君の手の温もりが…

海花

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葵とあずみ

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俊輔は風呂で溺れて以来、初めて夏らしい遊びを楽しんでいた。
それは偏に葵と結衣の気遣いがあってこそで俊輔はそれが何よりありがたかった。
葵と結衣も相変わらず罵り合ってはいたが、いつもより遥かに仲良く過ごしていた。
数時間経ち、すっかり打ち解けた4人は浮き輪を2つ借りると、俊輔と結衣、葵とあずみに別れて流れるプールに入った。
あずみが浮き輪に入り葵が掴まって流れている。
「葵くんて彼女いないの?」
2人になるとあずみがストレートに聞いてくる。
「いないっすね」
「本当に!?でもモテるでしょ?」
「まあ…ぼちぼちは」
「だよねぇ。さっきから葵くん見てる女の子結構いるもん」
「あずみさんもモテるでしょ?スタイルいいし」
葵があずみに笑顔を向ける。
「えー!別にモテないよ」
あずみが笑って返す。
面倒くさい…。
葵はこの手の社交辞令的な会話が苦手だった。
しかし今日は適当に上手くやるつもりだ。
俊輔の顔を潰す訳にはいかない。
「ねぇ、私と付き合わない?」
あずみが見つめる。
急な展開に一瞬言葉に詰まり
「え!?……あの…俺、……好きな人いるんで…」
葵の顔が微かに赤くなる。
「なぁんだ!そっかぁ!だから彼女作らないんだ!」
あずみが笑う。
「すみません」
葵が謝ると
「気にしないでよ。付き合えたらラッキーくらいな感じだったし」
あずみが苦笑いする。「でも葵くん真面目だね、とりあえず付き合ったりはしないんだ?」
「しないっすね。もうずっと何年も同じ人好きだから…」
「マジで!?」
あずみが目を見開いて「もしかして…葵くん童貞!?」
またまたストレートな質問に葵の顔がみるみる赤くなる。
「ごめん、ごめん!まだ16だもんね、当たり前なんだけど…。葵くん昔からモテるから、まさか『そう』とは思わなくて」
あずみが謝りながら葵の頭を撫でる。「それに俊輔くんは中学の時から結構彼女いたからさ」
あずみがそう言ってから
「あ…ごめん!もしかして知らなかった!?」
焦っている。
「あ、知ってます。あいつ嘘つけないから」
葵が笑った。
「ねぇ…」
あずみが声のトーンを落として葵の耳に近づくと「俊輔くん…彼女いるの?首筋にキスマークあるよね?」
やはり気付いたらしい。
「あぁ…、何か昨日気が付いたらあったって。本人、身に覚えないみたいだから…。虫刺されか何かじゃなかって言ってましたけどね…」
あずみが「ふぅん」と俊輔を一瞥する。
「あいつ…あ、結衣…気付いてますか?」
葵の質問に
「結衣は気付いてないと思う。気付いてたら結衣のことだから隠せないでしょ」
あずみが答える。
葵はホッとしながら同時にイラつきも覚え
俊輔と結衣に視線を向けると
「ブスも鈍感…」
と呟いた。
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