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第九章
380:面倒ごとの押し付け
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ウォーリーが「サウスセンター」に戻ったのと同じ頃、遠く離れたジンでは昨日インデスト郊外で発生した爆発事件について最初の報道がなされていた。事件発生から約一日遅れでの報道である。
メディットから一旦引き上げ、「タブーなきエンジニア集団」の事務所に戻っていたミヤハラたちは事務所のモニタでこの事件を知った。
報道では、ハドリ、オイゲンの二名が現在も行方不明であることが伝えられていた。
ヌマタが行方不明になったことは伝えられていないが、これはウォーリーやアカシがこのことをマスコミに公表していなかったためだ。
「チッ、一体どういうことだ? イナの行方が知れないというのが気になるが……」
ミヤハラはモニタの前で腕を組んだまま舌打ちした。
「さぁ……行方不明というだけですからね。ハドリ氏が死んでいてくれれば、我々としてはそれで助かりますがね」
サクライも事態を十分飲み込めていない様子で、よその世界の出来事を論じているような口調である。
「おいサクライ、どうするよ?」
ミヤハラがサクライを小突いた。
「どうするって、何を、ですか、TM?」
「ハドリ氏はともかく、だ。イナが行方不明だ、ってことを関係者に伝えるのか?」
「関係者、って誰に、ですか?」
サクライが怪訝な顔をしている。いったい誰に伝える必要があるのか、と言わんばかりだ。
「ほら、ECN社の本社とか、秘書さんとかいるだろう……」
「まだいいんじゃないですかね? 行方不明というだけですし、報道なら彼等も見ることができるでしょうよ。聞かれたら知っている限りのことを答えればいいんじゃないですか?」
「……そうだな。マネージャーも連絡が取れてないし、面倒ごとが多いな、まったく」
ミヤハラがサクライの意見に乗った。単に報告するのが面倒なので安易な方に流れたというのが正しい。
「インデストからの連絡も途絶えたままですしね……
連絡がないってのは、無事な証拠か、それとも連絡が取れない状況下にあるか……その中間はないでしょうよ。あんまり長いこと連絡がなければ、こっちから通信を飛ばしてみればいいんじゃないですか?」
「ああ……」
ミヤハラの言葉は歯切れが悪い。
ジンでの集会は引き続き行われており、人の集まりも良好だ。
それはそれで満足の行く結果なのだが、そうなると他人の状況が気になるらしい。
何かに夢中になると、他のことが疎かになるウォーリーだからこそ、しっかり者のエリックを同行させた。だが、そのエリックからも、ここ数日間連絡がないというのはどうしたことだろうか?
ミヤハラとしては、
(まったく、イナの奴! こんなに面倒な上司を付けて、お前は行方不明、ってか。どういう神経しているんだ?)
と胸の奥で愚痴の一つや二つ言いたくなる気分なのである。
五月一日のOP社本社前での乱闘事件で多数の犠牲を出しているものの、ジンでの「タブーなきエンジニア集団」の活動は概ね良好な状態である。
巨大医療施設「メディット」をはじめとした、ジンの市民や企業などからの支持を取り付け、OP社の治安改革活動に真正面から反対する姿勢を築きあげることに成功している。
しかし、肝心のトップであるウォーリーの状況が見えてこないというのは、組織としても問題がある。
今のところ「タブーなきエンジニア集団」を支持するジンの市民や企業などに動揺はないが、あまりに長期間ウォーリーが姿を見せなければその限りではないだろう。
また、「タブーなきエンジニア集団」による一連の活動の目的は、あくまでOP社の治安改革活動を止めさせることにある。
そのためにはOP社が司法警察権を返上し、治安改革活動を停止したということを確認し、再び悪事に手を染めさせないようにする必要がある。
こうした監視するにはウォーリーが最適任だとミヤハラも認めているのである。
(まあ、俺は監視などという面倒な仕事は好みでないからな。大局的な視野で物を見るのはともかく、チェックのような細かい仕事は性に合わない)
というのが、その理由なのだが。
「まあ、あと一日待って何もなければ、こちらから連絡するか」
ミヤハラの言葉にサクライは何も答えなかった。
逃げやがったな、とミヤハラは思ったが、サクライを咎めることはなかった。
ウォーリーと連絡を取るときにサクライを巻き込めばよいからだ。
メディットから一旦引き上げ、「タブーなきエンジニア集団」の事務所に戻っていたミヤハラたちは事務所のモニタでこの事件を知った。
報道では、ハドリ、オイゲンの二名が現在も行方不明であることが伝えられていた。
ヌマタが行方不明になったことは伝えられていないが、これはウォーリーやアカシがこのことをマスコミに公表していなかったためだ。
「チッ、一体どういうことだ? イナの行方が知れないというのが気になるが……」
ミヤハラはモニタの前で腕を組んだまま舌打ちした。
「さぁ……行方不明というだけですからね。ハドリ氏が死んでいてくれれば、我々としてはそれで助かりますがね」
サクライも事態を十分飲み込めていない様子で、よその世界の出来事を論じているような口調である。
「おいサクライ、どうするよ?」
ミヤハラがサクライを小突いた。
「どうするって、何を、ですか、TM?」
「ハドリ氏はともかく、だ。イナが行方不明だ、ってことを関係者に伝えるのか?」
「関係者、って誰に、ですか?」
サクライが怪訝な顔をしている。いったい誰に伝える必要があるのか、と言わんばかりだ。
「ほら、ECN社の本社とか、秘書さんとかいるだろう……」
「まだいいんじゃないですかね? 行方不明というだけですし、報道なら彼等も見ることができるでしょうよ。聞かれたら知っている限りのことを答えればいいんじゃないですか?」
「……そうだな。マネージャーも連絡が取れてないし、面倒ごとが多いな、まったく」
ミヤハラがサクライの意見に乗った。単に報告するのが面倒なので安易な方に流れたというのが正しい。
「インデストからの連絡も途絶えたままですしね……
連絡がないってのは、無事な証拠か、それとも連絡が取れない状況下にあるか……その中間はないでしょうよ。あんまり長いこと連絡がなければ、こっちから通信を飛ばしてみればいいんじゃないですか?」
「ああ……」
ミヤハラの言葉は歯切れが悪い。
ジンでの集会は引き続き行われており、人の集まりも良好だ。
それはそれで満足の行く結果なのだが、そうなると他人の状況が気になるらしい。
何かに夢中になると、他のことが疎かになるウォーリーだからこそ、しっかり者のエリックを同行させた。だが、そのエリックからも、ここ数日間連絡がないというのはどうしたことだろうか?
ミヤハラとしては、
(まったく、イナの奴! こんなに面倒な上司を付けて、お前は行方不明、ってか。どういう神経しているんだ?)
と胸の奥で愚痴の一つや二つ言いたくなる気分なのである。
五月一日のOP社本社前での乱闘事件で多数の犠牲を出しているものの、ジンでの「タブーなきエンジニア集団」の活動は概ね良好な状態である。
巨大医療施設「メディット」をはじめとした、ジンの市民や企業などからの支持を取り付け、OP社の治安改革活動に真正面から反対する姿勢を築きあげることに成功している。
しかし、肝心のトップであるウォーリーの状況が見えてこないというのは、組織としても問題がある。
今のところ「タブーなきエンジニア集団」を支持するジンの市民や企業などに動揺はないが、あまりに長期間ウォーリーが姿を見せなければその限りではないだろう。
また、「タブーなきエンジニア集団」による一連の活動の目的は、あくまでOP社の治安改革活動を止めさせることにある。
そのためにはOP社が司法警察権を返上し、治安改革活動を停止したということを確認し、再び悪事に手を染めさせないようにする必要がある。
こうした監視するにはウォーリーが最適任だとミヤハラも認めているのである。
(まあ、俺は監視などという面倒な仕事は好みでないからな。大局的な視野で物を見るのはともかく、チェックのような細かい仕事は性に合わない)
というのが、その理由なのだが。
「まあ、あと一日待って何もなければ、こちらから連絡するか」
ミヤハラの言葉にサクライは何も答えなかった。
逃げやがったな、とミヤハラは思ったが、サクライを咎めることはなかった。
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