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迎えに
しおりを挟む「葵……おいで」
藤井がソファーから呼んでいるのが分かって、葵は洗い物の手を止めた。
「これだけやったら行きます」
「そんなのいいから……」
葵は苦笑いしながらソファーへ向かうと手を引かれ膝の上に乗せられる。
「愛してる」
そう言って抱きしめられキスをする。しかし、いつもならすぐに押し倒されるのに今日はずっと抱きしめられている。
「……藤井さん……?」
いつもと違う藤井の顔を心配そうに覗き込んだ。
「ん?」
自分に向けられる笑顔もやっぱりいつもと違う気がする……。
「大丈夫ですか?」
「……何が……?」
「だって………押し倒さないから………」
その為にクッション替わりのぬいぐるみも用意した程だ。藤井は葵の言葉に思わず笑いながら
「葵は、押し倒してほしいの?」
「———え⁉︎……そう言う訳じゃ……」
顔を赤くして俯く葵をまた強く抱きしめた。離したくなくてしょうがなくなる。自分を選ぶなんて万に一つもない事はさっきの反応からも解っている。
葵にキスをしていつもより激しく舌を絡めた。葵の喉の奥から声が漏れ自分を求めてくるのがわかる。
藤井はさらに激しくキスをして抱きしめる腕に力を入れる。このまま葵を壊してしまいたい衝動に駆られた。
———離したくない———
「……っん……藤井さん………少し…痛い……」
腕の中の葵が困った様に自分を見つめ、ようやく力を緩めた。
「ごめん……」
寂しそうに呟き葵の髪を優しく撫でた……。
俊輔が教えられたマンションの前まで辿り着くと、その背の高い建物を見上げた。
———葵が……ここにいる………。
心臓が今にも飛び出すんじゃないかと思う程激しく打つのがわかる。
ここに来るまで葵に言いたい言葉を何度も考えた。無意識に口から出ていて、すれ違いざま振り向かれもした。
———もう余計な事を考えるのはやめよう。どうせ……なる様にしかならないんだから………。
俊輔は緊張して震える指で藤井の部屋のインターホンを押した。
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