君の手の温もりが…

海花

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葵と結衣

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結局、葵の提案通り俊輔がコンビニへ、ジュースとデザートを買いに行き、葵と結衣が家に残って片付けをすることになった。
結衣がコンロ周りをキレイにして、葵は床を拭いている。
「……何か話がしたかったんじゃないの…?」
葵に背を向けたまま結衣が口に出した。
その為にわざわざ俊輔を買い物に行かせたのだろう。
「…………」
葵の手が止まる。
少しの沈黙の後、葵が口を開いた。
「……最近、俊…前みたいによく笑うようになった…。お前のおかげだと思う」
結衣は黙ったままコンロを拭いている。
「俊は元々女の子と普通に付き合ってたし、俺が好きだからって…受け入れてもらえる訳ないんだよな…」
葵が軽く笑う。
「…そんなの解ってたつもりなのに…俺は勝手に怒って……」
結衣の手も止まる……。
「だから、俊はお前と居るのが正解なんだと思う」
葵はそれだけ言うと黙った。
俊輔を諦めると言っているのだ……。
結衣の鼓動が早くなる……。

───私だけが知ってる…………

「……聞いてもいい?」
「なに?」
「葵はさ……付き合ってる人の事…好きなの……?」
葵は黙って俯いた。
「……多分…好きなんだと思う……」
「───俊輔とどっちが……?」
言葉にしてから葵に酷いことを言っていると後悔した。

──これを聞いてどうするの?……
──本当のことを打ち明ける……?

葵は黙っている。
答えなんて、聞かなくても分かり切っていた。
「……変なこと聞いて…ごめん」
結衣が質問の終わりを告げた。

──私はズルいから…………
…………言いたくない………………。

「ただいま」
玄関が開く音がして俊輔が
「もう暑かったー」
と笑顔で入ってきた。

───俊が笑っていればそれでいい……。

───私は…………ズルい…………。

お互いの胸にそれぞれ思いを秘めたまま
「おかえり」と笑顔を向けた。

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