王への道は険しくて

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賛とヒミカ

名前

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「賛さん」
「はい、どうしたんですか?」
ヒミカは賛の前では、よくお喋りをしたくなってしまう。
「今日、タヨから質問されて、タヨって大陸の文字でなんと書くのかと、それで、カンに聞きに言ったんです。由来とか説明して」
「どんな字だったんですか?」
賛に見えるように地面に木の枝で書いてみる。
「太世と教えてもらって」
「素敵ですね、なんかこう、力強い印象です」
「それで、賛さんはどんな文字なのか、教えて欲しいです。名は体を表すと聞いたことがあります!」
「多分、初見では読めませんよ」
九条 賛
地面に書かれた文字は頭の高さが揃った綺麗な文字だった。
「九条は苗字で特にこれといった意味はないと思います。はるか昔、貴族だったとは聞いたことがありますが。賛でアキラです」
「どういう意味が込められているんですか?」
「賛って言う文字には、たすけるとか、力添えをするっていう意味があって、僕を必要としている人の力になって、励ましあってほしいってことだと聞いたことがあります。あと、呼びやすいからとも」
「なんだか、賛さんそのままですね。いつも、側に居て凄く安心するっていうか。賛さんの時代はどうか知らないですけど、協力とかそんなことを言いながら、結局は自分のことしか見えていない人がほとんどです。その中で、賛さんは、自分のことと同じくらい、自分以外の人を尊敬できて、見守ってくれている感じがあるっていうか、よく思うんです、 あぁ優しい人だなって」
「そうですか?」
「そうですよ」
「じゃぁ、ヒミカさんはどうやって書くんですか?」
日美香
 一画一画がきっちりとしたその文字は、どことなく賛のものとにている。
「日美香って、カンとシュー様の間ではそういうことになっていただけで、全然、正式なものではないんですけど、気に入って使っているんです」
「暖かい名前ですね」
「暖かい名前?」
「うわぁ、どうやって説明したらいいんだろう、こう、まぁるいかんじ。明るくて、綺麗で、僕、好きだな、ヒミカっていう名前」
恥ずかしいことをツラツラと普通に言ってしまう賛に、耳が赤くなるのを自覚する。賛は、手で丸を描く。その仕草が面白くて、フフッと笑ってしまう。それに、つられたみたいで、賛も笑った。賛の笑った顔は、小さな子供の、顔のパーツが中央に集まったみたいな笑顔で、無邪気な雰囲気を纏う。普段が、どれくらい、真剣な顔つきで書記官や宿題をこなしているか、見たことがあるから、意外な感じがする。
「賛さん、私、あんまり名前を褒められたことなかったんです。名前を褒められるってこんなに嬉しいんですね」
「親が、特別な願いを込めてつけてくれたものですから、自分の中で大事なものになるんですよ」
「特別な願い…」
「はい」
父上と母上はどんな思いで、「ヒミカ」にしたんだろう…聞いてみたかったな

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