君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
上 下
127 / 160

キス

しおりを挟む
藤井がリビングへ行くとソファーで葵が座ったまま眠っているのが見えた。
もう少し休んでから行くと言う俊輔を部屋に残し一人で降りてきていた。
テーブルの上にはコーヒーが置かれている。ミルクもクリームも入っている様には見えないそのコーヒーを触るとまだ温かく、入れてからそう時間が経っていない事が分かる。
恐らく…眠気と戦う為に普段飲まないコーヒーを入れたのだろうと簡単に想像出来て思わず笑ってしまった。
しかし……それだけ俊輔のことが心配で仕方ないことも容易に解る。
藤井は床に膝をつき愛おしくて仕方のない葵の寝顔を見つめた。まだどこかあどけない寝顔にそっと触れる。

———このまま連れ去ってしまおうか……そうしたら……葵は俺だけを見てくれるだろうか………

「…………そんな訳ねぇか…」
一人で言って馬鹿げた考えに自嘲気味に笑った。
「……葵、………葵!」
藤井が葵の身体を揺すって起こした。
「——————⁉︎…藤井さん⁉︎」
いつもは簡単に起きない葵がすぐに飛び起き、藤井は苦笑いした。
「───俊は!?」
藤井は頭を撫でながら
「多分…もう大丈夫じゃないかな?薬は抜けてると思うよ。もう少ししたら降りてくるって……」
あまりにも必死で…見ている方が切なくなる。
「───良かった…………」
葵は安心した様にソファーの背もたれに身体を預けた。しかし直ぐにまた不安そうな顔に戻り
「藤井さんは!?」
藤井の腕を掴んだ。
「———え……?」
「怪我………」
心配そうに顔を覗き込む葵に思わず藤井の笑顔が歪んだ。葵の中にちゃんと自分がいることに胸が締め付けられそうになった。
「俺は……大丈夫だから」
無理に笑顔を作ると
「……嘘ですよね……?また無理してますよね……?ごめんなさい…俺のせいで……」
葵が藤井の肩に額をつけ怪我に障らない様にそっと抱きしめた。
「……痛くないですか?」
そう言って自分を見上げる葵が、言葉が出ない程愛おしく感じ藤井は強く抱きしめた。痛みが走るが葵が離れてしまわない様に必死で隠した。
葵は黙ったまま抱かれていた。痛みからか…そうじゃないのか…藤井が不安になっているのが解る。

———俺はこの人を不安にばかりさせてる………

葵は藤井を見つめると自分からキスをした。そうすることで藤井が少しは安心することが分かっているからだ。

———俺が今好きでいるべき人は……藤井さんだ………俊じゃない………。

葵が藤井の舌を見つけ出し絡めると、それに応えるように藤井も熱く舌を絡めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

息の仕方を教えてよ。

15
BL
コポコポ、コポコポ。 海の中から空を見上げる。 ああ、やっと終わるんだと思っていた。 人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。 そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。 いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚? そんなことを沈みながら考えていた。 そしてそのまま目を閉じる。 次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。 話自体は書き終えています。 12日まで一日一話短いですが更新されます。 ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。

エロ家庭教師 数学は置いといて、特別なことを教えてア・ゲ・ル

天災
BL
 まずは、君に色々教えようか。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

処理中です...