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第五章
保養地を開発しよう
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「お疲れ様です、ってうわっ! 今日は混んでいるな……? 皆どうしたんだ?」
ある日「ケルークス」に私が出勤すると、店内はほぼ満席だった。
それだけではない、私以外の魂霊の相談員五名が既にそれぞれの定位置に陣取っていたのだ。パートナーを連れている者もいる。
魂霊の相談員が全員揃って出勤するのは珍しい。予め呼び出されている場合は別だが、そうした呼び出しはなかったはずだ。
「ハーウェック、今日は何かあったのだろうか?」
私は奥の席に陣取っていた副所長のハーウェックに尋ねた。
今日はアイリスが出勤しない日なので、相談員の中ではハーウェックがトップになるからだ。
相変わらずスキンヘッドに金属ジャラジャラの恰好だが、最近はツッコミを入れるのも面倒になったのであえて恰好には触れない。
「いえ、そのようなことはありません。皆さんの興味あるルール変更について今日、長老会議から発表があるのでそれを待っているのですよ」
「ルール変更? 長老会議?」
そんな話があったなど私は知らない。
「アーベル、聞いてないの? 魂霊にとって重大なことが決まるのだよ?」
噂好きのエリシアが仕方ないなぁ、という顔をしている。
そんなに重要なことが決まるなどという話があっただろうか?
「そういえば相談員ではない魂霊の姿が見えないな。他の相談所には相談員でない魂霊が集まっていると聞いたが」
白スーツにマフラー姿のドナートが首を傾げている。
向かいに二体のシルフの姿があるが、彼女たちは彼のパートナーのはずだ。千体近くいるという彼のパートナーをこちらもすべて把握しているわけではないので、彼女たちの名前は知らない。
「ドナート、日本人にはバカンスの習慣がないのだよ。だから今回の話に興味がないのではないか?」
フランシスが店内を見回した。彼はパートナーを連れず一人で来ているようだ。
「バカンス? 確かに日本では一般的ではなかったと思うが……相談所の仕事なら一ヶ月くらい休んだところで何の問題も無いと思うが? 別に休暇を義務付ける必要も無いのではないか?」
バカンスと聞いた私は、長期休暇のルール化でもするのかと思い、思わずフランシスに疑問をぶつけてしまった。
「その様子だとアーベルは何も知らないようだな。そういえば、最近アーベルが出勤しているときに他の相談員がいた、という話を聞いていないからそのせいかもしれんが」
言われてみればフランシスの言葉通り、最近他の魂霊の相談員と顔を合わせた記憶がほとんどない。
「アーベルはパートナーを連れて旅行した経験があったよね~。この手の話題には興味あると思うよ~」
コレットが私に向けて手を振った。
いつもは眠そうにしている彼女まで今日は身体を起こしている。これは珍しい。
「そうだったな。話を聞いていないアーベルに教えるが、今日は保養地の開発に関する回答を長老会議から得られる日なのだ」
ドナートがどうだと言わんばかりにビシッと私に指を突きつけた。
「そうか、なるほど……確かに休暇のために長く滞在する場所って精霊界にはあまりないよな……」
私は前にパートナー全員を連れて「光の砂浜」という場所で十日ばかり過ごしたが、精霊界にそのような場所はほとんどない。
「ここにいるほとんどのメンバーの出身地にはバカンスの制度がありましたからね。バカンスの行き先は重要事項なのですが、精霊界には良い場所が少ないですからね……彼女と過ごすのに相応しい場所というのが無いのは死活問題です」
パートナーのメイヴを連れたベネディクトが大真面目に語った。
メイヴはベネディクトの話に目を閉じたまま大仰にうなずいている。
こう見るとメイヴの意思をそのままベネディクトが代弁しているように見えるが、実態は恐らくそうではないはずだ。
相談所ではメイヴが優位に見える二人の関係も、家では完全にベネディクトがリードしているというかメイヴがベネディクトにかしずいているような感じなのだ。
言われてみれば、うちの相談所の魂霊の相談員は、生前ヨーロッパに住んでいた者が多い。日本人は私だけだ。
相談所は日本とつながっているから、もう少し日本人の相談員がいてもよいようなものなのだが……
いくつか理由はあると思うが、日本人だった移住者は移動型の精霊と契約するケースが多いことや、精霊界でうちの相談所から離れたレイヤに住んでいる者が多いのが原因だと思う。
移動型の精霊と契約している魂霊は通常、固定の住処を持たず、精霊界を転々としている。
相談所の業務は出勤して現場にいることが前提になるから、固定の住居を持たない者や、相談所から離れたレイヤに住んでいる者とは相性が良くないのだ。
うちの相談所も例外ではなく、ドナートを除く相談員の契約精霊は定住型が多いし、皆相談所へ二〇分程度で行き来できる場所に住居を構えている。
「死活問題、とまでは思わないが、旅行の選択肢が増えるのはいいな」
「オイラはアーベルなら理解してくれると思ったよ。前にハナにこの話をしたらポカンとされちゃってさ」
エリシアが呆れた顔を見せた。日本人は度し難い、とでも言いたそうだ。
「おっと、長老会議から決定を伝えると念話が飛んできました。少々お待ちください」
ハーウェックが頭に手をやった。
相談員たちの視線がハーウェックのスキンヘッドに集中する。
「……」
ハーウェックは精神を集中しているのか、目を閉じたまま時々うなずいている。
その表情からは、決定が他の相談員たちにとって良いものなのかそうでないものなのかを窺い知るのは難しそうだ。
おしゃべりなエリシアも黙ってハーウェックの方を見ている。
念話を聞く邪魔をしないようにしているのだろう。
「……終わりました。皆さんに長老会議の決定をお伝えします」
数分後、ハーウェックがカッ! っと目を見開いた後、穏やかに告げた。
彼は強面だが、話し方や物腰は柔らかい。
「……で、どうだった?」
待ちきれないとばかりにエリシアが尋ねた。
「結論から申し上げますと、今回は新たに十ヶ所の保養地を設けることが認められました」
「十ヶ所か……最初としてはそんなものか……」
ハーウェックの答えにドナートがやや落胆の顔を見せた。
その様子から、彼らが要求したのはもっと多くの保養地を設けることだったと思われる。
だが、ハーウェックの答えはそれで終わりではなかった。
「……ですが、保養地の規模については皆さんの要求が通りました。ひとつの保養地は最低でも三千体の精霊・魂霊を収容できることが条件になりましたよ」
「よかったじゃないか、ドナート! それならパートナー全員を連れてきても大丈夫だぞ!」
フランシスが興奮気味にまくし立てた。
ドナートのパートナーの正確な数は知らないが、七百体は超えているはずだ。
全員を一ヶ所の保養地に連れていくには、それなりの収容力がある場所でないと難しいはずだ。
私が以前訪れた「光の砂浜」も七百体の精霊や魂霊を収容するには狭すぎる。
私が設置したテントなら精霊や魂霊を七、八体収容することが可能だろうが、このテントが三〇張りも設置されたらいっぱいいっぱいくらいの広さだったと思う。
現在ある他の保養地的な場所がどのような規模なのかはわからないが、旅行する精霊が少ないことを考えると、あまり大規模なものはないのではないだろうか?
それを考えれば、今回の決定はドナートにとっては朗報のはずだ。
「確かにな。保養地の候補の選定に関わることはできそうなのか? それも条件に出していたはずだが……」
ドナートは表情を変えることなく尋ねた。まだ単純に喜べる状況ではない、といったところなのだろう。
「その件ですが、選定委員として魂霊六名を参加させると決定しました。相談員からはドナートさんを推薦するつもりです」
「うむ、それならいいだろう」
ドナートが冷静にうなずいた。
他の相談員たちから次々に「頼むわよ」「任せた」といった声がドナートにかけられた。
どうも私の与り知らぬところで、他の相談員たちは結託して保養地の設置を求めたようであった。
「それにしても今回は腰の重い長老会議がものすごいスピードで動いたので驚きました……やはり精霊と契約している移住者の要望は無視できないのでしょうね」
ハーウェックがポツリとつぶやいた。
「だといいね! これからも要望があったらハーウェックに頼むよ。よろしく!」
それを聞き逃さなかったエリシアがハーウェックの背中を叩いた。
どうやら今回の保養地の要望は、彼女たちからハーウェックを通して長老会議に伝えられたようだ。
エリシアたちが所長のアイリスではなく、敢えて副所長のハーウェックを選んで要望を伝えた理由はおおよそ見当がつく。
ハーウェックは精霊の中では特殊な地位にあるそうだ。
アイリスと同じ初期の精霊だが、長老会議を構成する多くの原初の精霊にも顔が利くらしい。
というのも原初の精霊の中でも有力なポセイドンを育てたとされているからだ。
アイリスも長老会議や移住管理委員会とはよく話をしているし、こちらの要望もそれなりに通してくれている。
だが、彼女の場合は、どちらかというとこれらの組織に体よく使われているような印象がある。
「まさか五日で返事がもらえるとは思いませんでしたよ。そのおかげでアーベルには情報を伝える機会がなかったのですけどね。すみません」
ベネディクトが感心した様子を見せた後、私に向かって頭を下げた。
「たまたまこの前アーベルとフランシス以外の全員が揃ったからそのときにぱーっと話して、ベネディクトとドナートに整理してもらってハーウェックに要望を出したんだよね。その後フランシスには会ったけど、アーベルには会わなかったから話する機会が無かったのさ」
エリシアが要望を出した経緯を説明してくれた。
どうも一週間ほど前にたまたま多くのメンバーが「ケルークス」に集まったことがあり、それがきっかけになったようだ。
この一週間ほど、私はフランシス以外の魂霊の相談員と顔を合わせることがなかった。
フランシスがエリシアから要望のことを伝えられたのは昨日のことらしく、私に要望のことを伝える機会がなかったらしい。
「私やフランシスが反対したところで四人が賛同した意見なら問題ないだろう」
相談員全員の賛成が無ければ要望を出せないなんてことはないから、私も彼らの決定を責めるつもりにはなれない。
「そうそう、アーベルにとっても悪い話じゃないだろう」
フランシスの言う通り、これは私にとっても悪い話ではないからだ。
「詫びと言ってはアレだが……保養地についてアーベルの要望があれば聞いておきたい」
ドナートが礼儀正しく頭を下げてきた。
そこまでする必要はないと思うのだが、こちらから要望したいこともあるので遠慮なく伝えておこう。
パートナーたちと旅行する先のあてができるのは歓迎だ。
せいぜいドナートの手腕に期待するとしよう。
ある日「ケルークス」に私が出勤すると、店内はほぼ満席だった。
それだけではない、私以外の魂霊の相談員五名が既にそれぞれの定位置に陣取っていたのだ。パートナーを連れている者もいる。
魂霊の相談員が全員揃って出勤するのは珍しい。予め呼び出されている場合は別だが、そうした呼び出しはなかったはずだ。
「ハーウェック、今日は何かあったのだろうか?」
私は奥の席に陣取っていた副所長のハーウェックに尋ねた。
今日はアイリスが出勤しない日なので、相談員の中ではハーウェックがトップになるからだ。
相変わらずスキンヘッドに金属ジャラジャラの恰好だが、最近はツッコミを入れるのも面倒になったのであえて恰好には触れない。
「いえ、そのようなことはありません。皆さんの興味あるルール変更について今日、長老会議から発表があるのでそれを待っているのですよ」
「ルール変更? 長老会議?」
そんな話があったなど私は知らない。
「アーベル、聞いてないの? 魂霊にとって重大なことが決まるのだよ?」
噂好きのエリシアが仕方ないなぁ、という顔をしている。
そんなに重要なことが決まるなどという話があっただろうか?
「そういえば相談員ではない魂霊の姿が見えないな。他の相談所には相談員でない魂霊が集まっていると聞いたが」
白スーツにマフラー姿のドナートが首を傾げている。
向かいに二体のシルフの姿があるが、彼女たちは彼のパートナーのはずだ。千体近くいるという彼のパートナーをこちらもすべて把握しているわけではないので、彼女たちの名前は知らない。
「ドナート、日本人にはバカンスの習慣がないのだよ。だから今回の話に興味がないのではないか?」
フランシスが店内を見回した。彼はパートナーを連れず一人で来ているようだ。
「バカンス? 確かに日本では一般的ではなかったと思うが……相談所の仕事なら一ヶ月くらい休んだところで何の問題も無いと思うが? 別に休暇を義務付ける必要も無いのではないか?」
バカンスと聞いた私は、長期休暇のルール化でもするのかと思い、思わずフランシスに疑問をぶつけてしまった。
「その様子だとアーベルは何も知らないようだな。そういえば、最近アーベルが出勤しているときに他の相談員がいた、という話を聞いていないからそのせいかもしれんが」
言われてみればフランシスの言葉通り、最近他の魂霊の相談員と顔を合わせた記憶がほとんどない。
「アーベルはパートナーを連れて旅行した経験があったよね~。この手の話題には興味あると思うよ~」
コレットが私に向けて手を振った。
いつもは眠そうにしている彼女まで今日は身体を起こしている。これは珍しい。
「そうだったな。話を聞いていないアーベルに教えるが、今日は保養地の開発に関する回答を長老会議から得られる日なのだ」
ドナートがどうだと言わんばかりにビシッと私に指を突きつけた。
「そうか、なるほど……確かに休暇のために長く滞在する場所って精霊界にはあまりないよな……」
私は前にパートナー全員を連れて「光の砂浜」という場所で十日ばかり過ごしたが、精霊界にそのような場所はほとんどない。
「ここにいるほとんどのメンバーの出身地にはバカンスの制度がありましたからね。バカンスの行き先は重要事項なのですが、精霊界には良い場所が少ないですからね……彼女と過ごすのに相応しい場所というのが無いのは死活問題です」
パートナーのメイヴを連れたベネディクトが大真面目に語った。
メイヴはベネディクトの話に目を閉じたまま大仰にうなずいている。
こう見るとメイヴの意思をそのままベネディクトが代弁しているように見えるが、実態は恐らくそうではないはずだ。
相談所ではメイヴが優位に見える二人の関係も、家では完全にベネディクトがリードしているというかメイヴがベネディクトにかしずいているような感じなのだ。
言われてみれば、うちの相談所の魂霊の相談員は、生前ヨーロッパに住んでいた者が多い。日本人は私だけだ。
相談所は日本とつながっているから、もう少し日本人の相談員がいてもよいようなものなのだが……
いくつか理由はあると思うが、日本人だった移住者は移動型の精霊と契約するケースが多いことや、精霊界でうちの相談所から離れたレイヤに住んでいる者が多いのが原因だと思う。
移動型の精霊と契約している魂霊は通常、固定の住処を持たず、精霊界を転々としている。
相談所の業務は出勤して現場にいることが前提になるから、固定の住居を持たない者や、相談所から離れたレイヤに住んでいる者とは相性が良くないのだ。
うちの相談所も例外ではなく、ドナートを除く相談員の契約精霊は定住型が多いし、皆相談所へ二〇分程度で行き来できる場所に住居を構えている。
「死活問題、とまでは思わないが、旅行の選択肢が増えるのはいいな」
「オイラはアーベルなら理解してくれると思ったよ。前にハナにこの話をしたらポカンとされちゃってさ」
エリシアが呆れた顔を見せた。日本人は度し難い、とでも言いたそうだ。
「おっと、長老会議から決定を伝えると念話が飛んできました。少々お待ちください」
ハーウェックが頭に手をやった。
相談員たちの視線がハーウェックのスキンヘッドに集中する。
「……」
ハーウェックは精神を集中しているのか、目を閉じたまま時々うなずいている。
その表情からは、決定が他の相談員たちにとって良いものなのかそうでないものなのかを窺い知るのは難しそうだ。
おしゃべりなエリシアも黙ってハーウェックの方を見ている。
念話を聞く邪魔をしないようにしているのだろう。
「……終わりました。皆さんに長老会議の決定をお伝えします」
数分後、ハーウェックがカッ! っと目を見開いた後、穏やかに告げた。
彼は強面だが、話し方や物腰は柔らかい。
「……で、どうだった?」
待ちきれないとばかりにエリシアが尋ねた。
「結論から申し上げますと、今回は新たに十ヶ所の保養地を設けることが認められました」
「十ヶ所か……最初としてはそんなものか……」
ハーウェックの答えにドナートがやや落胆の顔を見せた。
その様子から、彼らが要求したのはもっと多くの保養地を設けることだったと思われる。
だが、ハーウェックの答えはそれで終わりではなかった。
「……ですが、保養地の規模については皆さんの要求が通りました。ひとつの保養地は最低でも三千体の精霊・魂霊を収容できることが条件になりましたよ」
「よかったじゃないか、ドナート! それならパートナー全員を連れてきても大丈夫だぞ!」
フランシスが興奮気味にまくし立てた。
ドナートのパートナーの正確な数は知らないが、七百体は超えているはずだ。
全員を一ヶ所の保養地に連れていくには、それなりの収容力がある場所でないと難しいはずだ。
私が以前訪れた「光の砂浜」も七百体の精霊や魂霊を収容するには狭すぎる。
私が設置したテントなら精霊や魂霊を七、八体収容することが可能だろうが、このテントが三〇張りも設置されたらいっぱいいっぱいくらいの広さだったと思う。
現在ある他の保養地的な場所がどのような規模なのかはわからないが、旅行する精霊が少ないことを考えると、あまり大規模なものはないのではないだろうか?
それを考えれば、今回の決定はドナートにとっては朗報のはずだ。
「確かにな。保養地の候補の選定に関わることはできそうなのか? それも条件に出していたはずだが……」
ドナートは表情を変えることなく尋ねた。まだ単純に喜べる状況ではない、といったところなのだろう。
「その件ですが、選定委員として魂霊六名を参加させると決定しました。相談員からはドナートさんを推薦するつもりです」
「うむ、それならいいだろう」
ドナートが冷静にうなずいた。
他の相談員たちから次々に「頼むわよ」「任せた」といった声がドナートにかけられた。
どうも私の与り知らぬところで、他の相談員たちは結託して保養地の設置を求めたようであった。
「それにしても今回は腰の重い長老会議がものすごいスピードで動いたので驚きました……やはり精霊と契約している移住者の要望は無視できないのでしょうね」
ハーウェックがポツリとつぶやいた。
「だといいね! これからも要望があったらハーウェックに頼むよ。よろしく!」
それを聞き逃さなかったエリシアがハーウェックの背中を叩いた。
どうやら今回の保養地の要望は、彼女たちからハーウェックを通して長老会議に伝えられたようだ。
エリシアたちが所長のアイリスではなく、敢えて副所長のハーウェックを選んで要望を伝えた理由はおおよそ見当がつく。
ハーウェックは精霊の中では特殊な地位にあるそうだ。
アイリスと同じ初期の精霊だが、長老会議を構成する多くの原初の精霊にも顔が利くらしい。
というのも原初の精霊の中でも有力なポセイドンを育てたとされているからだ。
アイリスも長老会議や移住管理委員会とはよく話をしているし、こちらの要望もそれなりに通してくれている。
だが、彼女の場合は、どちらかというとこれらの組織に体よく使われているような印象がある。
「まさか五日で返事がもらえるとは思いませんでしたよ。そのおかげでアーベルには情報を伝える機会がなかったのですけどね。すみません」
ベネディクトが感心した様子を見せた後、私に向かって頭を下げた。
「たまたまこの前アーベルとフランシス以外の全員が揃ったからそのときにぱーっと話して、ベネディクトとドナートに整理してもらってハーウェックに要望を出したんだよね。その後フランシスには会ったけど、アーベルには会わなかったから話する機会が無かったのさ」
エリシアが要望を出した経緯を説明してくれた。
どうも一週間ほど前にたまたま多くのメンバーが「ケルークス」に集まったことがあり、それがきっかけになったようだ。
この一週間ほど、私はフランシス以外の魂霊の相談員と顔を合わせることがなかった。
フランシスがエリシアから要望のことを伝えられたのは昨日のことらしく、私に要望のことを伝える機会がなかったらしい。
「私やフランシスが反対したところで四人が賛同した意見なら問題ないだろう」
相談員全員の賛成が無ければ要望を出せないなんてことはないから、私も彼らの決定を責めるつもりにはなれない。
「そうそう、アーベルにとっても悪い話じゃないだろう」
フランシスの言う通り、これは私にとっても悪い話ではないからだ。
「詫びと言ってはアレだが……保養地についてアーベルの要望があれば聞いておきたい」
ドナートが礼儀正しく頭を下げてきた。
そこまでする必要はないと思うのだが、こちらから要望したいこともあるので遠慮なく伝えておこう。
パートナーたちと旅行する先のあてができるのは歓迎だ。
せいぜいドナートの手腕に期待するとしよう。
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