君の手の温もりが…

海花

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二人きり

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朝の柔らかい日差しがカーテンを抜けて部屋を明るくしていく。肌掛けから出る肩が恥ずかしく感じて、隣で寝息を立てる俊輔を起こしてしまわない様に、そっと隠れる迄引き上げた。
結衣は初めて見る俊輔の寝顔を見つめた。

———可愛い………。

まさかこんな風に肌を重ねる時がくるなんて思ってもいなかったし、結衣にとっては全てが初めてだった。
初めての時は両思いになった大好きな人と……と思い描いていた。
それでも後悔はしていないし、隣で安心した様に眠る俊輔を見ると幸せだとも思える。
昨日帰ってから、無理に笑っている俊輔に結衣からキスをした。見ているだけで切なくなる程無理をしているのが分かったからだ。

葵の代わりでも構わなかった……。

「———んー………」

結衣が見つめていると俊輔がゆっくりと目を開け、そしてもっとゆっくりと身体を起こし目を擦っている。
その反動で必然的に結衣の上の肌掛けも捲れていく………。
「………あ…………」
結衣が思わず声を上げると驚いた様に俊輔が振り向いた。

「———あっ………」

俊輔の目に露わになった結衣の肌が映る。

「ごめんっ‼︎」

───そうだ……昨日……

慌てて自分に掛かっていたところを掴み結衣の身体を隠した。
すると今度は自分の下半身が丸見えになっていることに結衣の視線で気付かされる。
結局俊輔は真っ赤になって背中を向け

「ホント…ごめん……」

と呟いた…………。



俊輔はキッチンでいつもの様に朝食を作っている。
裸の結衣をまさか目の前で着替えさせる訳にもいかず、取り敢えず着替えだけ済ませると

「朝食作るから、ゆっくり着替えて降りておいで」

と、何とか言葉にして部屋をでた。
昨日………ゲームセンターに寄った後、とにかく落ち着けなくなって…何かに縋りたくなって……
そして、結衣にキスをされて自分が止められなくなった………。
おそらく初めてセックスに夢中になった。何も考えずその行為にだけ没頭した……。
結衣の肌の感触が今でも残っている。
何度も重ねた唇の感触も………。

「お……おはよう……」

突然声を掛けられて俊輔は飛び跳ねんばかりに驚いて振り返った。

「…おはよう……」

お互い目を逸らし真っ赤になっている。

———なんか……話さなきゃ……

「結衣……パン…大丈夫?…だっけ…」

俊輔が焦って口にした。

「——え⁉︎……」

「え⁉︎…あ……朝飯……」

「あ……だ……大丈夫…」

———そうだよなぁ………パンなんか何回も一緒に食べてるじゃん………

そしてまた沈黙が訪れる……。気持ちだけが焦って……どうも会話が上手く続かない……。
何とも気まずい空気が流れる中

「手伝おうか……?」

結衣が俊輔の顔を覗き込む。

「え⁉︎……じゃあ、お願い…」

俊輔の返事に結衣が頷き、照れた様に笑った。

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