君の手の温もりが…

海花

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電話

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────既読になったのに…………。

葵へのメッセージが既読になってから既に一時間過ぎていた。

───これは所謂……既読スルー……というやつでは……。

俊輔は椅子に寄り掛かりテーブルに投げ出されたままのスマホを見つめた。

———葵のことだから…怒ってたら……絶対返事なんかしない………。

「………怒ってるよな…」

今更『思いを告げる』だけのことがどんなに大変なことだったのか身に染みる。まして他に恋人がいるのを分かっていて告げたところで……とまた弱気になった。
葵が自分を受け入れるなんて、万に一つも無い…。『あのひと』が葵を大事にしていることは薫の家で痛い程見ている。それなのにわざわざ自分の気持ちを伝えてこれ以上葵との関係を悪くすることに、何の意味があるんだろう…とさえ思える。

———そうじゃない……。自分の気持ちに答えを出さなきゃダメなんだ……。まともに話も出来なくて、帰ってさえこないのに……これ以上悪くなるも何もない!

俊輔は覚悟を決めたようにスマホを見据え

「電話しよう……」

投げ出されていたスマホを手に取り、葵の番号を押した。



———話があるって何だよ……。あー!なんて返せば良いか全然分かんねえよ!普通、話があるから帰ってこいとか、電話しろ、とか……なんかその後にあるもんなんじゃないの⁉︎

葵は俊輔からのメッセージを開いたままのスマホを睨みつけ

「話がある…だけじゃ、『あ、そうですか』で終わりだろ!本当に俊は頭良いんだか、悪いんだか分かんねえなぁ!」

一人で毒付いている。
返事なんて何でも良いと頭では解っている。『話ってなに?』たったそれだけでいいことくらい。けれどまた俊輔に余計なことを言ってこれ以上嫌われるのが怖いのも頭の隅で解っていた。
葵は再びスマホを見つめるとため息をついた。

———なんて……返そう………。

伝えたい言葉があるとすれば

———会いたい———

葵の指がゆっくりと動き出す。

『あ』『い』『た』『い』———

それを文字にしたのと同時に葵のスマホが着信を知らせた。

———俊———

画面の名前を見た瞬間………

———なっなんで⁉︎———

「———あ…………」


「……切られた…………」

俊輔はスマホを手に呆然としている。
出ないかも……とは思ったが、まさか切られるとは思っていなかった……。
通じなかったわけじゃない、一回か二回鳴ってから切れた。

「…そんなに………?」


「———切っちゃった………」

焦って思わず切ってしまっていた。もちろんワザとじゃない。ただタイミングが悪かった。送れもしない俊輔へのメッセージを作った途端の電話で本当に慌ててしまったのだ。

「絶対…勘違いされた………最悪だ……」

葵はソファーの上でそう呟き頭を抱えた……。
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