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合コン
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怜は、陽葵と一緒に、約束の居酒屋へと向かう。
「どんな人たちかな?」
陽葵は、ウキウキしているように見えたが、私の気持ちはそうではない。ただ、それがバレバレになるようなことはしない。一度、OKをしたんだ。だったら、少しは楽しそうにするべきだ。
「剣道部だっけ?」
「そうそう」
勝手な偏見だが、剣道部だったら割りと礼儀正しい人が多いのかな。そんなことをぼんやりと思う。
店に入る。香ばしい料理の匂いと、煙っぽい視界。大学の近くだからか、客層は若い。
紺色の腰エプロンをした若い店員がこっちに来る。
「いらっしゃーせー。何名さまでしょうか?」
「2人です。えっと、先に友達が入ってて」
店員は、客の予約名簿を確認する。
「はい、奥の座敷の方にいらっしゃいます。どうぞ」
「ありがとうございます」
陽葵は、この店をよく知っているようだった。席と席の細い道をすり抜けるみたいに進んで、座敷にたどり着く。
「あ、明神さん!」
名前を呼ばれて、声がした方を見る。
「勇元くんも来てたんですか?」
「え?知り合い?」
陽葵は私と勇元くんの顔を交互に見る。
「あ、そう。特講が一緒で」
「へー」
勇元くんは、笑顔で会釈する。
そして、その隣には中学の時のクラスメイトもいるではないか。なんという偶然。怜はパッと顔を伏せる。何で、アイツがここに。勇元くんと知り合いなの?
「陽葵、前行って」
「前とかないって、横並びでしょ」
「ちょっと待って」
陽葵は怜の席をポンポンとする。
怜は仕方ない、この時間を抜ければという感じで意を決して合コンに参加。
「明神さんと勇元、水谷は2年だよね、誕生日きてる?」
男性陣の左端に座る背が高い人がそう尋ねた。
「あ、はい」
偶然だけど、皆、誕生日は終わって、二十歳になっていた。
「じゃあ、飲む?」
「いえ、私は、あんまりお酒は好きじゃなくて、ソフトドリンクにします」
「了解」
「勇元、水谷、二人はどうする?」
「俺はチューハイで」
「僕は、普通のジンジャーエールで」
「高田さんは?」
「私はビールにします」
「じゃあ、俺もビールにしようかな」
最初の一杯が届いたところで乾杯をする。
カチャンとグラスがぶつかる。
料理も運ばれてくる。机の上に、いろんな居酒屋料理が並んで、それを各々、とっていくスタイル。
「あれ、もう一人はどうしたんですか?」
「あー、レポートが終わらないとかで、遅れてやってくるそうです」
「そうでしたか。この時期のレポートが大変じゃないですか?」
「はい」
「何学部でしたっけ?」
「私は、経営学部で、怜は法学部です。平岡さんは?」
「俺は、理学部っす」
「理学部…忙しそう」
「まぁ、ぼちぼちですね。こっちの、二人は俺の後輩で、勇元が法、水谷が経済です」
時間が経つと、お酒を飲んでいる三人は徐々にテンションがあがって、会話も盛り上がってきているようだった。そんな中、なんとなく、勇元と怜は蚊帳の外と言うか、3人に比べて落ち着いていた。もともと、二人とも、こういう場に慣れていなければ、それが得意なタイプでも無い。
「明神さん、この、海老おいしくないですか?僕、海老好きで、海老には目がなくて」
「美味しいですよね、家ではなかなか、こうホロホロにならなくて」
「ですよねー、明神さんって料理されるんですか?」
「はい、一応、毎日自炊してます。」
「えー!凄い!毎日となるとやっぱり大変じゃないですか?僕は、週3くらいですかね自炊は」
「それでも、十分やってる方ですよ」
「関西から出てきて、独り暮らしなんで、金銭的にゆとりなくて」
勇元くんはそう言うと、ハハッと若干の自嘲を含むような笑い方をした。
勇元くんは、当たり障りの無い会話を、どこか楽しそうに話す。
時計を見ると、9時半。横目で陽葵を見ると、陽葵は、頬を薄ピンクにしていた。陽葵は持ち前の明るさで、会話の盛り上がりもピークを迎えているみたいだった。
二軒目の話が持ち上がる。
正直、もう面倒だったし、疲れるし、早く帰りたかった。
「私、明日やらないとダメなこともあるので、ここで、お暇させていただきます」
怜は、きっちり一人ぶんの会計を、財布から取り出す。
「僕も、そろそろ」
勇元くんも、二軒目は帰ろうとする。
「な、良いじゃん、荒山」
「荒山?水谷、飲み過ぎだよ、彼女は明神さん」
最悪だ。向こうも気がついていたんだ。私が、元 荒山怜 で、中学のクラスメイトだったこと。
勇元くんがそう言うが、水谷はちょっとバカにしたような口調で怜に言ってきた。
「そっか、明神かぁ。小学生の頃の名字に戻ったんだ」
「ちょっと何言ってんの?水谷くん」
陽葵は水谷に厳しい口調でそう言った。
陽葵は眉間にシワを寄せる。陽葵は、私の生い立ちを知っているから、次に水谷が何を言おうとしたのかわかって、それを止めようとしたのかもしれない。ただ、それは、あんまり意味がなかった。
「あぁ、コイツ、DV受けてたの。中学と高校の2年の半ばくらいまでだな。お母さんの再婚相手に。だから、鉄みたいだろ。冷たいし、なびかないし、つまんねー奴なんだよ」
ガタッと音をたてて、怜は席を立った。じんわりと視界が滲んで輪郭がぼやける。
ずっと隠してきたのに。ずっと思い出したくなかったのに。
怜は、例えそれがどれだけ子供っぽくて、失礼なことか知っていたけど、雑に靴を履くと、店を走って出ていく。
「待って!」
「別にほんとのことなんだし、勇元、気にすんな」
水谷はそう言うと、チューハイをゴクゴクと飲む。
「気にする、しないの問題じゃないだろ?」
勇元はそう言って、スリッポンみたいな形をした靴に足を滑り込ませる。
勇元は怜を追う。
店を出て、右左を見る。でも、既に怜は、曲がり角を曲がった後のようで見えない。
「明神さーん!どこー?」
参ったな、見失った。もう暗いし危ないよな。勇元は駆け足になりながら辺りを探す。出会えたとして、何を言えば良いかそんなことは分からなかったけど、怜のことをこのまま放っておける人間ではなかった。
勇元は、横断歩道を渡って、クルマと人の足音をくぐり抜けて、駅の前の広場まで来たときにようやく怜を見つけた。
「やっと見つかった。もう、暗いし危ないで」
勇元は、ベンチに腰を掛けていた怜に駆け寄る。すると、怜は賢太郎と反対側に数十センチ移動する。
自販機の明かりが煌々としていて眩しいが、それ以上に人々の雑踏は騒々しく帰路を急ぐ者があちこちで見受けられた。
「ごめんなさい。雰囲気も悪くしてしまって」
怜は賢太郎と目を合わせようとはしない。
「なんで、謝るん?悪いのは水谷やろ。それと、僕からもごめん」
賢太郎は頭をさげる。うまい表現ではないが、仲間の不敬は、自分の不敬というか、賢太郎は、何も知らないでいた自分も、止めることが出来なかった自分も嫌だった。
しまった、うっかり敬語も忘れてそのまま。同い年だから良いのかな?
「いえ、彼が言ったことは事実なので。だから、私と一緒に居ても、勇元さんだってきっと楽しくないですよ」
怜は敬語だ。勇元はそれにあわせる。
「僕はそう思いません。明神さんは明るいですし、一緒に研究とかしててすごくやりやすいです。僕よりずっと博識ですし、レポとかも参考になります。それに明神さんとなら楽しくできます。細やかな気遣いが出来る優しい方だと思っていますし、その、えっと…」
賢太郎は去ろうとする怜を引き留めようと話す。
「お話は終わりましたか?お代は向こうに置いてきたので、もう帰ります」
ツンと冷たい怜。
「あの、これから何かあったら僕に話してください。いくらでも相談乗ります。力になれるか、分からんけど、味方で居ます!」
「機会があれば」
相談しないときの返事である。怜は下ろしていた髪を、一つにまとめて、鞄を手に取り、ベンチから立ち上がった。
「僕、好きです。明神さんのこと。
…別にそのただ僕の気持ち言っただけなので気に止めなくても良いんですけど」
怜は勇元を無視をしてバスの方に歩き出す。
勇元が顔をあげる頃には、怜の背中は随分小さくなっていた。勇元は差し出して無視をされた手をグーパーと握ったり開いたりする。
バスに揺られながら、怜はボーッと窓の外の移り行く景色を眺めていた。いくつもの光の粒が夜の学生街を照らし出す。
どうして、私がこんな目にあわないといけなかったのか考えても答えはなく、ただつり革に手をかけてバスの揺れに引っ張られないようにする。
アパートの二階。
古めかしい玄関ドアをガチャっと開ける。
すると、玄関のセンサーライトがピカッと光る。
シャワーを済ませて、髪を乾かしてから、キッチンに行って、コップ一杯の水を飲む。
机の上には半分ほど進めた課題がページを開けてそのまま放置されていた。横目にそれを見てから、怜はベッドに突っ伏した。
「勇元くんはどういうつもりであんなことを言ったんだろう?」
スマホを取り出し、ラインを開く。ケンタローのアイコンの横に赤い丸がついていて、新着のメッセージが入っていた。
「今日は、ゴメン!」
陽葵からも心配するラインが入っていた。と同時に、鉄と揶揄した男に一発ガツンと言ったと書かれていた。
でも、あの元同級生が言ったことはどこか的を射ているような雰囲気がして…深く傷つけられた。それと、同時に賢太郎の顔が浮かぶ。どういうことだったのか、思考はやがて迷子の果てに歩むのを止めた。
「どんな人たちかな?」
陽葵は、ウキウキしているように見えたが、私の気持ちはそうではない。ただ、それがバレバレになるようなことはしない。一度、OKをしたんだ。だったら、少しは楽しそうにするべきだ。
「剣道部だっけ?」
「そうそう」
勝手な偏見だが、剣道部だったら割りと礼儀正しい人が多いのかな。そんなことをぼんやりと思う。
店に入る。香ばしい料理の匂いと、煙っぽい視界。大学の近くだからか、客層は若い。
紺色の腰エプロンをした若い店員がこっちに来る。
「いらっしゃーせー。何名さまでしょうか?」
「2人です。えっと、先に友達が入ってて」
店員は、客の予約名簿を確認する。
「はい、奥の座敷の方にいらっしゃいます。どうぞ」
「ありがとうございます」
陽葵は、この店をよく知っているようだった。席と席の細い道をすり抜けるみたいに進んで、座敷にたどり着く。
「あ、明神さん!」
名前を呼ばれて、声がした方を見る。
「勇元くんも来てたんですか?」
「え?知り合い?」
陽葵は私と勇元くんの顔を交互に見る。
「あ、そう。特講が一緒で」
「へー」
勇元くんは、笑顔で会釈する。
そして、その隣には中学の時のクラスメイトもいるではないか。なんという偶然。怜はパッと顔を伏せる。何で、アイツがここに。勇元くんと知り合いなの?
「陽葵、前行って」
「前とかないって、横並びでしょ」
「ちょっと待って」
陽葵は怜の席をポンポンとする。
怜は仕方ない、この時間を抜ければという感じで意を決して合コンに参加。
「明神さんと勇元、水谷は2年だよね、誕生日きてる?」
男性陣の左端に座る背が高い人がそう尋ねた。
「あ、はい」
偶然だけど、皆、誕生日は終わって、二十歳になっていた。
「じゃあ、飲む?」
「いえ、私は、あんまりお酒は好きじゃなくて、ソフトドリンクにします」
「了解」
「勇元、水谷、二人はどうする?」
「俺はチューハイで」
「僕は、普通のジンジャーエールで」
「高田さんは?」
「私はビールにします」
「じゃあ、俺もビールにしようかな」
最初の一杯が届いたところで乾杯をする。
カチャンとグラスがぶつかる。
料理も運ばれてくる。机の上に、いろんな居酒屋料理が並んで、それを各々、とっていくスタイル。
「あれ、もう一人はどうしたんですか?」
「あー、レポートが終わらないとかで、遅れてやってくるそうです」
「そうでしたか。この時期のレポートが大変じゃないですか?」
「はい」
「何学部でしたっけ?」
「私は、経営学部で、怜は法学部です。平岡さんは?」
「俺は、理学部っす」
「理学部…忙しそう」
「まぁ、ぼちぼちですね。こっちの、二人は俺の後輩で、勇元が法、水谷が経済です」
時間が経つと、お酒を飲んでいる三人は徐々にテンションがあがって、会話も盛り上がってきているようだった。そんな中、なんとなく、勇元と怜は蚊帳の外と言うか、3人に比べて落ち着いていた。もともと、二人とも、こういう場に慣れていなければ、それが得意なタイプでも無い。
「明神さん、この、海老おいしくないですか?僕、海老好きで、海老には目がなくて」
「美味しいですよね、家ではなかなか、こうホロホロにならなくて」
「ですよねー、明神さんって料理されるんですか?」
「はい、一応、毎日自炊してます。」
「えー!凄い!毎日となるとやっぱり大変じゃないですか?僕は、週3くらいですかね自炊は」
「それでも、十分やってる方ですよ」
「関西から出てきて、独り暮らしなんで、金銭的にゆとりなくて」
勇元くんはそう言うと、ハハッと若干の自嘲を含むような笑い方をした。
勇元くんは、当たり障りの無い会話を、どこか楽しそうに話す。
時計を見ると、9時半。横目で陽葵を見ると、陽葵は、頬を薄ピンクにしていた。陽葵は持ち前の明るさで、会話の盛り上がりもピークを迎えているみたいだった。
二軒目の話が持ち上がる。
正直、もう面倒だったし、疲れるし、早く帰りたかった。
「私、明日やらないとダメなこともあるので、ここで、お暇させていただきます」
怜は、きっちり一人ぶんの会計を、財布から取り出す。
「僕も、そろそろ」
勇元くんも、二軒目は帰ろうとする。
「な、良いじゃん、荒山」
「荒山?水谷、飲み過ぎだよ、彼女は明神さん」
最悪だ。向こうも気がついていたんだ。私が、元 荒山怜 で、中学のクラスメイトだったこと。
勇元くんがそう言うが、水谷はちょっとバカにしたような口調で怜に言ってきた。
「そっか、明神かぁ。小学生の頃の名字に戻ったんだ」
「ちょっと何言ってんの?水谷くん」
陽葵は水谷に厳しい口調でそう言った。
陽葵は眉間にシワを寄せる。陽葵は、私の生い立ちを知っているから、次に水谷が何を言おうとしたのかわかって、それを止めようとしたのかもしれない。ただ、それは、あんまり意味がなかった。
「あぁ、コイツ、DV受けてたの。中学と高校の2年の半ばくらいまでだな。お母さんの再婚相手に。だから、鉄みたいだろ。冷たいし、なびかないし、つまんねー奴なんだよ」
ガタッと音をたてて、怜は席を立った。じんわりと視界が滲んで輪郭がぼやける。
ずっと隠してきたのに。ずっと思い出したくなかったのに。
怜は、例えそれがどれだけ子供っぽくて、失礼なことか知っていたけど、雑に靴を履くと、店を走って出ていく。
「待って!」
「別にほんとのことなんだし、勇元、気にすんな」
水谷はそう言うと、チューハイをゴクゴクと飲む。
「気にする、しないの問題じゃないだろ?」
勇元はそう言って、スリッポンみたいな形をした靴に足を滑り込ませる。
勇元は怜を追う。
店を出て、右左を見る。でも、既に怜は、曲がり角を曲がった後のようで見えない。
「明神さーん!どこー?」
参ったな、見失った。もう暗いし危ないよな。勇元は駆け足になりながら辺りを探す。出会えたとして、何を言えば良いかそんなことは分からなかったけど、怜のことをこのまま放っておける人間ではなかった。
勇元は、横断歩道を渡って、クルマと人の足音をくぐり抜けて、駅の前の広場まで来たときにようやく怜を見つけた。
「やっと見つかった。もう、暗いし危ないで」
勇元は、ベンチに腰を掛けていた怜に駆け寄る。すると、怜は賢太郎と反対側に数十センチ移動する。
自販機の明かりが煌々としていて眩しいが、それ以上に人々の雑踏は騒々しく帰路を急ぐ者があちこちで見受けられた。
「ごめんなさい。雰囲気も悪くしてしまって」
怜は賢太郎と目を合わせようとはしない。
「なんで、謝るん?悪いのは水谷やろ。それと、僕からもごめん」
賢太郎は頭をさげる。うまい表現ではないが、仲間の不敬は、自分の不敬というか、賢太郎は、何も知らないでいた自分も、止めることが出来なかった自分も嫌だった。
しまった、うっかり敬語も忘れてそのまま。同い年だから良いのかな?
「いえ、彼が言ったことは事実なので。だから、私と一緒に居ても、勇元さんだってきっと楽しくないですよ」
怜は敬語だ。勇元はそれにあわせる。
「僕はそう思いません。明神さんは明るいですし、一緒に研究とかしててすごくやりやすいです。僕よりずっと博識ですし、レポとかも参考になります。それに明神さんとなら楽しくできます。細やかな気遣いが出来る優しい方だと思っていますし、その、えっと…」
賢太郎は去ろうとする怜を引き留めようと話す。
「お話は終わりましたか?お代は向こうに置いてきたので、もう帰ります」
ツンと冷たい怜。
「あの、これから何かあったら僕に話してください。いくらでも相談乗ります。力になれるか、分からんけど、味方で居ます!」
「機会があれば」
相談しないときの返事である。怜は下ろしていた髪を、一つにまとめて、鞄を手に取り、ベンチから立ち上がった。
「僕、好きです。明神さんのこと。
…別にそのただ僕の気持ち言っただけなので気に止めなくても良いんですけど」
怜は勇元を無視をしてバスの方に歩き出す。
勇元が顔をあげる頃には、怜の背中は随分小さくなっていた。勇元は差し出して無視をされた手をグーパーと握ったり開いたりする。
バスに揺られながら、怜はボーッと窓の外の移り行く景色を眺めていた。いくつもの光の粒が夜の学生街を照らし出す。
どうして、私がこんな目にあわないといけなかったのか考えても答えはなく、ただつり革に手をかけてバスの揺れに引っ張られないようにする。
アパートの二階。
古めかしい玄関ドアをガチャっと開ける。
すると、玄関のセンサーライトがピカッと光る。
シャワーを済ませて、髪を乾かしてから、キッチンに行って、コップ一杯の水を飲む。
机の上には半分ほど進めた課題がページを開けてそのまま放置されていた。横目にそれを見てから、怜はベッドに突っ伏した。
「勇元くんはどういうつもりであんなことを言ったんだろう?」
スマホを取り出し、ラインを開く。ケンタローのアイコンの横に赤い丸がついていて、新着のメッセージが入っていた。
「今日は、ゴメン!」
陽葵からも心配するラインが入っていた。と同時に、鉄と揶揄した男に一発ガツンと言ったと書かれていた。
でも、あの元同級生が言ったことはどこか的を射ているような雰囲気がして…深く傷つけられた。それと、同時に賢太郎の顔が浮かぶ。どういうことだったのか、思考はやがて迷子の果てに歩むのを止めた。
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