俊輔くんと葵くんの甘々な日常

海花

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デートと身長とマヨネーズ

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「デートしたい」
朝食を作る俺に葵が突然言い出した…。
確かに……最近忙しくて一緒に出かけていない…。
「どっか、行きたいとこあるの?」
「海」
「え!?!?」
「……嘘」
一瞬本当に青くなった……。
いくら発作を起こさなくなったと言っても、水が怖い俺にとって海はエベレストの頂上に連れて行けと言われるより難関だ……。
「映画見に行こうよ」
葵がスマホを取り出し調べ出す。
今までも何回か映画を見に行ってるし、家でまったりとDVDを見ながら過ごそう…としたこともある。
───けど、いつも少し微妙な雰囲気になる……。
何故なら……
とことん好みが合わない……。
葵の好きなのはアクション映画で、俺が好きなのはホラー映画……。
そして葵はホラーが大の苦手……。
だから別にアクション映画でいいって言う俺に、無理に見ても面白くないだろ!と怒り出す…。
一度、俺の好きな映画を一緒に見に行った時は途中で気持ち悪くなってトイレで吐いていた……。
結局選ぶのはお互い興味の無い映画ばかりで、微妙に終わる…。
まぁ……その後甘い物でも食べて帰ってくればいいか……。
「俊、これ見に行こう!」
嬉しそうに葵が提案した。

「結構混んでるな…」
日曜の映画館なんて久々に来た。
葵が提案したのは恐竜のテーマパークで恐竜が暴れ出す映画の続編……。
話題になっているけど、どうせ子供騙しだろうと思って来たが……。
並んでるのは大人ばかりだ。
そう言えば…子供の頃、葵が一時恐竜にハマってた事があったのを思い出した。
アクション映画ってより…パニック映画に近いような気がするけど、葵が嬉しそうだし…まぁいいか……。
そんな事を考えながらふと横を見る。
…………あれ?…………
すぐ横に少し前までは葵の口元が見えてたのに、今、目の前に見えるのは葵の首……。
「お前……また身長伸びた……?」
「え?あ……ああ……まぁ……少し……」
葵が気を使ってるのがひしひしと伝わる…。
「何センチ?」
「……181……」
───聞かなきゃ良かった……
俺より12センチも高い…………。
そうこうしている間に何とか席に着いて映画が始まる。
隣に座る葵を見ると長い足を組んでスクリーンを見つめている。
ただそれだけの事が絵になっていて…。
思わず息を飲んでしまう……。
……なんて言うか……
色気が……あるんだよな……。
葵がおでこをポリポリ掻くとスクリーンを見ながら俺の方に近ずいて……
「……お前……こっち見てないで映画見ろよ……」
ボソッと告げる。
あ……バレてた……。
俺は慌ててスクリーンに目を向けた。

「面白かった…」
思わず口にしていた。
ホラー映画じゃないけどちょっとドキドキして…
「俺も結構好きかも…シリーズ見てみようかな」
葵も楽しめたようで嬉しそうにパンフレットやグッズを見ていた。
映画館を出て、久しぶりに町中を二人でブラブラと歩く。
晴れてる所為か人通りが多い……。
葵は所々にあるアイスクリームやジェラート屋を気にしながら歩いてる。
「食べるか?」
俺が聞くと
「──ん……まだいい…」
と素っ気なく答える。
──目当ての店があるのかな……。
歩きながら時々女の子が葵を振り返る。
慣れているのか、葵は全く気にしない…。
「あ!あった!」
葵が「俊!あっち!」と、嬉しそうに足を早める。
看板に『フルーツサンド』とある。
へぇ……以外……。
もっとアイスとかケーキとか……。
純粋に甘い物を選ぶと思ってたのに。
店の外に幾つかベンチがあり、店内も狭いが幾つか席もある。
「ちょっと待ってて…」
そう言って葵は数人並んだ列に並んだ。
周りが若い女の子ばかりで…少し居づらくて葵の元に行こうとすると
「来んなよ」
と…怒られる……。
仕方がなく隅にある空いたベンチに座り、葵を見る。
女の子ばっかりが並ぶ中、頭一つ以上飛び出た葵が看板に書かれたメニューを見ながら並んでいる。
───可愛い───。
きっと男は自分しかいないのも気付いてない。
「ここ…空いてますかぁ?」
女の子2人が俺の座っているベンチの空いた方を指さしてる。
「ああ…。空いてますよ、どうぞ」
俺が立ち上がると
「あ、お兄さん座っててください!私達空いたところで全然大丈夫だから」
「……はあ」
と言って頭を下げる。
狭いベンチで、体温が分かるくらいの距離に他人がいるのがちょっとな……。
葵が来たらどっか行こう…。
「お友達と来てるんですか?」
隣の子におもむろに話かけられて
「え!?……あ…まぁ……」
つい口ごもる……。
「ここのめちゃくちゃ美味しいですよね」
もう一人の子も笑顔を向けてくれる……。
「…あー……そうなんだ……」
笑顔を返すが…思わず強ばる……。
「生クリームがガチでヤバい!」
「ね!」
2人で盛り上がってる。
是非……俺抜きでやってほしい……。
「ねえ!ねえ!高校生?どこの高校?」
そのノリで突っ込まれる。
「あ……いや……大学です……」
何で俺…敬語……?
「ガチで!?見えなーい!!年下かと思った!」
「……ははは……」
「え?どこの大学?この後良かったら……」
「俊……!」
そこでやっと葵が両手に持って戻ってきた。
「はい、俊はスモークチキンのヤツ」
座ってる俺に手渡す。
立ち上がろうとする俺に構わず葵が隣で立って食べ始めた。
仕方なく俺も食べる……。
───あ…美味しい……。
チラッと葵を見る。
多分…俺の為にこの店選んだんだな…。
「え!?お友達!?」
「ねえ!ねえ!この後一緒に遊ぼ…………」
そこまで言いかけて女の子が2人とも黙った……。
その言葉と同時に葵が屈んで俺の口の端に着いたマヨネーズを舐めたからだ。
「俊……、もっと上手く食えよ」
そう言って「何?何か言った?」
女の子達を軽く睨む。
固まって無言になる2人を尻目に葵は構わず食べ始めた。

俺はまだ赤い顔のまま葵の隣を歩いている。
「…お前……あれは……ちょっと恥ずかしいんだけど……」
あの後2人は黙ったまま食べ、どこかへ行った。
しかも見てたのは彼女達だけじゃないはずだ……。
あれだけ賑わってたんだから……。
「何で?俊は俺のでしょ?俺のものにちょっかい出したアイツらが悪いんでしょ?」
ちょっかいって……。
しかもちょっと機嫌悪くなってるし……。
それでもせっかくの『デート』だし、2人で服屋や本屋を見て回った。
辺りも暗くなり始めスマホを見ると7時近い。
「飯…どうする?食ってく?」
俺が聞くと
「ん──……どうしようか……」
曖昧な返事に歩き続ける。
裏通りに入ると、ちょっとした飲み屋街に出る。
こっちは日曜の所為か閑散としている。
葵が俺の腕を掴むと、小さなビルの隙間に入り込む。
「──!?なに!?」
葵が俺を壁に押し付け、顎を持ち上げいきなりキスをした。
葵の舌が容赦なく俺に絡みつく……。
「……ん……」
つい声が出てしまう……。
「……俺以外のヤツ……構わないで……」
葵が顔を赤くして呟いた……。
俺は葵の頭を肩に乗せ抱きしめる。
別に構った覚えはないけど……
こんなにヤキモチ焼いてるとは思わなかった…。
俺は苦笑いしながら「ごめん、ごめん」と謝った。
「……家……帰りたい……」
葵が耳元で呟く。
「早く帰って……しよう……?」
俺は再び苦笑いして
「分かった。いっぱいしような……」
そういった葵の髪を撫でた……。



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