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俊輔と結衣は葵達の少し後から、俊輔が浮き輪に乗って結衣が掴まる格好で泳いでいた。
「大丈夫?」
結衣が心配そうに俊輔を覗き込む。
「割と平気」
俊輔が結衣に笑顔を向ける。
顔色も朝より大分良い。
「良かった」
結衣も笑顔になる。「あの二人…仲良くやってるみたいだね」
俊輔も葵達に視線を向ける。
「だな。葵も大分、大人になったしな」
「私以外にはね」
結衣が口を尖らせる。
「結衣もだろ。せっかく可愛くしてんのにそんな顔したら台無しだぞ」
俊輔が笑った。
「…――本当に可愛く見える?」
急に結衣の声が小さくなる。
「見えるよ。白い水着もよく似合ってる」
そう言って笑顔を向けた俊輔と目が合うと結衣は顔を赤くして俯いた。
その瞬間――……
隣をはしゃぎながら子ども達が泳いで過ぎ俊輔の顔に水が掛かる――
――『ドクンッ』――
大きく心臓が音を立てる。
――!? ヤバイ――……!!
過去の経験が蘇る。
今日は何度か水が 掛かっても平気で、完全に油断していた。
俊輔が深呼吸する。
こんな所で発作を起こせば皆に迷惑が掛かる。
葵はすぐそばにいる。
大丈夫だ。と自分に言い聞かせ、微かに湧き上がる恐怖心に気付かないフリをする。
「俊輔…」
結衣が俯いたまま名前を呼んだ。
「…どうした…?」
俊輔が平静を装って返事をする。
しかし鼓動は確実に早くなっていく。
「――私ね…」
話始めた結衣に呼吸の乱れを気付かれないよう、わざとゆっくり呼吸をするよう務めた。
「俊輔が好きなの…。――ずっと…子供の頃から…」
結衣の何年か越しの告白だった。
しかし――……
全てのタイミングが悪い方へと傾いていく。
俊輔の心臓が痛い程早くなる。
今、何と言った?好き?誰が?誰を?
頭が混乱して、呼吸がコントロール出来なくなる。
大量の水が襲ってくる気がする。
「ごめん……葵……呼んで……」
激しくなる呼吸の中、何とか言葉にする。
「俊輔…?――大丈夫!?」
異変に結衣も気付き声を上げる。
しかし既に俊輔は返事が返せる状態ではなくなっていた。
俊輔は自分が恐怖の真中にいることに気付いた。
何も見えなくなる。
俊輔の目に映るのは大量の水だけ…。
この中に落ちたら死んでしまう。
苦しい――
――……早く逃げなくちゃ――!!
早く!死んでしまう――
――………………早く!
俊輔は完全に発作を起こしていた。
「葵!!」
結衣が慌てて葵の名前を叫んだ。
名前が聞こえて葵が振り向くのと同時に俊輔がプールの中へ落ちる。
「――俊!!」
葵が慌てて俊輔の方へ向かおうとするが、水が流れているのも混んでいるのも仇になり上手く進めない。
「俊輔――!」
葵が精一杯叫ぶと、やっと周りも異変に気付き始めた。
俊輔が静かに沈んでいくのが分かる。
葵が何とか俊輔の元にたどり着き、腕を引っ張り抱き上げた。
俊輔は物凄勢いでむせ返っている。
監視員と周りの助けを借りて何とかプールサイドに引き上げた。
水を飲んでしまっていたらしく、酷くむせ込み、ようやく水を吐く。
それでも過呼吸が治まらず、背中を丸め、うずくまり震えている。
「俊、落ち着きな。大丈夫だから」
葵が俊輔の体を起こすと優しく抱きしめた。
しばらく抱きしめ背中をさするが、落ち着く様子が見られない俊輔に、葵が優しい声で話しかける。
「ほら、何が見えるか言ってみな?――青い空は見える?」
呼吸がコントロール出来ず苦しがり
俊輔が首を横に振る。
それでも再び声を掛ける。
「俊?――俺がいるから。もう大丈夫だよ」
葵の手も微かに震えている。
「何が見えるか言ってみて?」
結衣とあずみはどうしていいか解らず立ち尽くす。
「――…空が…空が見える」
やっと少し呼吸が落ち着いてくると、俊輔が答えた。
「どんな空?」
優しく声をかけながら、葵はずっと俊輔を抱きしめている。
「……青い空が…見える」
徐々に震えも治まってくる。
「空には雲はある?」
「雲は…」
そう言って俊輔の瞳が雲を探す。「雲は無い。――1つも無い…」
「ほら、もう大丈夫だ」
葵が明るい声で言うと、緊張が解れたように俊輔が葵に倒れ込んだ。
監視員が「医務室へ」と声を掛けてくれ、俊輔を一緒に連れて行ってくれるよう頼んだ。
結衣が慌てて追いかけようとすると
「来んな!」
葵が見たことの無いような目で結衣を睨みつけた。
結衣が動けなくなり立ち尽くす。
俊輔達がいなくなると野次馬も各々戻っていく。
「結衣…」
あずみが心配そうに声を掛ける。
結衣の頬が涙で濡れている。
「――……結衣…」
あずみが結衣の肩をそっと抱きしめた。
「大丈夫?」
結衣が心配そうに俊輔を覗き込む。
「割と平気」
俊輔が結衣に笑顔を向ける。
顔色も朝より大分良い。
「良かった」
結衣も笑顔になる。「あの二人…仲良くやってるみたいだね」
俊輔も葵達に視線を向ける。
「だな。葵も大分、大人になったしな」
「私以外にはね」
結衣が口を尖らせる。
「結衣もだろ。せっかく可愛くしてんのにそんな顔したら台無しだぞ」
俊輔が笑った。
「…――本当に可愛く見える?」
急に結衣の声が小さくなる。
「見えるよ。白い水着もよく似合ってる」
そう言って笑顔を向けた俊輔と目が合うと結衣は顔を赤くして俯いた。
その瞬間――……
隣をはしゃぎながら子ども達が泳いで過ぎ俊輔の顔に水が掛かる――
――『ドクンッ』――
大きく心臓が音を立てる。
――!? ヤバイ――……!!
過去の経験が蘇る。
今日は何度か水が 掛かっても平気で、完全に油断していた。
俊輔が深呼吸する。
こんな所で発作を起こせば皆に迷惑が掛かる。
葵はすぐそばにいる。
大丈夫だ。と自分に言い聞かせ、微かに湧き上がる恐怖心に気付かないフリをする。
「俊輔…」
結衣が俯いたまま名前を呼んだ。
「…どうした…?」
俊輔が平静を装って返事をする。
しかし鼓動は確実に早くなっていく。
「――私ね…」
話始めた結衣に呼吸の乱れを気付かれないよう、わざとゆっくり呼吸をするよう務めた。
「俊輔が好きなの…。――ずっと…子供の頃から…」
結衣の何年か越しの告白だった。
しかし――……
全てのタイミングが悪い方へと傾いていく。
俊輔の心臓が痛い程早くなる。
今、何と言った?好き?誰が?誰を?
頭が混乱して、呼吸がコントロール出来なくなる。
大量の水が襲ってくる気がする。
「ごめん……葵……呼んで……」
激しくなる呼吸の中、何とか言葉にする。
「俊輔…?――大丈夫!?」
異変に結衣も気付き声を上げる。
しかし既に俊輔は返事が返せる状態ではなくなっていた。
俊輔は自分が恐怖の真中にいることに気付いた。
何も見えなくなる。
俊輔の目に映るのは大量の水だけ…。
この中に落ちたら死んでしまう。
苦しい――
――……早く逃げなくちゃ――!!
早く!死んでしまう――
――………………早く!
俊輔は完全に発作を起こしていた。
「葵!!」
結衣が慌てて葵の名前を叫んだ。
名前が聞こえて葵が振り向くのと同時に俊輔がプールの中へ落ちる。
「――俊!!」
葵が慌てて俊輔の方へ向かおうとするが、水が流れているのも混んでいるのも仇になり上手く進めない。
「俊輔――!」
葵が精一杯叫ぶと、やっと周りも異変に気付き始めた。
俊輔が静かに沈んでいくのが分かる。
葵が何とか俊輔の元にたどり着き、腕を引っ張り抱き上げた。
俊輔は物凄勢いでむせ返っている。
監視員と周りの助けを借りて何とかプールサイドに引き上げた。
水を飲んでしまっていたらしく、酷くむせ込み、ようやく水を吐く。
それでも過呼吸が治まらず、背中を丸め、うずくまり震えている。
「俊、落ち着きな。大丈夫だから」
葵が俊輔の体を起こすと優しく抱きしめた。
しばらく抱きしめ背中をさするが、落ち着く様子が見られない俊輔に、葵が優しい声で話しかける。
「ほら、何が見えるか言ってみな?――青い空は見える?」
呼吸がコントロール出来ず苦しがり
俊輔が首を横に振る。
それでも再び声を掛ける。
「俊?――俺がいるから。もう大丈夫だよ」
葵の手も微かに震えている。
「何が見えるか言ってみて?」
結衣とあずみはどうしていいか解らず立ち尽くす。
「――…空が…空が見える」
やっと少し呼吸が落ち着いてくると、俊輔が答えた。
「どんな空?」
優しく声をかけながら、葵はずっと俊輔を抱きしめている。
「……青い空が…見える」
徐々に震えも治まってくる。
「空には雲はある?」
「雲は…」
そう言って俊輔の瞳が雲を探す。「雲は無い。――1つも無い…」
「ほら、もう大丈夫だ」
葵が明るい声で言うと、緊張が解れたように俊輔が葵に倒れ込んだ。
監視員が「医務室へ」と声を掛けてくれ、俊輔を一緒に連れて行ってくれるよう頼んだ。
結衣が慌てて追いかけようとすると
「来んな!」
葵が見たことの無いような目で結衣を睨みつけた。
結衣が動けなくなり立ち尽くす。
俊輔達がいなくなると野次馬も各々戻っていく。
「結衣…」
あずみが心配そうに声を掛ける。
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