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「俺はさ……」
紫黒はそれだけ口にすると、汁の中に泳ぐうどんを箸で器用に数本掬い、勢いよく啜り上げた。
「…………にんへんの……ふげーほこほが……」
「汚ぇなぁ……。食ってから話せよ」
「紫黒様……何言ってるかさっぱり分かりませんよ……」
口いっぱいにうどんを詰め込み、それでも話そうとする紫黒を窘めると、琥珀と黒曜もそれぞれ口へうどんを運んだ。
「…………だからよぉ……」
口の中の物を飲み込み一呼吸置くと
「人間にすげぇところがあるとしたら、この“麺”とかいう、長っ細ぇ食いもん作り出したとこだと思うわけよ」
感心した様に再び汁からうどんを掬いあげた。
「瑠璃にも食わしてやりてぇなぁ……」
「…………瑠璃も何度も食べてますよ」
小さく溜息を吐きくと、町に来る度に繰り返される会話に黒曜は呆れた様に返した。
それでも返すだけいい方で、琥珀に至っては無言で食べ続けている。
「しかし──あれだな?お前の黒髪は何度見ても見慣れねぇな……」
これまた毎回繰り返す台詞に、今度は黒曜も無言でうどんを口に運んだ。
琥珀の眷属の黒曜と、大御神の眷属である紫黒は立場は同じであっても、格が違う。
使える神の力量によって眷属の持つ霊力も違うだけに、格だけでは無く全てにおいて紫黒の方が上であった。
それ故に本来であればこの様な態度が許される筈が無い。
それは琥珀と紫黒に置いても同じで、神である琥珀と眷属である紫黒が肩を並べる事自体許されることでは無かったが、三人は、特に琥珀と紫黒は互いにそれを許せる程には心を許し合っていた。
「お前の情夫を切っ掛けに……随分盛大な仇討ちだなぁ、おい」
愉快そうに笑う紫黒に一瞥すると、琥珀は旅支度をした侍が数人、通りを闊歩している姿へ視線を向けた。
「狙いは琥珀の身体か?」
「…………だろうな……」
『神の身体には、髪一本にすらその霊力が宿る』
昔からそう信じられていた。
その身体を我がものにせんと、いつの世も『神殺し』を行う者が現れる。
そして今まさにそれを行おうと企てている者がいるのだ。
「…………愚かだとは思わんのかねぇ……?『神殺し』なんてもんが本当に出来るなら……とっくにこの世から神なんてもんはいなくなってるだろ……」
パカにしたように鼻で笑う紫黒を横目に、琥珀は手元の残り少なくなったうどんへと視線を戻した。
「…………幸成にも……このうどん食わしてやりてぇな」
ポツリと呟くように言った琥珀に大きく溜息を吐くと
「………あいつは瑠璃以上に食ってるよ」
黒曜は呆れたように残り少なくなったうどんを一気に口に入れた。
紫黒はそれだけ口にすると、汁の中に泳ぐうどんを箸で器用に数本掬い、勢いよく啜り上げた。
「…………にんへんの……ふげーほこほが……」
「汚ぇなぁ……。食ってから話せよ」
「紫黒様……何言ってるかさっぱり分かりませんよ……」
口いっぱいにうどんを詰め込み、それでも話そうとする紫黒を窘めると、琥珀と黒曜もそれぞれ口へうどんを運んだ。
「…………だからよぉ……」
口の中の物を飲み込み一呼吸置くと
「人間にすげぇところがあるとしたら、この“麺”とかいう、長っ細ぇ食いもん作り出したとこだと思うわけよ」
感心した様に再び汁からうどんを掬いあげた。
「瑠璃にも食わしてやりてぇなぁ……」
「…………瑠璃も何度も食べてますよ」
小さく溜息を吐きくと、町に来る度に繰り返される会話に黒曜は呆れた様に返した。
それでも返すだけいい方で、琥珀に至っては無言で食べ続けている。
「しかし──あれだな?お前の黒髪は何度見ても見慣れねぇな……」
これまた毎回繰り返す台詞に、今度は黒曜も無言でうどんを口に運んだ。
琥珀の眷属の黒曜と、大御神の眷属である紫黒は立場は同じであっても、格が違う。
使える神の力量によって眷属の持つ霊力も違うだけに、格だけでは無く全てにおいて紫黒の方が上であった。
それ故に本来であればこの様な態度が許される筈が無い。
それは琥珀と紫黒に置いても同じで、神である琥珀と眷属である紫黒が肩を並べる事自体許されることでは無かったが、三人は、特に琥珀と紫黒は互いにそれを許せる程には心を許し合っていた。
「お前の情夫を切っ掛けに……随分盛大な仇討ちだなぁ、おい」
愉快そうに笑う紫黒に一瞥すると、琥珀は旅支度をした侍が数人、通りを闊歩している姿へ視線を向けた。
「狙いは琥珀の身体か?」
「…………だろうな……」
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昔からそう信じられていた。
その身体を我がものにせんと、いつの世も『神殺し』を行う者が現れる。
そして今まさにそれを行おうと企てている者がいるのだ。
「…………愚かだとは思わんのかねぇ……?『神殺し』なんてもんが本当に出来るなら……とっくにこの世から神なんてもんはいなくなってるだろ……」
パカにしたように鼻で笑う紫黒を横目に、琥珀は手元の残り少なくなったうどんへと視線を戻した。
「…………幸成にも……このうどん食わしてやりてぇな」
ポツリと呟くように言った琥珀に大きく溜息を吐くと
「………あいつは瑠璃以上に食ってるよ」
黒曜は呆れたように残り少なくなったうどんを一気に口に入れた。
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