王への道は険しくて

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賛とヒミカ

酔っ払い

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 薬師試験に受かって呑みに行った。
普段は、呑まないから、お酒に弱いことを忘れて呑んでしまった。
シューとカンが居て、タヨと賛も一緒で、みんな、本当に私の合格を心から喜んでくれた。
シューからの花束も、カンからのお誘いも嬉しかった。それに、タヨと賛が作ってくれたお揃いの貝殻のペンダント。

楽しくて、楽しくて、時間が経つのが本当に早くて、気がつくと机に突っ伏して寝ていたようだ。酷く迷惑な話だと思う。

「起きてくださいよ」
賛がユサユサと体を揺さぶる。
「仕方ないなぁ。ちょっと、触れますよ」
フーッと隣で、賛は息を吐いたのだろう。ドキッとする。ぼんやりとした意識の中、賛に担がれる。膝をぶつけたのか膝がジーンと痛む。
ぶつくさと文句を垂れながらも、一応なのか、気にかけながら賛は家へとつれて帰ってくれようとする。
「私、全然シラフー!」
「はいはい」
「うわ、思ってないでしょ。もう、一人で歩けるってば!」
賛に寄りかかりながら歩いている恥ずかしさもあって、賛から離れようとするが、賛はそれを許さない。
「無理はしないで、怪我でもされると嫌だから」
ピタッと賛と距離が近づいて緊張する。
「大丈夫だって!子供扱いしないで」
「してないよ。僕のこと誰だか分かる?」
こんな情けない酔っ払いの姿を見せるのも、割りと意識がはっきり戻ってきたことを悟られるのも嫌で、照れ隠し半分、違うことを言ってみた。
「シュー様か、親友のカンでしょ」
「選択肢にも入らないんですか」
おぼつかない足取りを演じて、酔っ払いのように適当なことを言っても、賛は何だかんだと言いつつ、私の腕を首の後ろに回して、転ばないように支えてくれる。賛さんには申し訳にけど、私、今、少し酔っぱらってて嬉しい。
「まったく、困ったものですね、酔っ払いは」
「ね、賛さんが酔っぱらったらその時は私が支えてあげる」
「いいですよ。酔っぱらってなくたって、僕はヒミカさんに十分すぎるほど支えてもらってます。これからは、飲み過ぎ注意ですよ」
「え?」
「まぁ、たまに遊びたくなる気持ちは僕にだって分かりますけど。ほら、家ですよ。段差、見えますか?」
「わかんなぁい」
スッと脚の方が持ち上がる。
「仕方ないですね」
これはもしや、噂のお姫様抱っこ?
ギリッと歯を食い縛って、一歩ずつ慎重に動く賛。不意にかっこいいと思ってしまった。

そっと、寝床に置かれて、どんな顔をしたら良いか分からなくて、咄嗟に寝たフリをしてみた。すると、賛は腰をポキポキと鳴らしてから、フワッと布団をかけて、
「薬師試験合格おめでとうございます。おやすみなさい」
と一言、言ってから、家を立ち去る。
もう行ってしまうのかとちょっと残念に思いつつも、賛の優しさが嬉しくてかけてもらった布団を顔の辺りまで持ち上げた。



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