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第九章
384:譲歩と決着
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「おい……」
アカシが席を立ち、ウォーリーが止めようとする。
しかし、ウォーリーの手がアカシの肩に届く前に、ホンゴウが口を開いた。
アカシの疑念に落ちつきはらってこう答える。
「ならば、社長を見つけた時点で、その処断は貴方がたにお任せします。我々は、その処断について一切関知しません、というのでどうでしょうか?」
「何ですって! そんなこと……」
ホンゴウの言葉に、今まで一言も発しなかったオソダが悲鳴のような声を挙げた。
ホンゴウはオソダへ向かって毅然と言い返す。
「支店長、社長は常々『仕事は戦いだ』とおっしゃっていた。そして『戦いに敗れた者の末路は死である』とも語っておられる。その社長がもし、生きたまま彼等に捕らえられたとしたら、それは戦いに敗れたことと同じ、と考えられないだろうか?
そのような事態になれば、社長は死を選択するであろう。
しかし、社長が他の誰かに敗れると思うか? 一代、それもわずか一〇年余りで、エクザローム最大の企業を作り上げ、フジミ・タウンに巣食っていた悪党を殲滅した社長が敗れると思うか?!」
ホンゴウの口調は静かだが、有無を言わさぬだけの凄味があった。
「し、しかし、リーダー……それは……」
オソダはハンカチで汗を拭きながらか細い声で答えた。酸素が足りないような苦しそうな様子だ。
「もう一度言います、社長が敗れると思いますか?」
今度は語気をやや弱めて穏やかにホンゴウが問うた。
会議室内を冷たい空気が流れる。
沈黙が室内を支配し、エリックなどはそれに押しつぶされるような感覚を覚えている。
まるで一秒が数時間にも感じられるような重苦しいときが流れた後、震えながらオソダが立ち上がった。
オソダは会合の内容を私は関知しません、と言い残し、会議室を後にした。
この場にいることに耐えられない、そう訴えているようであった。
ホンゴウはウォーリーたちの方に向き直り、ご迷惑をおかけしてすみません、と頭を下げた。
思わずウォーリーとアカシが拍手する。
その直後、会議室を支配していた重苦しい空気がいずこかへと去っていった。
「ホンゴウさんとやら、感心したぜ。OP社にもまともな人間がいるということは理解できた。
いいだろう。申し出を受けてやろうじゃないか。エリック、アカシ、早速その『オーシャンリゾート』とやらに捜索の人員を回してくれ」
「承知」
「了解しました」
アカシとエリックがうなずいた。
「それから、ホンゴウさん。俺やエリック、アカシは別としても、この集会に参加した市民や『タブーなきエンジニア集団』のメンバー、そして組合員の安全の確保を約束してもらおう。何かあれば、和解の内容は破棄されたと解釈するからな。覚悟はしておいてくれ」
ウォーリーがホンゴウに向かって念を押した。
「わかりました」
そう答えた後、ホンゴウはテーブルにもたれるようにして大きく息をついた。
彼も極度の緊張を強いられていたのである。
ハドリが存命であれば、反逆に近い行為である。
しかし、ハドリが行方不明となった今、彼は自分の感情を偽ることができなくなったのだ。
この後、ウォーリーはホンゴウにヌマタについて情報を持っているか、と問うた。
しかし、ホンゴウはヌマタを知らなかったため、彼は調査後の回答を約束した。
「ホンゴウさん、頼む。ヌマタはそっちの部隊を見張っていたから、そっちの誰かが姿を見ていると思うぜ。頼むぞ」
交渉の最後にウォーリーがそう言って席を立った。
交渉を終えたウォーリーたちは会議室を飛び出して「オーシャンリゾート」へ向かおうとした。
「ちょっと待ってください。『オーシャンリゾート』へ向かわれるのなら私も行きます」
ホンゴウはウォーリーを呼び止め、自らも同行すると申し出て、彼等の後を追った。
アカシが席を立ち、ウォーリーが止めようとする。
しかし、ウォーリーの手がアカシの肩に届く前に、ホンゴウが口を開いた。
アカシの疑念に落ちつきはらってこう答える。
「ならば、社長を見つけた時点で、その処断は貴方がたにお任せします。我々は、その処断について一切関知しません、というのでどうでしょうか?」
「何ですって! そんなこと……」
ホンゴウの言葉に、今まで一言も発しなかったオソダが悲鳴のような声を挙げた。
ホンゴウはオソダへ向かって毅然と言い返す。
「支店長、社長は常々『仕事は戦いだ』とおっしゃっていた。そして『戦いに敗れた者の末路は死である』とも語っておられる。その社長がもし、生きたまま彼等に捕らえられたとしたら、それは戦いに敗れたことと同じ、と考えられないだろうか?
そのような事態になれば、社長は死を選択するであろう。
しかし、社長が他の誰かに敗れると思うか? 一代、それもわずか一〇年余りで、エクザローム最大の企業を作り上げ、フジミ・タウンに巣食っていた悪党を殲滅した社長が敗れると思うか?!」
ホンゴウの口調は静かだが、有無を言わさぬだけの凄味があった。
「し、しかし、リーダー……それは……」
オソダはハンカチで汗を拭きながらか細い声で答えた。酸素が足りないような苦しそうな様子だ。
「もう一度言います、社長が敗れると思いますか?」
今度は語気をやや弱めて穏やかにホンゴウが問うた。
会議室内を冷たい空気が流れる。
沈黙が室内を支配し、エリックなどはそれに押しつぶされるような感覚を覚えている。
まるで一秒が数時間にも感じられるような重苦しいときが流れた後、震えながらオソダが立ち上がった。
オソダは会合の内容を私は関知しません、と言い残し、会議室を後にした。
この場にいることに耐えられない、そう訴えているようであった。
ホンゴウはウォーリーたちの方に向き直り、ご迷惑をおかけしてすみません、と頭を下げた。
思わずウォーリーとアカシが拍手する。
その直後、会議室を支配していた重苦しい空気がいずこかへと去っていった。
「ホンゴウさんとやら、感心したぜ。OP社にもまともな人間がいるということは理解できた。
いいだろう。申し出を受けてやろうじゃないか。エリック、アカシ、早速その『オーシャンリゾート』とやらに捜索の人員を回してくれ」
「承知」
「了解しました」
アカシとエリックがうなずいた。
「それから、ホンゴウさん。俺やエリック、アカシは別としても、この集会に参加した市民や『タブーなきエンジニア集団』のメンバー、そして組合員の安全の確保を約束してもらおう。何かあれば、和解の内容は破棄されたと解釈するからな。覚悟はしておいてくれ」
ウォーリーがホンゴウに向かって念を押した。
「わかりました」
そう答えた後、ホンゴウはテーブルにもたれるようにして大きく息をついた。
彼も極度の緊張を強いられていたのである。
ハドリが存命であれば、反逆に近い行為である。
しかし、ハドリが行方不明となった今、彼は自分の感情を偽ることができなくなったのだ。
この後、ウォーリーはホンゴウにヌマタについて情報を持っているか、と問うた。
しかし、ホンゴウはヌマタを知らなかったため、彼は調査後の回答を約束した。
「ホンゴウさん、頼む。ヌマタはそっちの部隊を見張っていたから、そっちの誰かが姿を見ていると思うぜ。頼むぞ」
交渉の最後にウォーリーがそう言って席を立った。
交渉を終えたウォーリーたちは会議室を飛び出して「オーシャンリゾート」へ向かおうとした。
「ちょっと待ってください。『オーシャンリゾート』へ向かわれるのなら私も行きます」
ホンゴウはウォーリーを呼び止め、自らも同行すると申し出て、彼等の後を追った。
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