2 / 19
選らばれし者
しおりを挟む
約束の二週間が経ち、カメラは回収された。学校では、誰が選ばれるのか。という話で、持ちきりだろう。蒼士は辞退したのかしていないのか、手首を見れば分かるのに、それすら容易いことではない。
選考会の次の日の事だ。紅葉は、信号待ちをしていた。町の中心部にある町立図書館へ本を返すためだ。中心部には、やたらと信号が多い。歩行者信号が青に変わる。キャップをかぶった、男の子も同じ信号をわたる。
その時だった。自動車信号は赤だというのに、やけにふらふらした車が、かなりの速度で近づいてくる。男の子は、その事に気づくそぶりはない。紅葉は、咄嗟の判断で、男の子の背中を押す。ドンという重い音と同時に、小2くらいの男の子は、派手にこける。
「痛いな!何するんだよ!」
後ろをみた瞬間に何が起きたのか理解したようだ。道路に横たわっている、女子高生。そして、その横には、ボンネットがへこんだ車。紅葉は、ゆっくりと立ち上がる。そして、運転席側にまわる。コンコンと窓を叩くが、内側からの返事はない。運転手は、ハンドルに頭を擦りつけるような格好で動かない。スマホをポケットから取り出して、119に電話をかける。
「家事ですか?救急ですか?」
「救急で、場所は、町立図書館前の信号です。」
「わかりました。」
「意識はありそうですか?」
「分かりません、直ぐに来てください!」
電話を切ると、紅葉は、自分が突き飛ばした男の子に近づく。
「ごめんね、痛かったよね」
車道側の信号が青になる。しかし、誰も通らない。交通事故の現場に居合わせたのだ。当たり前と言えば、当たり前。
「あ、ありがとうございます。」
男の子は、まだ、ドキドキしている。それに、目の前の女子高生は頭から流血。
消防署から見える信号だからか、救急車より先に職員が出てくる。
「大丈夫ですか、」
始めに声をかけられたのは、運転手ではなく、紅葉。直ぐに、救急車も駆けつける。あっという間に救急搬送されて、検査も受けた。頭部を切ったのと、足首の捻挫と打撲だけでおさまったのは、奇跡だと医者は口を揃えて言う。
運転手は、突然、心臓発作に見回れたらしく瀕死の状態だったが、どうにかして生き延びることができたそうだ。
紅葉が突き飛ばした男の子は擦り傷だけですんだ。
そんなことで、今に至る。頭をぶつけたことに、変わりはないので、数日間の入院を余儀なくされた。松葉杖をついて、学校に行けると思っていたのだが、松葉杖をつこうと思ったら、指が腫れていることに気づき、骨に異常はないものの、突き指との診断がくだされ、その状態で松葉杖は危険だからという理由で、車イスになり、エレベーターのない学校では仕方なく、一階の保健室に登校している。だが、明日には、リハビリのかいあってか自力で教室まで行けるはずだ。
それから、二週間後、、、
「藤原さん、おめでとう。選考会、通過したみたいだよ」
担任から手渡された封筒を大事に受けとる。クラスメイトが、ワラワラと集まる。
「もう一人。一ノ瀬さん、選考会通過、おめでとう」
「ありがとうございます」
先生が拍手を始めると、たちまちクラスの全員が拍手をする。
「封筒、開けてみろよ。一ノ瀬、藤原」
蒼士をチラッと見て、目が合う。どうやら、蒼士も、確認したらしい。蒼士と紅葉はベリベリと糊を剥がす。書類が、何枚か入っている。適当に一枚、取り出す。
「選考会通過理由?紅葉、何て書かれてた?俺は、将来を具体的に考える能力が長けており、生活態度においても、健全かつ一般的な常識が備わっていると判断できる。よって、高校生更生プロジェクトへの代表参加を認める。だって。」
「私は、えっと、なんか自分で読むのも恥ずかしいけど、自分の事を省みず、他者の安全を守る判断を下すということは、大人でも難しいことであり、また、冷静かつ迅速に適切な行動をとれるという、判断力、行動力の二点により、高校生更正プロジェクトの代表参加を認める。」
「カメラで監視は、まんざら嘘でもないみたいだな」
「二人とも、そこからの判断は自由だから、決まったら、一回、保護者と学校に来て。来週の、月までに決めといてね」
「はい」
どこからともなく、選考会の結果は漏れているらしく、放課後の部活では同学年はみんな知っていた。
「ずるいぞ、紅葉、一緒に行ったのに。」
「いいでしょ、もーう大学決まっちゃった!」
結羽が羨ましそうにする。
「全国で選ばれてる人が10人だって、一ノ瀬が言ってたよ」
「太平洋の真ん中までたどり着けたら、賞金も出るらしいよ。なんか、もらった紙に書かれてた。」
「じゃぁ、そっちもするの?」
「うん、できたらなと思ってる」
「そっか」
選考会の次の日の事だ。紅葉は、信号待ちをしていた。町の中心部にある町立図書館へ本を返すためだ。中心部には、やたらと信号が多い。歩行者信号が青に変わる。キャップをかぶった、男の子も同じ信号をわたる。
その時だった。自動車信号は赤だというのに、やけにふらふらした車が、かなりの速度で近づいてくる。男の子は、その事に気づくそぶりはない。紅葉は、咄嗟の判断で、男の子の背中を押す。ドンという重い音と同時に、小2くらいの男の子は、派手にこける。
「痛いな!何するんだよ!」
後ろをみた瞬間に何が起きたのか理解したようだ。道路に横たわっている、女子高生。そして、その横には、ボンネットがへこんだ車。紅葉は、ゆっくりと立ち上がる。そして、運転席側にまわる。コンコンと窓を叩くが、内側からの返事はない。運転手は、ハンドルに頭を擦りつけるような格好で動かない。スマホをポケットから取り出して、119に電話をかける。
「家事ですか?救急ですか?」
「救急で、場所は、町立図書館前の信号です。」
「わかりました。」
「意識はありそうですか?」
「分かりません、直ぐに来てください!」
電話を切ると、紅葉は、自分が突き飛ばした男の子に近づく。
「ごめんね、痛かったよね」
車道側の信号が青になる。しかし、誰も通らない。交通事故の現場に居合わせたのだ。当たり前と言えば、当たり前。
「あ、ありがとうございます。」
男の子は、まだ、ドキドキしている。それに、目の前の女子高生は頭から流血。
消防署から見える信号だからか、救急車より先に職員が出てくる。
「大丈夫ですか、」
始めに声をかけられたのは、運転手ではなく、紅葉。直ぐに、救急車も駆けつける。あっという間に救急搬送されて、検査も受けた。頭部を切ったのと、足首の捻挫と打撲だけでおさまったのは、奇跡だと医者は口を揃えて言う。
運転手は、突然、心臓発作に見回れたらしく瀕死の状態だったが、どうにかして生き延びることができたそうだ。
紅葉が突き飛ばした男の子は擦り傷だけですんだ。
そんなことで、今に至る。頭をぶつけたことに、変わりはないので、数日間の入院を余儀なくされた。松葉杖をついて、学校に行けると思っていたのだが、松葉杖をつこうと思ったら、指が腫れていることに気づき、骨に異常はないものの、突き指との診断がくだされ、その状態で松葉杖は危険だからという理由で、車イスになり、エレベーターのない学校では仕方なく、一階の保健室に登校している。だが、明日には、リハビリのかいあってか自力で教室まで行けるはずだ。
それから、二週間後、、、
「藤原さん、おめでとう。選考会、通過したみたいだよ」
担任から手渡された封筒を大事に受けとる。クラスメイトが、ワラワラと集まる。
「もう一人。一ノ瀬さん、選考会通過、おめでとう」
「ありがとうございます」
先生が拍手を始めると、たちまちクラスの全員が拍手をする。
「封筒、開けてみろよ。一ノ瀬、藤原」
蒼士をチラッと見て、目が合う。どうやら、蒼士も、確認したらしい。蒼士と紅葉はベリベリと糊を剥がす。書類が、何枚か入っている。適当に一枚、取り出す。
「選考会通過理由?紅葉、何て書かれてた?俺は、将来を具体的に考える能力が長けており、生活態度においても、健全かつ一般的な常識が備わっていると判断できる。よって、高校生更生プロジェクトへの代表参加を認める。だって。」
「私は、えっと、なんか自分で読むのも恥ずかしいけど、自分の事を省みず、他者の安全を守る判断を下すということは、大人でも難しいことであり、また、冷静かつ迅速に適切な行動をとれるという、判断力、行動力の二点により、高校生更正プロジェクトの代表参加を認める。」
「カメラで監視は、まんざら嘘でもないみたいだな」
「二人とも、そこからの判断は自由だから、決まったら、一回、保護者と学校に来て。来週の、月までに決めといてね」
「はい」
どこからともなく、選考会の結果は漏れているらしく、放課後の部活では同学年はみんな知っていた。
「ずるいぞ、紅葉、一緒に行ったのに。」
「いいでしょ、もーう大学決まっちゃった!」
結羽が羨ましそうにする。
「全国で選ばれてる人が10人だって、一ノ瀬が言ってたよ」
「太平洋の真ん中までたどり着けたら、賞金も出るらしいよ。なんか、もらった紙に書かれてた。」
「じゃぁ、そっちもするの?」
「うん、できたらなと思ってる」
「そっか」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
僕たちのトワイライトエクスプレス24時間41分
結 励琉
青春
トワイライトエクスプレス廃止から9年。懐かしの世界に戻ってみませんか。
1月24日、僕は札幌駅の4番線ホームにいる。肩からかけたカバンには、6号車のシングルツインの切符が入っている。さあ、これから24時間41分の旅が始まる。
2022年鉄道開業150年交通新聞社鉄道文芸プロジェクト「鉄文(てつぶん)」文学賞応募作
(受賞作のみ出版権は交通新聞社に帰属しています。)
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる