神殺しの花嫁

海花

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「お前の気持ちを信じられず…………辛い思いをさせて…………本当にすまなかった…………」

思いがけず抱きしめられた肩が熱い。

「………………琥珀…………」

「…………意気地がねぇのは……オレばっかだったな…………お前の方が余程……肝が据わってる」

自分を責めるように笑った口振りとは裏腹に、肩に回された手はキツく幸成を抱きしめた。

「……けどオレは……お前の望むものは…何も……やれねぇかもしれねぇよ……」

耳元で囁く声が、ひどく頼りなく怯えて聞こえる。

「昔犯した罪のせいで……オレには子が成せねぇ…………人間達が当たり前のように手にする幸せすら、オレはお前に───」

「──琥珀は本当に…………怖がりですね」

声を遮った幸成の腕が琥珀の首に触れ、その熱がゆっくりと包み込んだ。
しかしその腕が微かに震えている。
震えながら、それでも琥珀を安心させようと優しく抱きしめるのだ。

「俺はあなた以外……望んでません」

ものやわらかい声が、熱い息と共に肌を撫でた。

「……あなたとずっと一緒にいたい………琥珀の傍で…………生きていきたい……」

『ずっとあなたの傍にいます』と言った幸成の言葉が胸に蘇った。

───オレは何故……こんな簡単な言葉すら……

幸成の微かに震える身体を、琥珀はキツく抱きしめた。

───こんな真直まっすぐな心すら…………信じようとしなかったんだ…………

「オレもッ──お前がいればいい」

「………琥珀……」

「お前がいなければダメだ──」

縋る様に痛い程抱きしめる腕のせいか、それともやっと通じ合った想いのせいか、喉の奥が熱く込み上げ、月が照らす淡い光にも美しく燦く銀の髪が、ぼやけて見える。

「……俺も…………あなたが……琥珀が……いなければ…ダメです……」

やっと告げられた想いが、淡く光り、頬を濡らしながら落ちていく。
布を通して触れる肌が、温かい春の日差しのような匂いが、ただ恋しくて愛おしくて息をするのすら苦しい。

「……泣くなよ…」

幸成が顔を隠した肩に落ちた、温かい雫に琥珀は困ったように笑った。

「…………泣いてません…」

「そうか?」

「…泣いてません」

「そうか」

「……はい…」

そう答えながらも、洟を啜る小さな音にまた笑い、頬に触れる髪に琥珀は口付けた。

「悪かった……。二度とお前を離したりしねぇ」

「……はい…」

「………この先は……気が遠くなる程…長ぇぞ………?その間……ずっと二人だ……」

「……覚悟なら…とっくにできてます…」

「………そうか」

「……はい」

「………………幸成…………」

名前を呼んだまま黙っている琥珀に、幸成は僅かに肌を離し顔を上げた。
するとほのかに紅く染った頬が、穏やかな琥珀色の瞳が静かに見つめている。

「ずっと…………オレの傍にいてくれ……」

「──はい」

溢れ続ける涙が視界を霞ませ、それでも分かる程嬉しそうに、しかし照れたように笑った琥珀の顔に、余計涙が溢れた。
不意に重なった唇が柔らかくて、それにもまた泣いた幸成に、次は困ったように笑っていた。
温かい胸に抱かれ、自分では止めることが出来ない涙にも幸せだと思える。

時々髪を撫でる長い指が
その度にしがみつく幸成に触れる唇が
そして幾度も名前を呼ぶ声が
ひどく心地よくて…………
優しく抱きしめる腕に抱かれながら幸成はいつしか眠りの淵へと落ちていった。









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