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第四章
復旧作業
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「それではアーベルさんたちは、ここに溜まった土砂をかき出してください。かき出した土砂はあちらの集積場に運んでくださいね。よろしくお願いします」
地区長のグレイシアさんが私たちに向かって指示を出してきた。
「わかりました。終わったら報告に行きます」
私はそう答えてもっこ片手に、土やら石やらが溜まった水たまりに向けて進んでいった。
四体のパートナーたちもそれに続いた。
先日、近くの小川に住んでいるルサルカのヒメナが「揺らいだ」ため、流れが大きく変わってしまった。
大きな岩で流れがせき止められたり、土砂が溜まったりしている。
近くに住んでいる精霊や魂霊が総出で邪魔な岩や土砂を片付けて流れを正常な状態に戻そうということになり、私もこうして手伝っている。
ヒメナ本人は「ケルークス」でアイリスに様子を診てもらっている。
復旧の場に立ち会わせられる状態ではないそうだし、今は「揺らぎ」の拡大を少しでも遅らせるのが最優先だ。
「私とリーゼで邪魔な土砂をどけてしまいます。ニーナはもっこに土砂を詰めてください。アーベルさんとメラニーで集積場まで運んでください」
カーリンの指示で、皆がそれぞれの持ち場へと散った。
水が関係する場所での作業は水の属性を持つ精霊が得意としているのだ。
カーリンなら私が指示を出すよりよっぽど上手にやってのけるだろう。
「アーベル様、メラニー、お願いします!」
ニーナがもっこに土砂を詰め終えた。
「任せて」「わかった」
メラニーと私が天秤棒のような長い棒でもっこを担ぐ。これで集積場まで土砂を運ぶのだ。
土木用の機械など存在しない精霊界では、こうした作業は魔術と手作業を併用して行われる。
私だけは魔術を使うことができないので、完全な力仕事になるのだが……
「アーベル、無理するなよ」「作業している連中はたくさんいるのだからな。メラニーもアーベルをよく見ておくのだな」
もっこで土砂を運んでいると、近くに住んでいるノームたちが声をかけてきた。
魂霊は精霊と比較すると力で劣るので、気を遣ってくれているのだ。
とは言っても肉体的に疲れたりすることはまずないので、自分ができる範囲でできることをしようと思う。
「ありがとうございます、皆さんも気をつけて」「いざとなったら魔術を使うから大丈夫だって」
「おう」「肝に銘じておこう」
私とメラニーの返事にノームたちが手を挙げて答えた。
「よっと」「まずはこれでいいわね」
集積地まで移動して、もっこの中の土砂を放って捨てた。
「魔術を使って作業をしている精霊はいないんだな」
私は周囲を見回して思わずそう呟いた。今回の作業範囲は比較的広いから、手作業だと時間がかかると思ったのだ。
「このあたりは魔力が多い精霊が少ないんだよね。私はこのあたりだと魔力が多い方だけど、精霊の中では至って普通のレベルだし……」
メラニーは明言しなかったが、このあたりの精霊では魔術で片づけをするための魔力が足りないということらしい。
「そうか、なるほど。おかげで私の出番もあるわけだ。何も手伝えないのももどかしいからね」
「私もアーベルと一緒に何かをするのは好きだしね」
メラニーがもっこと棒を私にパスし、自分は私の左腕に抱きついてきた。彼女の定位置だ。
「あまりもたもたしているとニーナを待たせてしまうから、そろそろ戻るか」
「オッケー」
メラニーは素直に私の言葉に従って、他の三体が作業している場所へと進みだした。
「メラニー、土砂の量が多いです。ペースを上げましょう。申し訳ございませんがアーベル様もお願いします」
土砂をかき出している現場に戻ると、ニーナが土砂の山と格闘していた。
カーリンとリーゼも近くで膝まで水に浸かりながら土砂をかき出している。
「これは急いで向こうに運ばないと、ニーナが土砂の山に埋もれてしまうな……」
ニーナの前に積まれた土砂の量に私は呆れるしかなかった。
これは急いで運ばねば……
「わかったわよ! アーベル、ちゃっちゃっとやっちゃおう!」
何故かメラニーは元気で、むしろテンションが上がっているように感じる。
この様子なら大丈夫そうだ。
空になったもっこを置いて、代わりに土砂が詰まったもっこを棒にかける。
そして今度はピッチを上げて集積地まで移動した。
魂霊の身体は疲れないし、怪我や病気もしないので、単純に動作限界までスピードを上げることができる。
私を含めた多くの魂霊にとって、スピードの面では人間だったときより少しマシなくらいが限界のようだ。力は二倍くらいになるのだけど。
このスピードだとメラニーの足を引っ張ってしまうことになるが、これでもメラニーだけで運ぶより多くの土砂を早く運ぶことができる。
「♪♪~」
その後何度か往復したが、メラニーはご機嫌なままだ。
もっこを空にした帰りは、普段の様に私の左腕に抱きついてくるからまだわかるのだが、土砂を担いでいる間も様子が変わらない。
「メラニー、何かいいことでもあったのか?」
ご機嫌な状態が長く続くので、思わず私は尋ねてしまった。
「うん、カーリンがアーベルと楽しんでいるときってこんな感じなのかなって気付いたからね」
「どういうことだ? 共同作業ならメラニーとだってしているじゃないか」
カーリンとはアンブロシア酒造りを二人でやっているが、私が共同作業をする相手は別にカーリンだけではない。
リーゼとは一緒に本を読んだりするし、ニーナとも家で必要な材料や道具の調達に行く。
メラニーとの共同作業は少ないが、アイリスの依頼で揺らいでいるドライアドが管理している木の様子を見に行くことがある。
「アーベルと木の様子を見るのはそれで楽しいけど、確認して報告したらおしまい、じゃない」
「……確かにそうだが……」
私はメラニーが何を言いたいのか理解できなかった。
「……カーリンとのお酒造りは材料を魔術で変換して、それをまた魔術で変換して、って段階があるじゃない。段階が進んでいくのが見えるのって面白いし、アーベルと一緒に進んでいくのを見ることができるのがいい」
……そういうことか。確かに段階を踏むタイプの共同作業となると、真っ先に思いつくのがカーリンとのアンブロシア酒造りだ。
メラニーも面白いものの見方をするのだな。
「段階が進んでいく、か……お酒造りもそうだが、リーゼとやっているゲームもそんな感じだぞ。興味あったらやってみるかい?」
メラニーはお酒造りの魔術はあまり得意としていない。
何か別に段階が進んでいくものがないかと考えていたら、ゲームがあることに気付いた。
「そうか。リーゼと遊んでいるアレだよね? 遊び方とかよくわからないけど、リーゼに頼んでみようかな……」
どうやらメラニーもゲームに興味を持ってくれたようだ。
リーゼの意思を確認する必要があるだろうが、メラニーが入ってきたところで嫌がるとも思えない。
むしろ仲間ができたと歓迎してくれるように思う。
「私からもリーゼに頼んでみるよ。リーゼなら教えてくれるだろうし、空いているときなら私も教えることはできると思う」
「やった!」
「おっと」
二人でもっこを担いでいたところにメラニーが飛び跳ねたものだから、思わずバランスを崩しそうになった。
まあ、そこまで喜んでもらえるならこちらもありがたい。
「……ゴメン。まずは今日の作業を終えないと、だよね。アーベル、ちゃっちゃっと片付けちゃおう!」
スイッチが入っていたメラニーだったが、もう一段上のギアがあったようだ。
更に加速して集積地まで進みだした。
私の方も……これならまだついていける。メラニーが早くゲームで遊べるよう、こちらも頑張ろう。
━━二時間後━━
「運んだわよ。他に運ぶものはある?」
メラニーが周囲を見回した。
ニーナの前にあった土砂の小山は平らになっており、その先にいたカーリンとリーゼは水の上に横になってぷかぷか浮いている。
「メラニー、アーベル様。わたくしたちの担当分は終わりました。上流の岩をもとの位置に戻したら地区長さんが確認に来ますので、それが終わったら家に戻りましょう」
ニーナがメラニーの質問に答えてくれた。
ちなみにカーリンとリーゼが仰向けになって浮いているのは休んでいるのではなく、小川に異常が無いか確認するためだ。
彼女たちが横になることで、ヒメナの「揺らぎ」の影響をより鋭敏に感じることができる。彼女たちが影響を感じないのなら恐らく問題ないはずだ。
待つこと二〇分ほど、地区長さんが上流から文字通り流れてきた。やはり仰向けになって浮いている。
地区長さんもカーリン、リーゼと同じニンフだから「揺らぎ」の影響がないことを確認するにはこの方がいいと考えているのだろうと思う。
「カーリン、リーゼ、そちらはどうですか? こちらは特に問題ありません」
「地区長さん、大丈夫です」
カーリンが仰向けで浮いたまま地区長さんの問いに答えた。
「ありがとう。これで終わりね。もう少ししたら水も綺麗になると思うから、今日はこれで終わりにして」
地区長さんが立ち上がって陸に上がった。
カーリンとリーゼもそれに倣う。
どうやらこれで今日のお仕事は終わりのようだ。
「……家に戻ったら最初に全員風呂だな。あと服の洗濯か」
家へ戻る途中、私はパートナーたちの姿を見てそう決めた。
皆、ずぶ濡れの泥だらけだったからだ。
精霊や魂霊は風邪をひいたりすることはないが、さすがにこの格好で家の中に入るのは憚られる。
「最初にお姉ちゃんと私の泉に飛びこんじゃえば綺麗になると思いますよ。お風呂とお洗濯はその後で」
「わかった。皆もそれでいいかな?」
リーゼが申し出てくれたので、私はその言葉に甘えることにした。
「当然です」
とカーリン。
「はーい」「リーゼ、お言葉に甘えます」
メラニー、ニーナも賛成してくれた。
「そうだ、洗濯が終わってからなのだが……」
私は先ほどのメラニーの言葉を思い出し、リーゼにゲームのことを相談した。
「そうですね……それでしたらお話のあるゲームがいいと思います。私が候補を見繕っておきますね」
リーゼはあまり喜怒哀楽を表情に出さないタイプだが、その声は弾んでいたと思う。
メラニーがゲームを楽しんでくれるかは気になるが、今から楽しみだ。
地区長のグレイシアさんが私たちに向かって指示を出してきた。
「わかりました。終わったら報告に行きます」
私はそう答えてもっこ片手に、土やら石やらが溜まった水たまりに向けて進んでいった。
四体のパートナーたちもそれに続いた。
先日、近くの小川に住んでいるルサルカのヒメナが「揺らいだ」ため、流れが大きく変わってしまった。
大きな岩で流れがせき止められたり、土砂が溜まったりしている。
近くに住んでいる精霊や魂霊が総出で邪魔な岩や土砂を片付けて流れを正常な状態に戻そうということになり、私もこうして手伝っている。
ヒメナ本人は「ケルークス」でアイリスに様子を診てもらっている。
復旧の場に立ち会わせられる状態ではないそうだし、今は「揺らぎ」の拡大を少しでも遅らせるのが最優先だ。
「私とリーゼで邪魔な土砂をどけてしまいます。ニーナはもっこに土砂を詰めてください。アーベルさんとメラニーで集積場まで運んでください」
カーリンの指示で、皆がそれぞれの持ち場へと散った。
水が関係する場所での作業は水の属性を持つ精霊が得意としているのだ。
カーリンなら私が指示を出すよりよっぽど上手にやってのけるだろう。
「アーベル様、メラニー、お願いします!」
ニーナがもっこに土砂を詰め終えた。
「任せて」「わかった」
メラニーと私が天秤棒のような長い棒でもっこを担ぐ。これで集積場まで土砂を運ぶのだ。
土木用の機械など存在しない精霊界では、こうした作業は魔術と手作業を併用して行われる。
私だけは魔術を使うことができないので、完全な力仕事になるのだが……
「アーベル、無理するなよ」「作業している連中はたくさんいるのだからな。メラニーもアーベルをよく見ておくのだな」
もっこで土砂を運んでいると、近くに住んでいるノームたちが声をかけてきた。
魂霊は精霊と比較すると力で劣るので、気を遣ってくれているのだ。
とは言っても肉体的に疲れたりすることはまずないので、自分ができる範囲でできることをしようと思う。
「ありがとうございます、皆さんも気をつけて」「いざとなったら魔術を使うから大丈夫だって」
「おう」「肝に銘じておこう」
私とメラニーの返事にノームたちが手を挙げて答えた。
「よっと」「まずはこれでいいわね」
集積地まで移動して、もっこの中の土砂を放って捨てた。
「魔術を使って作業をしている精霊はいないんだな」
私は周囲を見回して思わずそう呟いた。今回の作業範囲は比較的広いから、手作業だと時間がかかると思ったのだ。
「このあたりは魔力が多い精霊が少ないんだよね。私はこのあたりだと魔力が多い方だけど、精霊の中では至って普通のレベルだし……」
メラニーは明言しなかったが、このあたりの精霊では魔術で片づけをするための魔力が足りないということらしい。
「そうか、なるほど。おかげで私の出番もあるわけだ。何も手伝えないのももどかしいからね」
「私もアーベルと一緒に何かをするのは好きだしね」
メラニーがもっこと棒を私にパスし、自分は私の左腕に抱きついてきた。彼女の定位置だ。
「あまりもたもたしているとニーナを待たせてしまうから、そろそろ戻るか」
「オッケー」
メラニーは素直に私の言葉に従って、他の三体が作業している場所へと進みだした。
「メラニー、土砂の量が多いです。ペースを上げましょう。申し訳ございませんがアーベル様もお願いします」
土砂をかき出している現場に戻ると、ニーナが土砂の山と格闘していた。
カーリンとリーゼも近くで膝まで水に浸かりながら土砂をかき出している。
「これは急いで向こうに運ばないと、ニーナが土砂の山に埋もれてしまうな……」
ニーナの前に積まれた土砂の量に私は呆れるしかなかった。
これは急いで運ばねば……
「わかったわよ! アーベル、ちゃっちゃっとやっちゃおう!」
何故かメラニーは元気で、むしろテンションが上がっているように感じる。
この様子なら大丈夫そうだ。
空になったもっこを置いて、代わりに土砂が詰まったもっこを棒にかける。
そして今度はピッチを上げて集積地まで移動した。
魂霊の身体は疲れないし、怪我や病気もしないので、単純に動作限界までスピードを上げることができる。
私を含めた多くの魂霊にとって、スピードの面では人間だったときより少しマシなくらいが限界のようだ。力は二倍くらいになるのだけど。
このスピードだとメラニーの足を引っ張ってしまうことになるが、これでもメラニーだけで運ぶより多くの土砂を早く運ぶことができる。
「♪♪~」
その後何度か往復したが、メラニーはご機嫌なままだ。
もっこを空にした帰りは、普段の様に私の左腕に抱きついてくるからまだわかるのだが、土砂を担いでいる間も様子が変わらない。
「メラニー、何かいいことでもあったのか?」
ご機嫌な状態が長く続くので、思わず私は尋ねてしまった。
「うん、カーリンがアーベルと楽しんでいるときってこんな感じなのかなって気付いたからね」
「どういうことだ? 共同作業ならメラニーとだってしているじゃないか」
カーリンとはアンブロシア酒造りを二人でやっているが、私が共同作業をする相手は別にカーリンだけではない。
リーゼとは一緒に本を読んだりするし、ニーナとも家で必要な材料や道具の調達に行く。
メラニーとの共同作業は少ないが、アイリスの依頼で揺らいでいるドライアドが管理している木の様子を見に行くことがある。
「アーベルと木の様子を見るのはそれで楽しいけど、確認して報告したらおしまい、じゃない」
「……確かにそうだが……」
私はメラニーが何を言いたいのか理解できなかった。
「……カーリンとのお酒造りは材料を魔術で変換して、それをまた魔術で変換して、って段階があるじゃない。段階が進んでいくのが見えるのって面白いし、アーベルと一緒に進んでいくのを見ることができるのがいい」
……そういうことか。確かに段階を踏むタイプの共同作業となると、真っ先に思いつくのがカーリンとのアンブロシア酒造りだ。
メラニーも面白いものの見方をするのだな。
「段階が進んでいく、か……お酒造りもそうだが、リーゼとやっているゲームもそんな感じだぞ。興味あったらやってみるかい?」
メラニーはお酒造りの魔術はあまり得意としていない。
何か別に段階が進んでいくものがないかと考えていたら、ゲームがあることに気付いた。
「そうか。リーゼと遊んでいるアレだよね? 遊び方とかよくわからないけど、リーゼに頼んでみようかな……」
どうやらメラニーもゲームに興味を持ってくれたようだ。
リーゼの意思を確認する必要があるだろうが、メラニーが入ってきたところで嫌がるとも思えない。
むしろ仲間ができたと歓迎してくれるように思う。
「私からもリーゼに頼んでみるよ。リーゼなら教えてくれるだろうし、空いているときなら私も教えることはできると思う」
「やった!」
「おっと」
二人でもっこを担いでいたところにメラニーが飛び跳ねたものだから、思わずバランスを崩しそうになった。
まあ、そこまで喜んでもらえるならこちらもありがたい。
「……ゴメン。まずは今日の作業を終えないと、だよね。アーベル、ちゃっちゃっと片付けちゃおう!」
スイッチが入っていたメラニーだったが、もう一段上のギアがあったようだ。
更に加速して集積地まで進みだした。
私の方も……これならまだついていける。メラニーが早くゲームで遊べるよう、こちらも頑張ろう。
━━二時間後━━
「運んだわよ。他に運ぶものはある?」
メラニーが周囲を見回した。
ニーナの前にあった土砂の小山は平らになっており、その先にいたカーリンとリーゼは水の上に横になってぷかぷか浮いている。
「メラニー、アーベル様。わたくしたちの担当分は終わりました。上流の岩をもとの位置に戻したら地区長さんが確認に来ますので、それが終わったら家に戻りましょう」
ニーナがメラニーの質問に答えてくれた。
ちなみにカーリンとリーゼが仰向けになって浮いているのは休んでいるのではなく、小川に異常が無いか確認するためだ。
彼女たちが横になることで、ヒメナの「揺らぎ」の影響をより鋭敏に感じることができる。彼女たちが影響を感じないのなら恐らく問題ないはずだ。
待つこと二〇分ほど、地区長さんが上流から文字通り流れてきた。やはり仰向けになって浮いている。
地区長さんもカーリン、リーゼと同じニンフだから「揺らぎ」の影響がないことを確認するにはこの方がいいと考えているのだろうと思う。
「カーリン、リーゼ、そちらはどうですか? こちらは特に問題ありません」
「地区長さん、大丈夫です」
カーリンが仰向けで浮いたまま地区長さんの問いに答えた。
「ありがとう。これで終わりね。もう少ししたら水も綺麗になると思うから、今日はこれで終わりにして」
地区長さんが立ち上がって陸に上がった。
カーリンとリーゼもそれに倣う。
どうやらこれで今日のお仕事は終わりのようだ。
「……家に戻ったら最初に全員風呂だな。あと服の洗濯か」
家へ戻る途中、私はパートナーたちの姿を見てそう決めた。
皆、ずぶ濡れの泥だらけだったからだ。
精霊や魂霊は風邪をひいたりすることはないが、さすがにこの格好で家の中に入るのは憚られる。
「最初にお姉ちゃんと私の泉に飛びこんじゃえば綺麗になると思いますよ。お風呂とお洗濯はその後で」
「わかった。皆もそれでいいかな?」
リーゼが申し出てくれたので、私はその言葉に甘えることにした。
「当然です」
とカーリン。
「はーい」「リーゼ、お言葉に甘えます」
メラニー、ニーナも賛成してくれた。
「そうだ、洗濯が終わってからなのだが……」
私は先ほどのメラニーの言葉を思い出し、リーゼにゲームのことを相談した。
「そうですね……それでしたらお話のあるゲームがいいと思います。私が候補を見繕っておきますね」
リーゼはあまり喜怒哀楽を表情に出さないタイプだが、その声は弾んでいたと思う。
メラニーがゲームを楽しんでくれるかは気になるが、今から楽しみだ。
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