118 / 160
薬
しおりを挟む
家に帰ってきて既に一時間以上過ぎている。
全ての引き出しの中身をひっくり返し、鞄の中身も片っ端から出したが見つからない。
──葵がスマホを持ったのが高校入学と同時だったからまだ半年も経ってないのに!
俊輔に言われて確かに紙に書いて貰ったのを思い出した。しかし、その時既に犬猿の仲で受け取りはしたが登録はしなかった。
───だって葵に連絡する事があるなんて思わなかったもん!
結衣の部屋は足の踏み場もない程になっている。
───誰か……葵の連絡先知ってる人……
考えるが思いつかない。葵が親しい友達にしか教えないのもあるし、そこは年齢も性別も違うだけに共通の友人もいない。プールに一緒に行ったあずみにも確認したが結局連絡先は聞けていないと言っていた。
焦れば焦る程時間が経つのが早く思える。
──どうしよう……。
結衣が泣きそうになりながら座り込む。するとスマホが鳴り出し俊輔からのラインが表示された。
───……とりあえず探そう!
結衣は立ち上がり再び小さなメモを探し出した。
「結構……びびった」
部屋の明かりをリモコンで付けながら薫がボソッと呟くと
「ね……。俺も……」
俊輔も苦笑いを返した。
俊輔が来てから既に1本、ホラー映画を見終わっていた。ずっと気なっていてまだ観ていないから…と、俊輔が選んだ実在した心霊研究家の夫婦の映画だ。
二人は食事を摂るのもそこそこに見入っていた。
「次は俺の選んだヤツね」
既に冷めきったハンバーガーを口にしながら、薫が選ぶ為にご機嫌にタブレットをいじり出す。
───あ……イケね……結衣に連絡しなきゃ……。
俊輔がスマホを取り出し結衣にスタンプを送る。映画を観ながらも送ってこれで既に二度目だ。怠れば心配した結衣がここまで訪れかねない。
「───弟?」
タブレットを操作しながら薫が横目で見ている。
目が合った瞬間スマホを持っていた俊輔の手が一瞬ビクッと震えた。
「え………いや……結衣…」
薫の目がいつもと違った気がして、正体の知れない違和感に気持ちが焦り出す。再びタブレットを操作する薫からはもう違和感が感じられなくなっていて、その『違い』の正体が分からない。
「結衣、まだ課題終わってなくて…。時々聞いてくるからその返信」
聞かれてもいないのに言い訳をしている自分に気付く。
連絡をしている理由のせいか…さっきの違和感のせいか……、黙っている事が居心地が悪く感じる。薫の家でそう感じるのは初めてだった。
「あ、これどう?……かなり古いけど観たことかる?」
「どれ?」
俊輔がタブレットを覗き込む。
話が変わった事にホッとしていた。それでもまだ鼓動が少し早くなっている。
「多分、観たことない。それにしよう」
俊輔が笑顔で答え、大して食べたくもない冷めきったポテトを口に運ぶ。
とにかく部屋の空気を、自分に纒わり付く違和感をどうにかしたかった。
「あ……そうだ……」
薫が突然立ち上がり机の引き出しから小さい瓶を取り出し、中から錠剤を取り出すと俊輔に一錠差し出した。
「なに?これ?」
俊輔が指で持ち眺めてから薫に視線を戻し首を傾げた。
「海外の総合ビタミン剤。俺野菜嫌いだからサプリで摂るんだよね」
そう言って薫が口に入れる。
「舌下薬だから舐めてればいいよ」
「ふぅーん。俺は別に野菜好きだけどね」
そう言って笑うと俊輔も口に含む。
「……酸っぱいのかと思ったら…味しないんだね」
俊輔が味わっているらしく感想を述べる。普段薬を飲みつけているだけあって薬に対しての抵抗感はあまり無い。
「……そうかもね」
薫が俊輔に微笑み「映画観ようぜ」とタブレットを机のスタンドの上に戻し再び灯りを消した。
全ての引き出しの中身をひっくり返し、鞄の中身も片っ端から出したが見つからない。
──葵がスマホを持ったのが高校入学と同時だったからまだ半年も経ってないのに!
俊輔に言われて確かに紙に書いて貰ったのを思い出した。しかし、その時既に犬猿の仲で受け取りはしたが登録はしなかった。
───だって葵に連絡する事があるなんて思わなかったもん!
結衣の部屋は足の踏み場もない程になっている。
───誰か……葵の連絡先知ってる人……
考えるが思いつかない。葵が親しい友達にしか教えないのもあるし、そこは年齢も性別も違うだけに共通の友人もいない。プールに一緒に行ったあずみにも確認したが結局連絡先は聞けていないと言っていた。
焦れば焦る程時間が経つのが早く思える。
──どうしよう……。
結衣が泣きそうになりながら座り込む。するとスマホが鳴り出し俊輔からのラインが表示された。
───……とりあえず探そう!
結衣は立ち上がり再び小さなメモを探し出した。
「結構……びびった」
部屋の明かりをリモコンで付けながら薫がボソッと呟くと
「ね……。俺も……」
俊輔も苦笑いを返した。
俊輔が来てから既に1本、ホラー映画を見終わっていた。ずっと気なっていてまだ観ていないから…と、俊輔が選んだ実在した心霊研究家の夫婦の映画だ。
二人は食事を摂るのもそこそこに見入っていた。
「次は俺の選んだヤツね」
既に冷めきったハンバーガーを口にしながら、薫が選ぶ為にご機嫌にタブレットをいじり出す。
───あ……イケね……結衣に連絡しなきゃ……。
俊輔がスマホを取り出し結衣にスタンプを送る。映画を観ながらも送ってこれで既に二度目だ。怠れば心配した結衣がここまで訪れかねない。
「───弟?」
タブレットを操作しながら薫が横目で見ている。
目が合った瞬間スマホを持っていた俊輔の手が一瞬ビクッと震えた。
「え………いや……結衣…」
薫の目がいつもと違った気がして、正体の知れない違和感に気持ちが焦り出す。再びタブレットを操作する薫からはもう違和感が感じられなくなっていて、その『違い』の正体が分からない。
「結衣、まだ課題終わってなくて…。時々聞いてくるからその返信」
聞かれてもいないのに言い訳をしている自分に気付く。
連絡をしている理由のせいか…さっきの違和感のせいか……、黙っている事が居心地が悪く感じる。薫の家でそう感じるのは初めてだった。
「あ、これどう?……かなり古いけど観たことかる?」
「どれ?」
俊輔がタブレットを覗き込む。
話が変わった事にホッとしていた。それでもまだ鼓動が少し早くなっている。
「多分、観たことない。それにしよう」
俊輔が笑顔で答え、大して食べたくもない冷めきったポテトを口に運ぶ。
とにかく部屋の空気を、自分に纒わり付く違和感をどうにかしたかった。
「あ……そうだ……」
薫が突然立ち上がり机の引き出しから小さい瓶を取り出し、中から錠剤を取り出すと俊輔に一錠差し出した。
「なに?これ?」
俊輔が指で持ち眺めてから薫に視線を戻し首を傾げた。
「海外の総合ビタミン剤。俺野菜嫌いだからサプリで摂るんだよね」
そう言って薫が口に入れる。
「舌下薬だから舐めてればいいよ」
「ふぅーん。俺は別に野菜好きだけどね」
そう言って笑うと俊輔も口に含む。
「……酸っぱいのかと思ったら…味しないんだね」
俊輔が味わっているらしく感想を述べる。普段薬を飲みつけているだけあって薬に対しての抵抗感はあまり無い。
「……そうかもね」
薫が俊輔に微笑み「映画観ようぜ」とタブレットを机のスタンドの上に戻し再び灯りを消した。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる