君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
上 下
43 / 160

初めてのキス

しおりを挟む

身体を強ばらせる葵に藤井が笑って
「ここまでにしよう」
そう言う藤井の口を──
───今度は葵が塞いだ。
初めてのことで……歯が当たる……
「…困ったね…」
そう言い、葵を強く抱きしめキスをした。
今度は触れるだけじゃない…。
葵の口の中に藤井の舌が押し入ってくる。
「──ん―……」
葵が声にならない声を上げる。
藤井の舌が激しく絡み、唇を舐め優しく舌を吸う。
その舌が葵の首筋へとゆっくりおりていく。
「──…あ…んん──ぁっ……」
自分のものとは思えない声が口から漏れた。
身体が熱くなるのが解る。
その熱と恥ずかしさで顔が赤くなる。
首筋を舐めていた舌がふと肩に移り優しく歯を立てる
「…──ん!あっ」
思わず声が大きくなる。
その声を塞ぐようにまたキスをされる。
藤井の指が葵の背中をそっとなぞると、葵の身体はそれだけでビクッと波打った。

藤井は葵の目にうっすら涙があるのに気付いていた。
快感の為か…兄を思ってか…決め兼ねる。
このまま進んでいいのか──…。
藤井の中で葵は特別だった。
素直で美しく……生意気で……
そのくせ…とことん無垢で──……。
こんなことになるとは想定さえしていなかった。
葵にとっておそらく初めての経験だろう。
話を聞いていれば女性とのセックスすら経験がない。
完全に葵の身体は反応している。
このまま中途半端で終わらせるのも、自分の手でイかせてやるのも、どちらをとっても可哀想に思えた。

よろしくないな……。
いつもならもっと上手くかわせた筈だ…。
……──俺らしくない……。


……葵だから──………?


藤井はキスをやめ、優しく葵を抱きしめた。
「今日はこれで終わりにしよう」
耳元で優しく囁く。
中途半端で終わったとしても、本当に好きな人ができた時、後悔させたくなかった。
葵の様子から『兄に特別な想い』があるのは気付いていた。
しかしこの子が自分の様に全て割り切れるとも思えない。
兄に拒絶されて、一時自分に惹かれたとしても、それは兄の代わりで『一時の事』に過ぎない。
葵は顔を真っ赤にして俯いた。
「…──俺の……せいですか……?」
「そうじゃない。葵くんに後悔させたくない。僕は大人だから…自分の責任はとるし、とらなければいけない。でも君はまだ子供だ。いつか僕とこうなった事を悔やむ日が来るかもしれない。そうさせたくないんだ」
藤井が優しく抱きしめ、子供をあやす様に葵を諭す。
「僕のわがままだけど…いつか君が大人になった時、思い出したくもない思い出になりたくない。…──どうやら僕にとって、葵くんは特別らしい…」
藤井が困ったように微笑む。
「……俺は……確かに大人じゃないけど…自分のした事を人のせいにはしません。後悔するかは……分からないけど……。けど、それで藤井さんを責めたり、嫌いになったりはしません」
藤井は抱きしめたまま黙っている。
葵を自分のものにしたい衝動が湧き上がる。
「……困ったね」
藤井が優しく葵の顔を上げ「じゃあ…こうしよう…。まず座ってコーヒーを飲む。とりあえず落ち着いて話をしよう。それでもまだ……僕が必要だと言うなら……」
一旦言葉を切った。
「葵くんの部屋へ…、君のベットへ行こう」
言葉の意味が解り葵が唾を飲み込んだ。

藤井に促されイスに腰掛ける。
「何があったか話すかい?」
向かい側から藤井が優しく問いかける。
葵は黙っていた。
何を…どう話せばいいのかも分からなかった…。
ただ分かっているのは……くだらない嫉妬心で俊輔を傷付けたこと…。
……そしてその嫉妬心が自分では抑えられないこと……。

それと…――『弟』でしかない自分……。

葵が俯き唇を噛む。
「…無理に話す必要は無いよ」
そう言って藤井は冷めたコーヒーを口に入れた。
「……聞いてもいいですか?」
葵が口を開く。
「ん?なんだい?」
「さっき……藤井さんは…俺を『特別』だって言ってくれたけど…どうして、そう思ったんですか……?」
藤井は一瞬驚いたような顔をしたが、困ったような笑顔になると
「どうしてかな……確かに初めて葵くんを見た時、キレイな子だなと思ったし、仕事で関わるうちに素直で…良い子だとも思った。けど、それだけじゃない……。君と関わって一緒にゲームをして…気がついたら……惹かれてた…」
葵が真っ直ぐに藤井を見つめる。

…──こういうところにも……。

葵が俯きゆっくり口を開いた。
「…俺は…──子供の頃から俊が好きでした…。多分俊以外…好きになったことがないです。……だから…あいつの為なら何でもしてやりたいって思ってたし……ずっと傍で守ってやりたいって……」
絞り出すように話し続ける。
「……なのに…俺は…嫉妬して…わざとあいつを傷付けた…。昨日の発作も……」
葵が藤井を見つめ
「俊の為に…俊から離れたいんです。──もうこれ以上……傷付けなくて済むように──…」
葵の瞳が涙で潤んでいる。
「……それで…──僕かい?」
藤井の言葉に葵の顔が歪む。
「俺……藤井さんにすごく失礼なこと言ってますよね…」
「そんなことは気にしなくていい。さっきも言った筈だよ?お兄さんの代わりでも僕は構わない……」
藤井が黙ってコーヒーに視線を落とした。

この子は思ったより脆い…
俺に向いてさえくれれば守ってもやれる…
でももし…そうならなかったら……
この子は……壊れてしまわないだろうか…

しかし、藤井は自分で思っているより遥かに葵に惹かれてた。
「僕が代わりになれるといいけど…」
藤井は困ったように笑った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。 父にも、母にも、弟にさえも。 そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。 シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。 BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...