君の手の温もりが…

海花

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アイス

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「俊輔……大丈夫?」
結衣が心配そうに顔を覗き込んだ。
「───え?」
突然声を掛けられて俊輔は慌てて顔を上げた。そこで初めて自分が随分長い間ぼんやりしていたことに気付いた。
「手……ずっと止まってたから」
心配そうに微笑む結衣の笑顔が何故か気まずく感じで俊輔は教科書に目を移し
「ごめん、ぼーっとしてた」
誤魔化す様に答えた。
もう目の前に迫っている夏休み明けのテストの為に二人で勉強していた。何かやっていれば少しは落ち着けるような気がしたからだ。
「少し散歩でも行かない?」
結衣が明るく笑いかける。
「散歩?」
「そう!気分転換になるしさ」
「そうだね……たまには良いかも…」
「じゃあ決まり!」
結衣はそう言って立ち上がると
「ついでにアイスも買って行こ!」
と、満面の笑顔を向けた。

近くのコンビニまで行き、結衣はカップのアイスを、俊輔はブラックコーヒーを買い少し先の公園まで歩いた。
「あっついー!」
結衣が木陰のベンチを見つけ、ため息をつきながら座った。
「部屋の中涼しいから…夏なのすっかり忘れてた……」
「本当に暑い…。でも良い気分転換になったよ。ずっと部屋の中にいちゃダメだな」
俊輔が気持ちよさそうに背伸びをしながら「ありがとう」そう結衣に告げた。
それでも八月も終わりに近付いているせいか、木陰で座っていると心地良ささえ感じられる。
ふと見ると隣でアイスを頬張る結衣が余りにも幸せそうで俊輔もつられて笑顔になっていた。
「明日……何処か行こうか?…一緒に」
結衣がアイスを食べる手を止め俊輔を見つめる。
「もちろん……結衣が良ければだけど……」
「え…もちろん行きたい!」
結衣が慌てて立ち上がり持っていたアイスを落とした。
「あ………」
「あー!……私のアイス………」
俊輔も立ち上がり、落ち込む結衣の頭を撫でると
「アイス、買って帰ろう。そしたら明日の予定立てなきゃな」
笑顔でそう言った。
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