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第四章
精霊界への適性 前編
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「うーん、どうしたものかしら……」
「そう言われても僕は人間の性質について明るくないのですよ……」
「ケルークス」の奥の方の席で、所長のアイリスと副所長のハーウェックが額を突き合わせながら頭を抱えている。
二体とも私が出勤してからずっとこの調子だ。
今出勤している相談員は二体と私の他にフランシスだけ。そのフランシスもそろそろ帰ろうかと店内を見回している。
フランシスが帰らないのは、存在界に出張しているある精霊が戻ってこないからだ。
彼はその精霊からもたらされる情報を待っている。
私はすることがないので店内にある雑誌を読みながらお茶を飲んでいる。
今日は満席に近い状態なので、ユーリとピアが忙しく動き回っている。
私と話をしている時間も無いようだ。
雑誌を半分ほど読んだところで、店内に元気な声が響いた。
「戻ったよーっ! フランシスいる?」
存在界への出張組、お騒がせ精霊のバネッサの声だ。大きなリュックを背負っているので存在界から何かを仕入れてきたのだろう。
バッ! とフランシスが立ち上がった。当然彼が待っていたのも彼女だ。
「例の新作、発売日はいつになった?」
「六月ニ六日だって! 予約しておいたから!」
興奮気味のフランシスにバネッサが端末を取り出して画面を見せた。どうやらフランシスが求めている新作の予約票らしい。
「助かった、ありがとう! じゃ、お先に失礼~」
予約票を確認したフランシスはさっさと「ケルークス」を後にした。
これで店内に残る魂霊の相談員は私一人になった。
「ユーリは厨房かな?」
バネッサの問いに私が多分そうだと答えると、彼女はリュックを背負ったまま厨房へと姿を消した。
「アーベル、ちょっと意見を聞きたいから来てくれない?」
バネッサの背中を見送っている私にアイリスが声をかけてきた。
「意見を聞きたい」は「揺らぐぞ」の意味だから、半ば脅迫だ。困ったものだ。
私がお茶のグラス (今日は冷たいお茶なのだ)を手にアイリスとハーウェックのいるテーブルへと移動した。
「アーベルさん、委員会からこんなこと言われているのですけど、どう答えたらよいかお知恵を拝借できないでしょうか?」
ハーウェックがテーブルの上に置かれた紙を指し示した。
妙に低姿勢の彼であるが、五厘刈りでサングラス姿。紫のスーツに全身金銀の鎖のアクセサリといったいでたちだ。
相変わらず外見と姿勢のギャップが凄まじい。もう慣れたが。
私はハーウェックから差し出された紙を手に取った。
移住管理委員会、すなわち私の所属する「精霊界移住相談所」の上位組織から各相談所に向けての指示書のようだ。
「……移住の適性がある人間、移住を希望する人間へ確実に精霊界の情報を届けよ、ですか……」
委員会は精霊界に移住すべき人間へ精霊界の情報が正しく届いていないのではないか、と考えているようだ。
「よその相談所に所属している出張組が委員会にそんなことを言ったらしいのよ」
アイリスが露骨に嫌そうな顔をしている。
「それでですね、所長は『精霊界への移住に向いた人間像を明らかにして、その方に届けるべきメッセージを考えたらどうか?』と言ってくださったのですが……」
ハーウェックの言葉通りなら、やるべきことは明らかになっているような気がするのだが。何を困っているのだろうか?
その答えは次のアイリスの言葉で明らかになった。
「そう言ってみたはいいけど、私にも『精霊界への移住に向いた人間像』っていうのがよくわからないのよ。何となくアーベルは向いているな、というのは感じているのだけどね」
そういうことか……
精霊界への移住に向いた人間はどのような性質を持っているか、私も深く考えたことはなかったな……
「何となく、ですが平穏無事が好きな人、というのは適性の一つだと思いますけどね……」
「そうよね。でも、それだけだと何となく弱いと思っちゃうのよね……」
私の答えにアイリスは納得できていない様子だった。
無理もない、答えた私自身が納得できていないのだ。
「あと、負けず嫌いな人はアウトでしょうね。精霊は競争や勝負事を好みませんから」
「競争や勝負事が苦手な人、か。それもあるわね……」
相変わらずアイリスはすっきりしないといった顔をしている。
それもそのはずで私の答えが要領を得ないというか、整理できていないものだからだ。
私自身も理解はしているが、いきなり話を振られて整理された答えを出せと言われても無理がある。勿論アイリスもそれが無茶だということは理解しているはずだ。
(待てよ……答えは私だけではなく、移住者が持っているのではないか?)
ふと私の脳裏にそのような考えが浮かび上がった。
少し整理してからアイリスとハーウェックに向けて私はこう言った。
「移住者のほとんどは精霊界に順応して幸せに暮らしているはずです。私を含めた移住者に共通した性質を調べれば、どういう性質が合っているのかわかるのではないでしょうか?」
「言われてみればそうね……」
「アーベルさんの仰る通りだと思いますが、共通した性質があるかはちょっとわからないです。例えばアーベルさんとエリシアさんって、全然性質が違いますよね?」
アイリスは納得したようだが、ハーウェックは申し訳なさそうに首を傾げている。
「あら、アーベルとエリシアってそんなにタイプ違うかしら? 二人ともマメだし、相談客には親身に接しているわよ」
ハーウェックの言葉を聞きとがめたのか、アイリスが疑問の言葉を口にした。
「……確かに言われてみればそうですね。ですがアーベルさんは人当たりが柔らかくて、エリシアさんはズカズカ入ってくるイメージがありますけど……」
「エリシアも肝心なところは弁えているわよ」
アイリスやハーウェックは私とエリシアをそう見ているのか……
少なくとも私は人間時代に「マメ」と言われたことはない。「甲斐性が無い」と言われたことなら何度もあるが。
「……精霊も魂霊も相手が本気で嫌がることはできないですからね、ストッパーがかかっている可能性は否定できませんけど」
「ストッパーなんて滅多に発動しないわよ。それはわかっているでしょう、ハーウェック」
ハーウェックやアイリスがいう「ストッパー」とは、精霊や魂霊が他者を傷つける言動ができないことを意味しているのだろう。
「それはその通りなのですが……共通点、あるでしょうか……?」
ハーウェックが申し訳なさそうに私を見た。
彼は外見こそ怖い精霊なのだが基本的には腰が低い。私に対しても申し訳なく思っているのだと思う。
「私にもよくわかりませんが、何かしら共通点はあると思います。少なくとも存在界で嫌な奴はいましたけど、精霊界ではその手の精霊や魂霊には会っていませんから」
ちょっと毒の入った言葉になったが、これは私の心からの本音だ。
移住してよかったことの一つに「嫌な奴に会うことがない」というのがあるくらいだ。
「そう言ってくれると嬉しいわね。ごく一部の例外を除けば精霊に嫌な奴はいないと思うけど」
アイリスがそう言って嫌そうな顔をした。
彼女が「魂霊」という単語を出さなかったのは、恐らく彼女自身が魂霊に嫌な奴は皆無だと思っているからだろう。
そして「精霊の嫌な奴」は長老会議や移住管理委員会のことを言っているのだと思う。
「うーん、アーベルさんの仰る通りアーベルさんお一人に話を聞いても埒が明かない気がしてきました……」
「それならハーウェックが他の相談員に話を聞くの?」
ハーウェックが頭を抱えそうな様子を見せると、アイリスがすかさず突っ込んできた。
「……所長や僕が話を聞いたら、構えちゃうと思うのですよね。ここは同じもと人間の魂霊同士で話をするのが一番ではないかと……」
「あ、そうね。魂霊同士で話をするのがいいわね」
ハーウェックめ、逃げたな……
確かに彼の言うこともわからないでもない。
彼のことをよく知るうちの相談所の相談員や「ケルークス」の常連客なら、彼が腰の低い人物であることはよく知っているが、あのナリだからなぁ……
アイリスは相談所の所長であるし、このあたりにいる魂霊のほとんどはアイリスと移住相談の話をしている。
そのアイリスとの話となると移住相談みたいに魂霊側が構える可能性はあるよな……
「なので、ここは魂霊の相談員の方にお願いして近隣の移住者の方にインタビューするのがいいと思うのですよ、僕は」
「ちょっと待ってください! 相談員は調査の専門家ではないですよ」
ハーウェックがとんでもない提案をしてきたので、慌てて止めた。
魂霊の相談員は一部例外があるとはいえ、自分の経験を話すだけであり、インタビューの訓練などを受けているわけではない。
それだけではなく、この様子だとインタビューで得られた情報の分析までやらされそうな勢いだ。
「いいんじゃない。共通する性質が見つかればラッキー、くらいでいいのよ。移住に向いている人間を狙って情報を届けるのが目的だし、届ける相手が間違っていたなら別のターゲットを探せばいいのだから」
アイリスまでもがハーウェックに同調してきた。
「間違った人間に情報を届けて取り返しのつかないことにならないですかね?」
「移住しちゃったら手遅れだけど、その前に何度も相談に来るわけだから自分が精霊界に向いているかどうかくらいはわかるわよ」
アイリスにそう言われてしまうと帰す言葉がない。
敢えていえば間違った人間に情報を届けて移住を妨害されるケースが考えられるが、さすがに素人の我々でもそういう人間を狙い撃ちして精霊界の情報を届けようとは思わない。
そうなると私も折れるしかなかった。
「……責任は取れないですが、それでも良ければ……」
「アーベル一人にやらせるつもりはないわよ。他の相談員にもお願いするから」
どうやらインタビューには私だけではなく、他の相談員も駆り出させるようだ。何だか申し訳ない。
「そう言われても僕は人間の性質について明るくないのですよ……」
「ケルークス」の奥の方の席で、所長のアイリスと副所長のハーウェックが額を突き合わせながら頭を抱えている。
二体とも私が出勤してからずっとこの調子だ。
今出勤している相談員は二体と私の他にフランシスだけ。そのフランシスもそろそろ帰ろうかと店内を見回している。
フランシスが帰らないのは、存在界に出張しているある精霊が戻ってこないからだ。
彼はその精霊からもたらされる情報を待っている。
私はすることがないので店内にある雑誌を読みながらお茶を飲んでいる。
今日は満席に近い状態なので、ユーリとピアが忙しく動き回っている。
私と話をしている時間も無いようだ。
雑誌を半分ほど読んだところで、店内に元気な声が響いた。
「戻ったよーっ! フランシスいる?」
存在界への出張組、お騒がせ精霊のバネッサの声だ。大きなリュックを背負っているので存在界から何かを仕入れてきたのだろう。
バッ! とフランシスが立ち上がった。当然彼が待っていたのも彼女だ。
「例の新作、発売日はいつになった?」
「六月ニ六日だって! 予約しておいたから!」
興奮気味のフランシスにバネッサが端末を取り出して画面を見せた。どうやらフランシスが求めている新作の予約票らしい。
「助かった、ありがとう! じゃ、お先に失礼~」
予約票を確認したフランシスはさっさと「ケルークス」を後にした。
これで店内に残る魂霊の相談員は私一人になった。
「ユーリは厨房かな?」
バネッサの問いに私が多分そうだと答えると、彼女はリュックを背負ったまま厨房へと姿を消した。
「アーベル、ちょっと意見を聞きたいから来てくれない?」
バネッサの背中を見送っている私にアイリスが声をかけてきた。
「意見を聞きたい」は「揺らぐぞ」の意味だから、半ば脅迫だ。困ったものだ。
私がお茶のグラス (今日は冷たいお茶なのだ)を手にアイリスとハーウェックのいるテーブルへと移動した。
「アーベルさん、委員会からこんなこと言われているのですけど、どう答えたらよいかお知恵を拝借できないでしょうか?」
ハーウェックがテーブルの上に置かれた紙を指し示した。
妙に低姿勢の彼であるが、五厘刈りでサングラス姿。紫のスーツに全身金銀の鎖のアクセサリといったいでたちだ。
相変わらず外見と姿勢のギャップが凄まじい。もう慣れたが。
私はハーウェックから差し出された紙を手に取った。
移住管理委員会、すなわち私の所属する「精霊界移住相談所」の上位組織から各相談所に向けての指示書のようだ。
「……移住の適性がある人間、移住を希望する人間へ確実に精霊界の情報を届けよ、ですか……」
委員会は精霊界に移住すべき人間へ精霊界の情報が正しく届いていないのではないか、と考えているようだ。
「よその相談所に所属している出張組が委員会にそんなことを言ったらしいのよ」
アイリスが露骨に嫌そうな顔をしている。
「それでですね、所長は『精霊界への移住に向いた人間像を明らかにして、その方に届けるべきメッセージを考えたらどうか?』と言ってくださったのですが……」
ハーウェックの言葉通りなら、やるべきことは明らかになっているような気がするのだが。何を困っているのだろうか?
その答えは次のアイリスの言葉で明らかになった。
「そう言ってみたはいいけど、私にも『精霊界への移住に向いた人間像』っていうのがよくわからないのよ。何となくアーベルは向いているな、というのは感じているのだけどね」
そういうことか……
精霊界への移住に向いた人間はどのような性質を持っているか、私も深く考えたことはなかったな……
「何となく、ですが平穏無事が好きな人、というのは適性の一つだと思いますけどね……」
「そうよね。でも、それだけだと何となく弱いと思っちゃうのよね……」
私の答えにアイリスは納得できていない様子だった。
無理もない、答えた私自身が納得できていないのだ。
「あと、負けず嫌いな人はアウトでしょうね。精霊は競争や勝負事を好みませんから」
「競争や勝負事が苦手な人、か。それもあるわね……」
相変わらずアイリスはすっきりしないといった顔をしている。
それもそのはずで私の答えが要領を得ないというか、整理できていないものだからだ。
私自身も理解はしているが、いきなり話を振られて整理された答えを出せと言われても無理がある。勿論アイリスもそれが無茶だということは理解しているはずだ。
(待てよ……答えは私だけではなく、移住者が持っているのではないか?)
ふと私の脳裏にそのような考えが浮かび上がった。
少し整理してからアイリスとハーウェックに向けて私はこう言った。
「移住者のほとんどは精霊界に順応して幸せに暮らしているはずです。私を含めた移住者に共通した性質を調べれば、どういう性質が合っているのかわかるのではないでしょうか?」
「言われてみればそうね……」
「アーベルさんの仰る通りだと思いますが、共通した性質があるかはちょっとわからないです。例えばアーベルさんとエリシアさんって、全然性質が違いますよね?」
アイリスは納得したようだが、ハーウェックは申し訳なさそうに首を傾げている。
「あら、アーベルとエリシアってそんなにタイプ違うかしら? 二人ともマメだし、相談客には親身に接しているわよ」
ハーウェックの言葉を聞きとがめたのか、アイリスが疑問の言葉を口にした。
「……確かに言われてみればそうですね。ですがアーベルさんは人当たりが柔らかくて、エリシアさんはズカズカ入ってくるイメージがありますけど……」
「エリシアも肝心なところは弁えているわよ」
アイリスやハーウェックは私とエリシアをそう見ているのか……
少なくとも私は人間時代に「マメ」と言われたことはない。「甲斐性が無い」と言われたことなら何度もあるが。
「……精霊も魂霊も相手が本気で嫌がることはできないですからね、ストッパーがかかっている可能性は否定できませんけど」
「ストッパーなんて滅多に発動しないわよ。それはわかっているでしょう、ハーウェック」
ハーウェックやアイリスがいう「ストッパー」とは、精霊や魂霊が他者を傷つける言動ができないことを意味しているのだろう。
「それはその通りなのですが……共通点、あるでしょうか……?」
ハーウェックが申し訳なさそうに私を見た。
彼は外見こそ怖い精霊なのだが基本的には腰が低い。私に対しても申し訳なく思っているのだと思う。
「私にもよくわかりませんが、何かしら共通点はあると思います。少なくとも存在界で嫌な奴はいましたけど、精霊界ではその手の精霊や魂霊には会っていませんから」
ちょっと毒の入った言葉になったが、これは私の心からの本音だ。
移住してよかったことの一つに「嫌な奴に会うことがない」というのがあるくらいだ。
「そう言ってくれると嬉しいわね。ごく一部の例外を除けば精霊に嫌な奴はいないと思うけど」
アイリスがそう言って嫌そうな顔をした。
彼女が「魂霊」という単語を出さなかったのは、恐らく彼女自身が魂霊に嫌な奴は皆無だと思っているからだろう。
そして「精霊の嫌な奴」は長老会議や移住管理委員会のことを言っているのだと思う。
「うーん、アーベルさんの仰る通りアーベルさんお一人に話を聞いても埒が明かない気がしてきました……」
「それならハーウェックが他の相談員に話を聞くの?」
ハーウェックが頭を抱えそうな様子を見せると、アイリスがすかさず突っ込んできた。
「……所長や僕が話を聞いたら、構えちゃうと思うのですよね。ここは同じもと人間の魂霊同士で話をするのが一番ではないかと……」
「あ、そうね。魂霊同士で話をするのがいいわね」
ハーウェックめ、逃げたな……
確かに彼の言うこともわからないでもない。
彼のことをよく知るうちの相談所の相談員や「ケルークス」の常連客なら、彼が腰の低い人物であることはよく知っているが、あのナリだからなぁ……
アイリスは相談所の所長であるし、このあたりにいる魂霊のほとんどはアイリスと移住相談の話をしている。
そのアイリスとの話となると移住相談みたいに魂霊側が構える可能性はあるよな……
「なので、ここは魂霊の相談員の方にお願いして近隣の移住者の方にインタビューするのがいいと思うのですよ、僕は」
「ちょっと待ってください! 相談員は調査の専門家ではないですよ」
ハーウェックがとんでもない提案をしてきたので、慌てて止めた。
魂霊の相談員は一部例外があるとはいえ、自分の経験を話すだけであり、インタビューの訓練などを受けているわけではない。
それだけではなく、この様子だとインタビューで得られた情報の分析までやらされそうな勢いだ。
「いいんじゃない。共通する性質が見つかればラッキー、くらいでいいのよ。移住に向いている人間を狙って情報を届けるのが目的だし、届ける相手が間違っていたなら別のターゲットを探せばいいのだから」
アイリスまでもがハーウェックに同調してきた。
「間違った人間に情報を届けて取り返しのつかないことにならないですかね?」
「移住しちゃったら手遅れだけど、その前に何度も相談に来るわけだから自分が精霊界に向いているかどうかくらいはわかるわよ」
アイリスにそう言われてしまうと帰す言葉がない。
敢えていえば間違った人間に情報を届けて移住を妨害されるケースが考えられるが、さすがに素人の我々でもそういう人間を狙い撃ちして精霊界の情報を届けようとは思わない。
そうなると私も折れるしかなかった。
「……責任は取れないですが、それでも良ければ……」
「アーベル一人にやらせるつもりはないわよ。他の相談員にもお願いするから」
どうやらインタビューには私だけではなく、他の相談員も駆り出させるようだ。何だか申し訳ない。
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