ストランディング・ワールド(Stranding World) ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて兄を探す~

空乃参三

文字の大きさ
上 下
375 / 436
第八章

366:足手まとい?

しおりを挟む
「しゃーねーな。今そっちはどうなっているんだ?」
 仕方なくウォーリーは、タザワと名乗る捕虜にOP社の現在の状況について説明を求めた。
 その結果、「サウスセンター」前で戦闘が行われ、一部の味方がOP社の包囲網を突破したらしいことが判明した。
 「サウスセンター」を包囲していたOP社側は混乱を見せたが、すぐに陣容を整えたため、包囲網を突破できた味方は多くて一〇〇人程度だろう、ということだった。
 タザワが「サウスセンター」の部隊から離れたのは定期的な配置換えのためだということも判明した。

「それだけかよ……まあ、仕方ねえか。じゃ、行くか」
 ウォーリーは明らかに落胆した様子を見せたが、すぐに立ち上がった。
 そして、タザワの戒めを解き、同行するように命じた。
 周りが慌ててそれを制止するが、ウォーリーは気にしない。
 しかし、彼の意気込みとは裏腹に、打開策は見えてこない。
 どこを見てもOP社治安改革部隊の制服を着た者だらけだ。
 街を行き来している者の過半数がOP社の関係者のように見える。
 必ずしも秩序だって配置されている、という状況ではないようだが、数が多い。
 面が割れているウォーリーが迂闊に姿を現せば、ものの数秒で見つかりそうだ。
 OP社側の陣容はそれほどに重厚で、隙がないのだ。

「だったら、どこに仕掛けても同じ、ということだ」
 ウォーリーはあえて陣容がもっとも厚い場所を選んで撹乱することを選択した。
「厳しいところで鍛えてこそ、大きい成果が得られるものだからな」
 そう言って渋るメンバーを無理やり納得させる。
 ウォーリーとて、ここは撹乱にとどめるべきだということを理解している。
 人数が二桁違う相手に策もなしに正面からぶつかるような愚かな真似はしない。
 その通りウォーリーは強行突破をすると見せかけて、すぐに逃亡を試みた。
 釣られてOP社の者が数十名ほど、彼等を追う。
 面が割れているから、OP社の者がウォーリーの姿に気付くまで三秒もかからない。

 ウォーリーは逃亡しながら余裕を持って相手の動きや陣容の変化を確認している。
 さすがに陣容が厚く、敵の隊列が乱れるというところまではいかないようだ。
 釣られて動くのは全体から見ればごくわずかの人数でしかないからだ。
 それでもウォーリーの名を連呼し、追ってくる者が大勢いる。

「どうもハドリのところは、俺に興味があるみたいだな。男に好かれるなど、吐き気がするがな!」
 ウォーリーは真剣に嫌そうな表情を見せた。
 追手の数は多いが、ウォーリーたちは路地や建物を巧みに使って、彼等を分散させていく。
 追手はインデストの地理には明るくないようで、方向を変えるたびにその人数が減っていっている。
 また、「どこへ行った?」「ナントカという建物を知らないか?」といったような声も飛んでいる。これなら、追手をまくのにそれほど苦労することもない。

「とんでもねえことしやがる奴もいたが、まあこんなものか」
 ウォーリー達は一時間ほどで追手から完全に逃れ、空き家の地下室へ避難した。
 途中、追っ手から投げつけられた石がウォーリーの背中に命中した。
 そのときばかりは後ろを振り返って猛然と突進し、相手を殴り倒したのはご愛嬌である。
「おい、タザワ。俺はお前に同行しろ、とは言ったが、無理をしてまでついて来いとは言っていないぞ」
 ウォーリーが息を切らせてその場にへたり込んだタザワにそう声をかけた。
「ここで捕まったら自分も同罪です。それは困る」
「じゃ、適当に隠れていろ」
 ウォーリーは空き家の一室にタザワを放り込んだ。
 メンバーを数えるとタザワを含めて一三名。今日のところは、脱落者はいない。
 当分の間はこのメンバーで対応できるだろうが、エリックやアカシの状況がつかめないのが痛い。
 傍受防止のため、通信手段を持たずに出たのが完全に裏目に出ている。
 ウォーリーはエリックやアカシを助けるため、時間をおいて再び外へ出ることを決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...