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第九章
414:ロビーが連れてきた助っ人
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七月二〇日、ECN社ではサブマリン島東部の探索へ向かう者の人選を進めていた。
基本的には社内からの人材募集であったが、社内の従業員の推薦があれば社外の者の参加を認める、という形になっている。
これは優秀な人材を確保したいながらも、得られた成果については優先的に社で利用したいというECN社上層部の意図があったためだ。ECN社が営利企業である以上、形だけでも利益が見込まれると社内外の利害関係者に説明する必要がある。
「東部探索プロジェクト」というプロジェクト名が決定し、実際に探索に赴くメンバーは通称「東部探索隊」と呼ばれるようになっている。
プロジェクトマネージャーはエリックがその任に就くことになった。
現在のところ「東部探索隊」のメンバーは五人が確定している。
隊長のロビー・タカミ、セス・クルス、そして「とぉえんてぃ? ず」こと、アケミ・カネサキ、ユミ・オオイダ、サユリ・コナカの三人である。
女性が過半数になったことにはエリックなども頭を抱えたが、カネサキ、オオイダが強硬に参加を申し出たので、これを受け入れるしかなかった。
エリックにとって意外だったのは、セスやロビーと行動をともにしていたモリタの不参加である。
モリタは、「社内でやることがある」と言って参加を断っていた。
更に追い討ちをかけたのは、新しく広報企画室長に就いたレイカ・メルツがモリタの残留を強く求めたのである。
エリックに対してレイカは「OP社の動きを見る関係で彼の能力を必要としている」と説明した。
広報企画室長は上級チームマネージャーと同格であったが、入社したばかりのレイカに余計な負担をかけさせたくはなかったので、エリックはこの申し出を承知した。
現在「東部探索隊」は人員面でかなり苦しい状況にある。人数の絶対数が不足している上に、探索の経験者も少ない。というより、探索の経験などないド素人の集まりでしかない。
物資は着々と集まりつつあるし、探索ルートも固まりつつある。
結局、補給拠点は二箇所置くことになった。
最初の拠点が「はじまりの丘」である。ここはセスが責任者として管理を行う。
これより先に車椅子で到達できないのはセスも承知しており、自ら拠点への残留を申し出た。
第二の拠点の場所はまだ決まっていないが、「はじまりの丘」から更に進んだ場所を想定している。
着々と進む他の準備と比較して、人員の確保はエリックにとっても頭の痛い問題だ。
ロビーとセスが中心になって「東部探索隊」への参加を呼びかけているが、社内外の反応は鈍い。
呼びかけを行っている者達の中には、彼等だけでなくミヤハラ、サクライといった経営陣も含まれている。
とはいえ、危険が大きく社の本来の事業から大きく外れたこの計画に賛同する者はあっても、自ら危険を冒してまで参加しようという者が現れないのはある意味当然のことである。
(最悪、自分も「東部探索隊」に直接参加するか……)
エリックがそう考えているところに、ロビーが一人の男を連れて彼のもとへとやって来た。
均整の取れた身体をスーツに包んだ壮年の男の姿には、見覚えがある。
「なぜ、あなたが……?」
エリックは驚きを隠せないといった様子で男に椅子を勧めた。
男とは敵味方の立場で戦ったこともあり、手を組んで作業をしたこともあった。
「話はこちらのタカミさんから伺っています。単刀直入に申し上げると、『東部探索隊』に参加させていただきたい、ということです」
「ホンゴウさん……よろしいのですか?」
エリックはその男の立場をよく知っている。
彼は「タブーなきエンジニア集団」と和解したことの責任を取ってOP社を去ったばかりだ。
それがいきなり、「タブーなきエンジニア集団」の元幹部が牛耳るECN社のプロジェクトに参加するというのはどういうことか?
「性質は多少異なりますが、私はOP社で探索や行軍を仕事としてきました。このプロジェクトではお役に立てるでしょう」
確かに彼━━前OP社パトロール・チームリーダーのヒロ・ホンゴウ━━が言うとおり、彼の経験は「東部探索隊」に役立てることができると思われる。
OP社の治安改革部隊時代に装備を持った状態での行軍も経験していると聞いていたから、ドガン山脈越えでも大いに活躍することが期待される。
ただし、気になることも一つある。
ホンゴウが「東部探索隊」に参加した場合、その処遇をどうするかだ。
彼の経験ならばロビーを差しおいて隊長の任に就かせるべきではないか。
エリックがロビーをちらりと見やる。
「話はそちらのタカミさんから聞いています。私は彼のサポート役に徹するつもりです。現在の私は、表の立場に立つべきではありません」
ホンゴウの答えはまさにエリックの心中を察したものであった。
隣ではロビーが親指を立てている。どうやら二人の間で話は決まっていたらしい。
エリックは心強い参加者に胸を撫で下ろした。
もう一人くらい頼りになる人材が欲しいところだが、貴重な人材が得られたことには間違いない。
ホンゴウの協力が得られたことで、「東部探索隊」は経験のない素人ばかりの集団となることを免れた。これは隊にとって大きな意味を持つはずであった。
基本的には社内からの人材募集であったが、社内の従業員の推薦があれば社外の者の参加を認める、という形になっている。
これは優秀な人材を確保したいながらも、得られた成果については優先的に社で利用したいというECN社上層部の意図があったためだ。ECN社が営利企業である以上、形だけでも利益が見込まれると社内外の利害関係者に説明する必要がある。
「東部探索プロジェクト」というプロジェクト名が決定し、実際に探索に赴くメンバーは通称「東部探索隊」と呼ばれるようになっている。
プロジェクトマネージャーはエリックがその任に就くことになった。
現在のところ「東部探索隊」のメンバーは五人が確定している。
隊長のロビー・タカミ、セス・クルス、そして「とぉえんてぃ? ず」こと、アケミ・カネサキ、ユミ・オオイダ、サユリ・コナカの三人である。
女性が過半数になったことにはエリックなども頭を抱えたが、カネサキ、オオイダが強硬に参加を申し出たので、これを受け入れるしかなかった。
エリックにとって意外だったのは、セスやロビーと行動をともにしていたモリタの不参加である。
モリタは、「社内でやることがある」と言って参加を断っていた。
更に追い討ちをかけたのは、新しく広報企画室長に就いたレイカ・メルツがモリタの残留を強く求めたのである。
エリックに対してレイカは「OP社の動きを見る関係で彼の能力を必要としている」と説明した。
広報企画室長は上級チームマネージャーと同格であったが、入社したばかりのレイカに余計な負担をかけさせたくはなかったので、エリックはこの申し出を承知した。
現在「東部探索隊」は人員面でかなり苦しい状況にある。人数の絶対数が不足している上に、探索の経験者も少ない。というより、探索の経験などないド素人の集まりでしかない。
物資は着々と集まりつつあるし、探索ルートも固まりつつある。
結局、補給拠点は二箇所置くことになった。
最初の拠点が「はじまりの丘」である。ここはセスが責任者として管理を行う。
これより先に車椅子で到達できないのはセスも承知しており、自ら拠点への残留を申し出た。
第二の拠点の場所はまだ決まっていないが、「はじまりの丘」から更に進んだ場所を想定している。
着々と進む他の準備と比較して、人員の確保はエリックにとっても頭の痛い問題だ。
ロビーとセスが中心になって「東部探索隊」への参加を呼びかけているが、社内外の反応は鈍い。
呼びかけを行っている者達の中には、彼等だけでなくミヤハラ、サクライといった経営陣も含まれている。
とはいえ、危険が大きく社の本来の事業から大きく外れたこの計画に賛同する者はあっても、自ら危険を冒してまで参加しようという者が現れないのはある意味当然のことである。
(最悪、自分も「東部探索隊」に直接参加するか……)
エリックがそう考えているところに、ロビーが一人の男を連れて彼のもとへとやって来た。
均整の取れた身体をスーツに包んだ壮年の男の姿には、見覚えがある。
「なぜ、あなたが……?」
エリックは驚きを隠せないといった様子で男に椅子を勧めた。
男とは敵味方の立場で戦ったこともあり、手を組んで作業をしたこともあった。
「話はこちらのタカミさんから伺っています。単刀直入に申し上げると、『東部探索隊』に参加させていただきたい、ということです」
「ホンゴウさん……よろしいのですか?」
エリックはその男の立場をよく知っている。
彼は「タブーなきエンジニア集団」と和解したことの責任を取ってOP社を去ったばかりだ。
それがいきなり、「タブーなきエンジニア集団」の元幹部が牛耳るECN社のプロジェクトに参加するというのはどういうことか?
「性質は多少異なりますが、私はOP社で探索や行軍を仕事としてきました。このプロジェクトではお役に立てるでしょう」
確かに彼━━前OP社パトロール・チームリーダーのヒロ・ホンゴウ━━が言うとおり、彼の経験は「東部探索隊」に役立てることができると思われる。
OP社の治安改革部隊時代に装備を持った状態での行軍も経験していると聞いていたから、ドガン山脈越えでも大いに活躍することが期待される。
ただし、気になることも一つある。
ホンゴウが「東部探索隊」に参加した場合、その処遇をどうするかだ。
彼の経験ならばロビーを差しおいて隊長の任に就かせるべきではないか。
エリックがロビーをちらりと見やる。
「話はそちらのタカミさんから聞いています。私は彼のサポート役に徹するつもりです。現在の私は、表の立場に立つべきではありません」
ホンゴウの答えはまさにエリックの心中を察したものであった。
隣ではロビーが親指を立てている。どうやら二人の間で話は決まっていたらしい。
エリックは心強い参加者に胸を撫で下ろした。
もう一人くらい頼りになる人材が欲しいところだが、貴重な人材が得られたことには間違いない。
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