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君は?
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瑠衣は少し考えてから口を開く。
「彼は、端的に一言で言うと、とても優しくて頼りになる人。そして怜を二回も助けてる。あのクソジジイが怜を襲ったときと、そして今回の事故のとき賢太郎くんが迅速な対応をしてくれたお陰で死者はでなかったんだよ。」
怜は首をかしげる。
「本当?」
もしも、あの毎日、病室に入ってくる男が私の本当の婚約者だとすれば私は、とんでもなくひどいことを言ってしまったんじゃないだろうか?彼の気持ちをまったく想像できない、残酷で感情的な物言いだったに違いない。それに、未だ信じることはできないが、周りの反応からも、どうやら、本当にあの男と私は、婚約者同士だったんだ。
「この瑠衣が言うことだよ。本当に決まってるじゃない。それに、怜は今は記憶にないかもしれないけど、怜の婚約者だもん。まともな人だよ。ほら、もうじき退院なんでしょ、ほら病院っていつもと違う環境っていうかそれだけでストレスじゃん。だからさ、退院したらフッと思い出すんじゃない?」
瑠衣はベッド横の椅子で足を組み換える。
「そうなると思えない」
「じゃぁ、食事を一緒にするとか、思い出の場所に行くとか」
「そんな、何を話したら良いかもわからないし、思い出の場所とか知らないし、そもそも、」
怜の話を遮るように瑠衣が話す。
「そんな心配も言い訳もいらないよ、愛の力は偉大だからね。ほら、おとぎ話とかでもあるじゃん、キスをしてうんたらかんたらみたいな。」
斜め45°顔をあげて、手を組み夢見る少女のような眼差し。しかし、怜はスンとしている。
「愛とか、、だいたい、キスをしてうんたらかんたらになるのはおとぎ話の世界。現実的じゃない」
「うーっわ、こりゃ重症だわ。昔の怜に戻ったみたい」
[これは大変、好きという感情からもう一回感じさせないとダメなタイプです]
瑠衣は賢太郎に一方的にテレパシーを送る。賢太郎には生憎それを受信するシステムは着いていない。
賢太郎は病院の駐車場に停めた軽自動車のハンドルに臥せっていた。まぁ、無理もない。何にも替えは務まらない特別な思い出が、指の隙間からこぼれ落ちていくような、そんな絶望が、容赦なく降りかかる。
「ぼかぁ、アホや」
賢太郎は、怜とのラインを開いて、
(ごめん}
そう文字を打って、×印で文字を消す。
怜さんが僕からのラインを見るわけがない。
ピロン そう浮わついた音が、耳の近くで鳴った。
{ラインのトーク履歴を拝見しました。
私は、どうやら、勇元さんとの記憶を失っているようです)
{先程は、失礼致しました)
怜からのライン。
やっぱり、記憶が無いんだ。そうだろうと、思ってはいたけれど、こうやって、本人から文字で送られてくると失った重みが増す。
でも、心のどこかで、安心をしている自分がいたのも確かなことだった。
怜、本人が記憶をなくしていることを自覚したということで、僕と彼女との関係性を認めてもらえるような、嘘でないことが証明できたような気もしたんだ。
賢太郎は勇気を出して、怜に一文を送る。
(退院したら、二人で会うことはできませんか?}
既読がついて、15分後、怜からの短い返信があった。
{できます)
賢太郎は、背もたれに体重を預けて、背筋を伸ばす。そして、喜びを表現するスタンプをポンと送信する。
「彼は、端的に一言で言うと、とても優しくて頼りになる人。そして怜を二回も助けてる。あのクソジジイが怜を襲ったときと、そして今回の事故のとき賢太郎くんが迅速な対応をしてくれたお陰で死者はでなかったんだよ。」
怜は首をかしげる。
「本当?」
もしも、あの毎日、病室に入ってくる男が私の本当の婚約者だとすれば私は、とんでもなくひどいことを言ってしまったんじゃないだろうか?彼の気持ちをまったく想像できない、残酷で感情的な物言いだったに違いない。それに、未だ信じることはできないが、周りの反応からも、どうやら、本当にあの男と私は、婚約者同士だったんだ。
「この瑠衣が言うことだよ。本当に決まってるじゃない。それに、怜は今は記憶にないかもしれないけど、怜の婚約者だもん。まともな人だよ。ほら、もうじき退院なんでしょ、ほら病院っていつもと違う環境っていうかそれだけでストレスじゃん。だからさ、退院したらフッと思い出すんじゃない?」
瑠衣はベッド横の椅子で足を組み換える。
「そうなると思えない」
「じゃぁ、食事を一緒にするとか、思い出の場所に行くとか」
「そんな、何を話したら良いかもわからないし、思い出の場所とか知らないし、そもそも、」
怜の話を遮るように瑠衣が話す。
「そんな心配も言い訳もいらないよ、愛の力は偉大だからね。ほら、おとぎ話とかでもあるじゃん、キスをしてうんたらかんたらみたいな。」
斜め45°顔をあげて、手を組み夢見る少女のような眼差し。しかし、怜はスンとしている。
「愛とか、、だいたい、キスをしてうんたらかんたらになるのはおとぎ話の世界。現実的じゃない」
「うーっわ、こりゃ重症だわ。昔の怜に戻ったみたい」
[これは大変、好きという感情からもう一回感じさせないとダメなタイプです]
瑠衣は賢太郎に一方的にテレパシーを送る。賢太郎には生憎それを受信するシステムは着いていない。
賢太郎は病院の駐車場に停めた軽自動車のハンドルに臥せっていた。まぁ、無理もない。何にも替えは務まらない特別な思い出が、指の隙間からこぼれ落ちていくような、そんな絶望が、容赦なく降りかかる。
「ぼかぁ、アホや」
賢太郎は、怜とのラインを開いて、
(ごめん}
そう文字を打って、×印で文字を消す。
怜さんが僕からのラインを見るわけがない。
ピロン そう浮わついた音が、耳の近くで鳴った。
{ラインのトーク履歴を拝見しました。
私は、どうやら、勇元さんとの記憶を失っているようです)
{先程は、失礼致しました)
怜からのライン。
やっぱり、記憶が無いんだ。そうだろうと、思ってはいたけれど、こうやって、本人から文字で送られてくると失った重みが増す。
でも、心のどこかで、安心をしている自分がいたのも確かなことだった。
怜、本人が記憶をなくしていることを自覚したということで、僕と彼女との関係性を認めてもらえるような、嘘でないことが証明できたような気もしたんだ。
賢太郎は勇気を出して、怜に一文を送る。
(退院したら、二人で会うことはできませんか?}
既読がついて、15分後、怜からの短い返信があった。
{できます)
賢太郎は、背もたれに体重を預けて、背筋を伸ばす。そして、喜びを表現するスタンプをポンと送信する。
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