君の手の温もりが…

海花

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キスと手と

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俊輔が自分の問題を解いて一呼吸おきながら結衣に目を向ける。少し前から手が止まっているのに気付いていたからだ。

———少し…難しすぎたかな………

ずっと眉間に皺を寄せ首を捻りながら、俊輔が見ているのにも気付かず真剣に悩んでいる。

———きなこ餅味のアイスって……美味しいのかな……

結衣の顔を見ながら何となく考える。

———アイスの中に餅が入ってるのかな………それとも、餅は入ってないけど…きなこ餅の味ってことなのかな………もしそうなら……きなこ味じゃダメなのか…?

ボーッとそんな事を考えていると、不意に結衣と目が合った。少し前から俊輔が見つめているのに気付いていたのか、頬が微かに赤くなっていて……何も言わず俊輔を見つめている。
何故か俊輔には目を逸らしてはいけないと解る。

———そっか………

俊輔がそっと…結衣に口付ける。

———好きに…………ならなきゃ…………


車の中で葵は寝息を立てていた。
初めてちゃんと海を見て……結局全身ずぶ濡れになり、初めてのホテルでは散々調子付き……。そして藤井と朝まで求め合った。
藤井はミラー越しに葵の寝顔を見て微笑んだ。
葵が妙にはしゃいでいたのに気付いていた。そして「帰る」と言わない事にも……。
兄の元に帰りたくない…もしくは帰りづらい理由があるのだと分かる。

———今日で休みも終わりか………最終日、どうするかな………。

これで仕事が始まれば休みなんて当分無いのは分かっている。

———本来休みじゃないけど………。

自分で考えて笑ってしまう。

———葵は……いつまで…そばにいてくれるだろう………いつ……兄の気持ちに気付くのだろう………

「———藤井さん……?俺…寝ちゃてた……」

不意に葵が目を覚まし声を掛けた。身体を起こし眠そうに目をこすっている。

「まだ時間掛かるから寝てていいよ」

「———ん………」

少し倒してあるシートにまた身体を預けたかと思ったら

「…………手……繋いでいい……?」

藤井を見つめ手を差し出した。
少し驚いた様に一瞬目を見開いてミラー越しに葵を見る。自分を慰める為に葵から手を繋いできた事はあっても『手を繋ぎたい』と言われた事は初めてだった。

「俺が嫌だなんて言うと思う?」

藤井が差し出された葵の手を取る。

「だって……運転しづらいかな…って……」

照れたのを隠す様に窓の外の景色に目を向け、藤井の手を強く握り返した。
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