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第九章
383:停戦交渉
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翌五月六日、午後〇時一〇分にOP社と「タブーなきエンジニア集団」およびOP社グループ労働者組合の代表は「サウスセンター」の二階会議室に集まっていた。
OP社側の出席者はパトロール・チームのリーダーであるホンゴウ、インデスト支店長代理のオソダの二名である。
一方、「タブーなきエンジニア集団」からはウォーリーとエリック、組合の代表としてアカシが出席している。
最初にホンゴウが発言を求める。
「皆さん、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、我々OP社の社長であるハドリが三日の夜から行方不明となっております。
このため、私、ホンゴウがOP社の代表としてこの席に着くということをご理解いただければと思います」
ウォーリーはこれに対し、わかった、とだけ答え、ホンゴウに話を続けさせた。
次にホンゴウは三日の夜に起きた「オーシャンリゾート」での爆発事故について、調べた内容を包み隠さず、会合の参加者に伝えた。
行方不明者はハドリとオイゲンの二名であること。
行方不明者の遺留品は見つかっていないこと。
負傷者はすべてOP社および「オーシャンリゾート」の女性従業員であること。
爆発はイベントホール棟の地下に保管されていた爆発物が何らかの原因で爆発したことにより発生したと思われること。
付近の砂浜に何かを引きずったような跡があること。
等々である。
それを聞いたウォーリーは、腕を組んだままだ。
「……で、どうしようというのだ?」
「トワさん、アカシさん、OP社の代表として、私は和解を求めにきたのです。現在、あなた方と対峙している部隊を本社に戻すとともに、あなた方の活動を承認します」
「組合の活動が承認される、ということでよいのか?」
ウォーリーに先んじてアカシが質問を投げかけた。
「すみません。それは私の権限では確約できませんが、ヤマガタには強く申し入れておきます」
ホンゴウの答えにアカシは憮然とした表情で考え込んだ。
その隙にウォーリーが口を挟む。
「組合活動の承認もそうだが、提示された条件では不十分だな」
「……何が足りませんか?」
「貴社が保持していると勝手に吹聴している司法警察権の返上と、治安改革業務の指揮権の返上、もしくは市民への委譲が含まれていない」
ウォーリーが鋭く言い放ったので、思わずエリックが頭を抱えた。もう少し言いようがあるだろうに、と訴えたのだ。
ホンゴウが少し考えるそぶりを見せてから答え始める。ホンゴウにとっては一応想定していた反論であった。
「……社長のハドリがこのまま復帰することが無ければ、治安改革業務を行うパトロール・チームとセキュリティ・センターの二部所を解散させるつもりです。司法警察権の返上は、私がマスコミに向けて宣言する、ということでいかがでしょうか?」
ホンゴウはOP社の代表としてこのような宣言をすることで、ヤマガタが後に引けないようにするつもりだった。
そして、自らがこの宣言の責を負ってOP社を辞す、というシナリオを描いていたのである。
エリックが発言を求めて挙手する。
「もし、ハドリ社長が生きたまま隠れていたならば、ホンゴウさんの言葉はすべて空証文になる、ということですね?」
普段のエリックからは考えにくい鋭い口調である。
先ほどウォーリーに言い方を考えろと無言で訴えた者の言動とは思えない。
エリックは彼なりに、自分の役割を肝に銘じている。
危ない条件提示をすべてチェックし、裏を取ること、である。
ウォーリーはあいまいな部分についての判断が甘い傾向があるので、それを潰そうとしているのだ。
ホンゴウが再び考えるそぶりを見せた。さすがに今までのことがあるから一筋縄では行かないなと感じているようだ。
少しして、ホンゴウが提案する。
「ならば、貴方がたにも捜索作業に協力いただくというのはいかがでしょうか? 社長のハドリが健在だと思われるのなら、徹底して探していただいて結構です。その邪魔をするつもりはありません」
ホンゴウの提案にウォーリーはアカシとエリックに小さな声で尋ねた。
「おい、話に乗って同時に調べ上げるか? 俺はそうした方が早いと思うが」
しかし、アカシとエリックは首を横に振った。
アカシが発言する。
「それで……社長が健在だとわかった場合、そっちは約束を守らない、というのでは話にならない。この話はなかったことにしてもらいたい」
そして、アカシは席を立とうとした。
エリックもそれを止めようとはしなかった。
「おい……」
ウォーリーが慌てて立ち上がった。
OP社側の出席者はパトロール・チームのリーダーであるホンゴウ、インデスト支店長代理のオソダの二名である。
一方、「タブーなきエンジニア集団」からはウォーリーとエリック、組合の代表としてアカシが出席している。
最初にホンゴウが発言を求める。
「皆さん、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、我々OP社の社長であるハドリが三日の夜から行方不明となっております。
このため、私、ホンゴウがOP社の代表としてこの席に着くということをご理解いただければと思います」
ウォーリーはこれに対し、わかった、とだけ答え、ホンゴウに話を続けさせた。
次にホンゴウは三日の夜に起きた「オーシャンリゾート」での爆発事故について、調べた内容を包み隠さず、会合の参加者に伝えた。
行方不明者はハドリとオイゲンの二名であること。
行方不明者の遺留品は見つかっていないこと。
負傷者はすべてOP社および「オーシャンリゾート」の女性従業員であること。
爆発はイベントホール棟の地下に保管されていた爆発物が何らかの原因で爆発したことにより発生したと思われること。
付近の砂浜に何かを引きずったような跡があること。
等々である。
それを聞いたウォーリーは、腕を組んだままだ。
「……で、どうしようというのだ?」
「トワさん、アカシさん、OP社の代表として、私は和解を求めにきたのです。現在、あなた方と対峙している部隊を本社に戻すとともに、あなた方の活動を承認します」
「組合の活動が承認される、ということでよいのか?」
ウォーリーに先んじてアカシが質問を投げかけた。
「すみません。それは私の権限では確約できませんが、ヤマガタには強く申し入れておきます」
ホンゴウの答えにアカシは憮然とした表情で考え込んだ。
その隙にウォーリーが口を挟む。
「組合活動の承認もそうだが、提示された条件では不十分だな」
「……何が足りませんか?」
「貴社が保持していると勝手に吹聴している司法警察権の返上と、治安改革業務の指揮権の返上、もしくは市民への委譲が含まれていない」
ウォーリーが鋭く言い放ったので、思わずエリックが頭を抱えた。もう少し言いようがあるだろうに、と訴えたのだ。
ホンゴウが少し考えるそぶりを見せてから答え始める。ホンゴウにとっては一応想定していた反論であった。
「……社長のハドリがこのまま復帰することが無ければ、治安改革業務を行うパトロール・チームとセキュリティ・センターの二部所を解散させるつもりです。司法警察権の返上は、私がマスコミに向けて宣言する、ということでいかがでしょうか?」
ホンゴウはOP社の代表としてこのような宣言をすることで、ヤマガタが後に引けないようにするつもりだった。
そして、自らがこの宣言の責を負ってOP社を辞す、というシナリオを描いていたのである。
エリックが発言を求めて挙手する。
「もし、ハドリ社長が生きたまま隠れていたならば、ホンゴウさんの言葉はすべて空証文になる、ということですね?」
普段のエリックからは考えにくい鋭い口調である。
先ほどウォーリーに言い方を考えろと無言で訴えた者の言動とは思えない。
エリックは彼なりに、自分の役割を肝に銘じている。
危ない条件提示をすべてチェックし、裏を取ること、である。
ウォーリーはあいまいな部分についての判断が甘い傾向があるので、それを潰そうとしているのだ。
ホンゴウが再び考えるそぶりを見せた。さすがに今までのことがあるから一筋縄では行かないなと感じているようだ。
少しして、ホンゴウが提案する。
「ならば、貴方がたにも捜索作業に協力いただくというのはいかがでしょうか? 社長のハドリが健在だと思われるのなら、徹底して探していただいて結構です。その邪魔をするつもりはありません」
ホンゴウの提案にウォーリーはアカシとエリックに小さな声で尋ねた。
「おい、話に乗って同時に調べ上げるか? 俺はそうした方が早いと思うが」
しかし、アカシとエリックは首を横に振った。
アカシが発言する。
「それで……社長が健在だとわかった場合、そっちは約束を守らない、というのでは話にならない。この話はなかったことにしてもらいたい」
そして、アカシは席を立とうとした。
エリックもそれを止めようとはしなかった。
「おい……」
ウォーリーが慌てて立ち上がった。
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