来を語る時の言葉を思い出す。
「それは…何歳になっても、どこに行っても、夢を持って生きることのできる人です。教育を受けるということは、ただ、読み書きと計算のためではありません。自らの可能性の幅を広げるためにあるのですから、その可能性をつかみとる原動力ともいえる夢、将来に夢を抱ける人を育てることが我々にとってもっとも大事なことであり、そういう人が育って欲しいと思っています」
やはり、この女王は凄い方なのだ。
そんな風に思った。強い意志を持って、このクニをより良い未来へ導こうとされる。今までの王であれば、変化を恐れ、前例にならうばかりで、意味などきっと考えていなかった。でも、この人は違う。新たな時代の幕開けにふさわしい。
「将来に夢を抱ける人…」
「そうです。でも、それは、私の思うこと。きっと、そう尋ねたということは、クウさんの思う、こんな大人になって欲しいというのがあるのでしょう?私は、私のものと違っていても、それも素晴らしいと思いますよ」
「そうですか?」
パーッと明るい顔をしたクウ。それを見て、ヒミカはどこか満足そうな表情を浮かべ、部屋を出た。
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