君の手の温もりが…

海花

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課題

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───あの人の言う通りだ……。俺は自分のことすら満足に出来ないのに……葵と別れろだなんて……笑わせる……。
俊輔はベッドに倒れ込み天井を見つめた。
車の中で見た藤井とキスをする葵の後ろ姿が今でも目に浮かび、俊輔は無意識に歯を食いしばった。思い出しただけで冷静ではいられなくなり、どうしていいか分からなくなる……。
「───葵………………」
俊輔は寝返りをうちドアを見つめ、自分を心配し薫の家にまで助けに来てくれた葵を思い出した。
薫の部屋に入ってきた葵の顔は今にも泣きそうな顔をしていた……。
──俺は……あいつに守られてばっかりだ……。
俊輔はベッドに丸まって目を閉じた。


藤井が帰ると葵は一人でリビングで過ごした。
俊輔が気になるが部屋に行くのは何故か躊躇われ、俊輔が降りてくるのを待つことにしたからだ。
何をしていても落ち着かない……。
ふと昨夜の俊輔とのキスを思い出してしまい、余計どうしていいか分からなくなる。
その時──葵のスマホが着信を知らせる音を鳴らし始めた。

しばらくして俊輔がリビングへ入っていくと、ダイニングテーブルで勉強をしていた葵が顔を上げた。
「……大丈夫か…?」
葵が心配そうに俊輔を見つめる。
「……うん……」
俊輔がそれだけ返した。なんと言ったらいいか分からない…。謝らなくては…と思うのに……
── 一体何に謝る……?葵の忠告を無視したこと?助けに来てもらったこと…?それとも……キスしたこと……?
結局謝ることが出来ず
「……勉強してるの?」
俊輔は机の上に目を向けた。
「え?……ああ……課題、全然やってなくて……」
葵が苦笑いする。
ぎこちない空気が二人の間を支配している。まだ純粋に兄弟でいられた頃……どんな風に葵に話しかけていたのかすら思い出せない。
「…あの人は……?」
俊輔が部屋をチラっと見回してから尋ねた。
「……帰ったよ」
大分前に、自分がいると俊輔が休めないだろうから…と帰っていった。
笑っていたが葵の目にはすごく不安そうに映った……。本当はきっと…離れたくなかったハズだ。
「一緒に行かなくて良かったの…?」
俊輔の言葉に葵が目を伏せ視線を机の上の課題に向けた。
「課題あったし……。藤井さんには明日行くって言ってあるから……」
本当は今日だけは俊輔のそばを離れたくなかった。
「ねえ……」
「………ん?」
葵の呼び掛けに俊輔が顔を上げると
「勉強教えてよ…。全然わかんないんだけど……」
葵が上目遣いで何故か少し不貞腐れた様に言って
「……いいよ。どこ分かんないの?」
俊輔が苦笑いした。
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