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2人の道
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バスまで少し時間があり俊輔はコンビニでお茶を買い、さっき貰ったばかりの薬を飲んだ。
家に帰り葵と顔を合わせることを思うと、手が震えた。
もし…またあの冷たい目を向けられたら…
──お前なんて嫌いだ──
そう言われているような気がした……。
バスに乗っていると医師が言ったように眠気がしてきたが、耐えられない程でもなくて安心する。
俊輔は家の少し手前で初めて見る車が止まっているのに気付いた。
……誰か来てるのかな……。
不思議に思いながら玄関を開けると見慣れない靴があり、疑問が確信へ変わる。
リビングへ行くが飲みかけのコーヒーだけが残されている。
手に持っていたお茶のペットボトルを机に置くと、薬をしまうために自室へ向かった。
階段を途中まで上がると人の気配があるのに気付いて俊輔は足を止める。
「……ん…ぁあっ!……」
俊輔の耳に葵の声らしきものが届く……。
「……いい………俺…………すごく……」
葵の部屋から……
「───んっっあぁ!!……いい──……」
間違えなく………
「……藤井…さん……俺………」
葵の───声──────
「──イキ…そう……」
俊輔の心臓が急激に早くなる……。
気付かれないように階段を降り、今入ってきたばかりの玄関から急いで外へ出た…。
何も考えられなかった。
今聞いた葵の声が本物かどうかも分からなかった……。
「……藤井さん……」
そう呼んでいた葵の艶かしい声が耳に残っている。
気が付くと昔遊んだ公園に来ている。
葵と毎日のようにサッカーをした……。
俊輔はベンチに腰を下ろした。
手を見ると微かに震えているものの、それ以上症状らしきものは出てこない…。
「……すげっ…薬……効いてんだな……」
そう言って笑った。
夏の日差しが容赦なく俊輔を照らす…。
「お茶……置いてきちゃったな……」
子供達が暑い中数人遊んでいる。
いっつも葵と一緒だった……。
俺の友達と遊ぶのも平気で着いてきて…。
「……俊輔……?」
名前を呼ばれて振り向くと、コンビニの袋をぶら下げた結衣が立っている。
「…………結衣…」
「……何…してるの?」
「……別に……ただ座ってるだけ……。結衣こそ何してんの?」
「私は…課題の途中で……飲み物とか買いに……」
「あと、お菓子?」
そう言って俊輔が笑うと、結衣もホッとしたように笑った。
「ひどい!私そんなにお菓子ばっかり食べてるわけじゃないからね」
「じゃあ…買ってないの?」
「……買ってるけどさ…」
「ほら見ろ」
2人で笑い合う。
「……この間はごめん…。謝らなきゃって思ってたんだけど…」
俊輔が地面に視線を移し呟くように声に出した。
「なんで俊輔が謝るの!?」
結衣が俊輔の視線を拾うように前にしゃがみこむ。
「謝らなきゃいけないのは私でしょ!…ちゃんと俊輔のこと考えなくて……いつもわがままばっかり言って……」
俊輔が結衣の頭を撫でる。
「そんなことない…。結衣が…謝る必要なんかない……」
俊輔の笑顔が悲しげに歪む…。
「…俺が…ちゃんと……」
「……俊…輔…?」
――もっと…ちゃんと自分を解っていれば……
……いつも葵に甘えて…………
……みんなに迷惑までかけて………
……挙句の果てに……
───…一番大切な人を……
………………無くした────。
俊輔の瞳から涙が落ちる……。
「……俊輔……?」
「ごめん……。ちょっと薬変わったから…気持ちが昂ってるのかも…」
俊輔が手の甲で涙を拭いて、無理に笑顔を作った。
結衣がそっと俊輔を抱きしめる。
「───結衣……?」
「もう一度……言ってもいい?」
結衣が俊輔の肩に顔を埋める…。
「…俊輔が……好きです。…ずっと前から」
「───…………」
――少しだけでも……俊輔を守りたい……
ずっと私がしてもらってきたように……。
「……俺なんか…やめた方がいい……」
俊輔が呟く。
「そんな言い方しないで…。私は……」
結衣が俊輔の瞳を見つめる。
「俊輔が好きなの…。俊輔じゃなきゃ…ダメなんだよ……」
俊輔が目をそらす……。
薬の所為もあるのか、正直何も考えられなかった……。
フッと周りがザワついているのに気付いて、顔をあげると、遊んいたはずの子供達が集まってきている…。
結衣も気付き、慌てて離れると
「えー!」
「もう終わりー!?」
と子供達が口々にからかう。
「こらっ!見世物じゃないんだからね!」
結衣が追いかけるフリをすると、子供達が楽しそうに声を上げながら逃げていく。
「まったく!もう!!」
怒っている結衣の姿を見て俊輔が思わず笑顔になる。
「──あ…」
振り向きざま俊輔の笑顔を見て結衣が赤くなった。
───やっちゃった………………
────告白の途中で「こらっ」って……
落ち込みながら俊輔の隣に腰を下ろした。
「結衣見てると元気でるわ」
俊輔の言葉に結衣が情けない顔で
「…ははは…」と笑った。
「ありがとうな…。さっきの……少し考えさせてほしい…」
結衣が俊輔の横顔を見つめる。
「ちゃんと…考えるから……」
結衣は何も言わず、一度だけ頷いた…。
家に帰り葵と顔を合わせることを思うと、手が震えた。
もし…またあの冷たい目を向けられたら…
──お前なんて嫌いだ──
そう言われているような気がした……。
バスに乗っていると医師が言ったように眠気がしてきたが、耐えられない程でもなくて安心する。
俊輔は家の少し手前で初めて見る車が止まっているのに気付いた。
……誰か来てるのかな……。
不思議に思いながら玄関を開けると見慣れない靴があり、疑問が確信へ変わる。
リビングへ行くが飲みかけのコーヒーだけが残されている。
手に持っていたお茶のペットボトルを机に置くと、薬をしまうために自室へ向かった。
階段を途中まで上がると人の気配があるのに気付いて俊輔は足を止める。
「……ん…ぁあっ!……」
俊輔の耳に葵の声らしきものが届く……。
「……いい………俺…………すごく……」
葵の部屋から……
「───んっっあぁ!!……いい──……」
間違えなく………
「……藤井…さん……俺………」
葵の───声──────
「──イキ…そう……」
俊輔の心臓が急激に早くなる……。
気付かれないように階段を降り、今入ってきたばかりの玄関から急いで外へ出た…。
何も考えられなかった。
今聞いた葵の声が本物かどうかも分からなかった……。
「……藤井さん……」
そう呼んでいた葵の艶かしい声が耳に残っている。
気が付くと昔遊んだ公園に来ている。
葵と毎日のようにサッカーをした……。
俊輔はベンチに腰を下ろした。
手を見ると微かに震えているものの、それ以上症状らしきものは出てこない…。
「……すげっ…薬……効いてんだな……」
そう言って笑った。
夏の日差しが容赦なく俊輔を照らす…。
「お茶……置いてきちゃったな……」
子供達が暑い中数人遊んでいる。
いっつも葵と一緒だった……。
俺の友達と遊ぶのも平気で着いてきて…。
「……俊輔……?」
名前を呼ばれて振り向くと、コンビニの袋をぶら下げた結衣が立っている。
「…………結衣…」
「……何…してるの?」
「……別に……ただ座ってるだけ……。結衣こそ何してんの?」
「私は…課題の途中で……飲み物とか買いに……」
「あと、お菓子?」
そう言って俊輔が笑うと、結衣もホッとしたように笑った。
「ひどい!私そんなにお菓子ばっかり食べてるわけじゃないからね」
「じゃあ…買ってないの?」
「……買ってるけどさ…」
「ほら見ろ」
2人で笑い合う。
「……この間はごめん…。謝らなきゃって思ってたんだけど…」
俊輔が地面に視線を移し呟くように声に出した。
「なんで俊輔が謝るの!?」
結衣が俊輔の視線を拾うように前にしゃがみこむ。
「謝らなきゃいけないのは私でしょ!…ちゃんと俊輔のこと考えなくて……いつもわがままばっかり言って……」
俊輔が結衣の頭を撫でる。
「そんなことない…。結衣が…謝る必要なんかない……」
俊輔の笑顔が悲しげに歪む…。
「…俺が…ちゃんと……」
「……俊…輔…?」
――もっと…ちゃんと自分を解っていれば……
……いつも葵に甘えて…………
……みんなに迷惑までかけて………
……挙句の果てに……
───…一番大切な人を……
………………無くした────。
俊輔の瞳から涙が落ちる……。
「……俊輔……?」
「ごめん……。ちょっと薬変わったから…気持ちが昂ってるのかも…」
俊輔が手の甲で涙を拭いて、無理に笑顔を作った。
結衣がそっと俊輔を抱きしめる。
「───結衣……?」
「もう一度……言ってもいい?」
結衣が俊輔の肩に顔を埋める…。
「…俊輔が……好きです。…ずっと前から」
「───…………」
――少しだけでも……俊輔を守りたい……
ずっと私がしてもらってきたように……。
「……俺なんか…やめた方がいい……」
俊輔が呟く。
「そんな言い方しないで…。私は……」
結衣が俊輔の瞳を見つめる。
「俊輔が好きなの…。俊輔じゃなきゃ…ダメなんだよ……」
俊輔が目をそらす……。
薬の所為もあるのか、正直何も考えられなかった……。
フッと周りがザワついているのに気付いて、顔をあげると、遊んいたはずの子供達が集まってきている…。
結衣も気付き、慌てて離れると
「えー!」
「もう終わりー!?」
と子供達が口々にからかう。
「こらっ!見世物じゃないんだからね!」
結衣が追いかけるフリをすると、子供達が楽しそうに声を上げながら逃げていく。
「まったく!もう!!」
怒っている結衣の姿を見て俊輔が思わず笑顔になる。
「──あ…」
振り向きざま俊輔の笑顔を見て結衣が赤くなった。
───やっちゃった………………
────告白の途中で「こらっ」って……
落ち込みながら俊輔の隣に腰を下ろした。
「結衣見てると元気でるわ」
俊輔の言葉に結衣が情けない顔で
「…ははは…」と笑った。
「ありがとうな…。さっきの……少し考えさせてほしい…」
結衣が俊輔の横顔を見つめる。
「ちゃんと…考えるから……」
結衣は何も言わず、一度だけ頷いた…。
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