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藤井の瞳が余計冷たさを増すのが分かって、俊輔は一瞬怯みそうになったが何とか藤井の冷たい瞳を見つめ続けた。
「葵は、夏休みが終わったら帰ると言ってるけど……?」
「……それじゃあ遅いんです」
「課題の問題?それなら帰りに俺が…」
「違います」
藤井の言葉を俊輔が遮り
「俺の問題です」
藤井の目を見据えた。
「………キミの問題?」
「葵を……これ以上あなたの側にいさせたくありません」
俊輔は自分の手が震えるのが分かった。無茶を言っているのも分かっている。
「随分……勝手なことを言うね。………葵はなんて?」
「それは………」
俊輔は思わず俯いた。まさか電話にすら出てもらえないとは言いたく無い。
「聞いてないの?」
「……………」
「それじゃあ話にならない。キミが連れて帰ると言ったところで…葵が嫌がったらどうするつもり?」
「……それは…」
つい言葉が詰まる。自分が迎えに行ったところで当然嫌だと言われるだろう。
「キミは全く考えなしだね。この間もそうだった。少し冷静になって考えたらどう?別に俺が無理に葵を引き止めている訳じゃ無い。現に今だって家で自由にしている。葵が帰りたかったら帰ってるんじゃない?」
藤井の言っていることはもっともだった。家に帰らないと決めたのは葵本人だ。
「それでも……それでも嫌なんです!これ以上葵と…あなたが一緒にいるのが!俺も葵が好きだから……」
俊輔が精一杯の言葉を吐いた。ずっと我慢してきた思い。
藤井はしばらく俊輔を見ていたが大きなため息を着いて
「それ……俺に言うこと?」
呆れた様に呟いた。
「少し遅いけど……10時過ぎにうちにおいで。そこで葵に言うといい……。それで……選ぶのは葵だ」
藤井がどこか諦めた様な口調でそう言い、自宅の住所を俊輔に教えた。
「藤井さん……何かあったんですか?…さっきの子、葵くんのお兄さんて言ってたけど……」
店に戻ると千尋が心配そうにスタッフルームに入ってきた。
「いや……大したことじゃ無いから大丈夫だよ」
藤井が仕事用の笑顔で微笑んだ。
「……なら良いんですけど……。藤井さんの顔色も良くないし……」
———そりゃそうだ……帰ったら………
「随分仕事サボってたからね。サボり癖がついちゃっただけだよ」
———葵を……手放さなきゃならないんだから…………。
藤井は千尋に向かって無理に笑うと背中を向けて仕事を始めた。
「葵は、夏休みが終わったら帰ると言ってるけど……?」
「……それじゃあ遅いんです」
「課題の問題?それなら帰りに俺が…」
「違います」
藤井の言葉を俊輔が遮り
「俺の問題です」
藤井の目を見据えた。
「………キミの問題?」
「葵を……これ以上あなたの側にいさせたくありません」
俊輔は自分の手が震えるのが分かった。無茶を言っているのも分かっている。
「随分……勝手なことを言うね。………葵はなんて?」
「それは………」
俊輔は思わず俯いた。まさか電話にすら出てもらえないとは言いたく無い。
「聞いてないの?」
「……………」
「それじゃあ話にならない。キミが連れて帰ると言ったところで…葵が嫌がったらどうするつもり?」
「……それは…」
つい言葉が詰まる。自分が迎えに行ったところで当然嫌だと言われるだろう。
「キミは全く考えなしだね。この間もそうだった。少し冷静になって考えたらどう?別に俺が無理に葵を引き止めている訳じゃ無い。現に今だって家で自由にしている。葵が帰りたかったら帰ってるんじゃない?」
藤井の言っていることはもっともだった。家に帰らないと決めたのは葵本人だ。
「それでも……それでも嫌なんです!これ以上葵と…あなたが一緒にいるのが!俺も葵が好きだから……」
俊輔が精一杯の言葉を吐いた。ずっと我慢してきた思い。
藤井はしばらく俊輔を見ていたが大きなため息を着いて
「それ……俺に言うこと?」
呆れた様に呟いた。
「少し遅いけど……10時過ぎにうちにおいで。そこで葵に言うといい……。それで……選ぶのは葵だ」
藤井がどこか諦めた様な口調でそう言い、自宅の住所を俊輔に教えた。
「藤井さん……何かあったんですか?…さっきの子、葵くんのお兄さんて言ってたけど……」
店に戻ると千尋が心配そうにスタッフルームに入ってきた。
「いや……大したことじゃ無いから大丈夫だよ」
藤井が仕事用の笑顔で微笑んだ。
「……なら良いんですけど……。藤井さんの顔色も良くないし……」
———そりゃそうだ……帰ったら………
「随分仕事サボってたからね。サボり癖がついちゃっただけだよ」
———葵を……手放さなきゃならないんだから…………。
藤井は千尋に向かって無理に笑うと背中を向けて仕事を始めた。
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西条ネア
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