王への道は険しくて

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賛とヒミカ

賛とヒミカ

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それを見たときは、まさか、この男に惚れるなんて思っていなかった。

奇妙な身なりに、急に自分の顔をひっぱたくヤバイ奴。

 興味本位だし、同じ年頃の男であれば正直誰でも良かった。
祭りのカモフラージュ、それっぽく装って、シューとカンが結ばれるきっかけになればそれだけで良かった。

なのに、君といると私は私に血が通っていることを再認識してしまう。徹底的に感情を切ることは得意なはずなのに。

「行かないで」って引き留めて欲しくなる。
 雨が降って欲しくなる。相合い傘をする口実に。
 服を仕立てる時も、君ならどう思うかなって考えてしまう。
もっと、喋ってみたいと思ってしまう。
知りたいと思ってしまう。
同じ景色を眺めたいと思ってしまう。

「恋」しなければ良かったと思ってしまう


これは、ヒミカの視点で描かれる賛との日常である。
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