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第八章
357:早朝の開戦
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五月二日深夜、インデストにある「サウスセンター」では、ウォーリーがサクライから通信で定時報告を受けていた。
この日の昼間、ポータル・シティの東部からその東の広範囲にかけて発生した停電事故の報告である。
OP社からの電力供給がストップしたことで、一時はサクライなどが拠点としているジンも大混乱に陥った。
停電そのものは二時間程度で回復し、市民生活に大きな影響は出ていない。
しかし、電力供給が不安定気味であり、その後も断続的に短時間の停電が続いているとのことである。
OP社の電力供給機能に何らかの異常が発生したのは明らかであった。
意図的に電力供給を停止するのであれば、短時間の停電を断続的に繰り返す、ということは考えにくい。
「タブーなきエンジニア集団」を攻撃するのであれば、彼等の勢力の強いジンを狙って電力供給を停止すればよいことである。しかし、停電はジンに留まっていない。
ウォーリーは予想以上に早くOP社の事業に綻びが出たことに小躍りした。
身体の方が落ち着かないが、これを利用しない手はない。
ウォーリーはアカシを呼び、マスコミを集めるよう指示した。
「マスコミを集めてどうするのですか?」
「簡単だ。お前もニュースを見ただろう?
あの停電は、ハドリの会社が治安改革とやらにかまけていて、本業の電力供給に人や資源を投下することを怠ったために発生したものだ。
それをマスコミに向けて喧伝して、奴等の活動を非難するのさ! 正義は俺たちにある」
「なるほど。それは我々が正義、ということですね」
アカシはウォーリーの説明に納得したのか、朝一番に会見を開く手配を始めた。
(まあ、ハドリの奴は黙っちゃいないだろうな。あいつはやられたらやり返す奴だ。
市民を攻撃してみろ、俺たちが容赦なく反撃してやるからな)
ウォーリーは翌三日の午前六時に戦闘チームに集合するよう指示を出した後、自室へと引き上げた。
午前六時までそれほど時間は残されていない。
軽く仮眠を取ってシャワーを浴びると、五時半を少し回ったところだった。
急いで戦闘用の服装に着替え、建物の裏口へと走る。
六時少し前に裏口に到着すると、既に戦闘チームの二〇〇名ほどが集まっていた。
偵察に出した「タブーなきエンジニア集団」のメンバーからの報告によれば、午前中の早い時間にハドリ率いるOP社の部隊の先頭がインデスト市街に達する見込みだとのことであった。
先行部隊の到着に備えて、ウォーリーは先んじて戦闘チームをインデストの市街に分けて配置することにした。戦力差が大きすぎてゲリラ戦でも展開しない限り対抗し得ないからだ。
ここに集まっていない者は、「サウスセンター」の守りとして、エリックとアカシに指揮を任せることにしている。
「よし、外へ出てハドリの奴を迎え撃つぞ!」
ウォーリーがそう声をあげた瞬間、外から銃声が響いてきた。
「何事だ?」
言い終わるか否かのタイミングで、ウォーリーが正面玄関へと向かって走る。
戦闘チームもウォーリーに続く。
正面玄関ではアカシとエリックが逃げ惑う人々を必死で誘導していた。
「何事だ!」
「どうもこうもないですよ! いきなり攻撃されたんじゃ話になりませんっ!」
ウォーリーの問いに答えるアカシの声は、怒りに満ちていた。
既にアカシは自らが率いる労働者組合の組合員に命じて相手を迎撃させている。
「マネージャー! 怪我人が……」
アカシの隣にはエリックの姿があった。
顔面蒼白でその場に立ち尽くしている、という印象であるが何とか言葉を発することはできるようだ。
「一般の連中は、建物の中に匿ってやるんだ! 敵の侵入を許すな!」
ウォーリーは声を張り上げたが、先手を打たれたことは否めない。
本業の電力事業に打撃を受けたと知ってOP社の出足が鈍るかと思ったのだが、実際はそうではなかったようだ。
「トワさん、こいつはインデストにいる部隊だけじゃないようですぜ」
アカシの声が響いた。
ウォーリーが振り返ると、アカシはOP社治安改革センターの制服を着た男の首根っこを捕まえていた。
「急げ! 打って出るぞ!」
ウォーリーは後ろに控えていた戦闘チームを率いて、再び裏口へと走った。
そして、裏口を出て路地を駆け抜ける。
その先では「タブーなきエンジニア集団」やOP社グループ労働者組合の支持活動をするために集まった市民たちが、OP社の治安改革部隊に蹂躙されていた。早朝であるにもかかわらず多くの市民が集まっていたのだが、今となってはそれが仇になりかねない状況であった。
散発的ではあるが、銃声まで鳴り響いていたからだ。
「一気に行くぞ!」
ウォーリーは先頭に立って騒乱の中へ飛び込んでいった。
市民とOP社の治安改革部隊が入り乱れているが、それすら意に介していない。
「一般の奴は逃げろ! ここは『タブーなきエンジニア集団』が相手をする! ハドリの犬どももよく聞いておけっ!」
そう叫びながらウォーリーは手にした金属棒で敵をなぎ倒していく。
この日の昼間、ポータル・シティの東部からその東の広範囲にかけて発生した停電事故の報告である。
OP社からの電力供給がストップしたことで、一時はサクライなどが拠点としているジンも大混乱に陥った。
停電そのものは二時間程度で回復し、市民生活に大きな影響は出ていない。
しかし、電力供給が不安定気味であり、その後も断続的に短時間の停電が続いているとのことである。
OP社の電力供給機能に何らかの異常が発生したのは明らかであった。
意図的に電力供給を停止するのであれば、短時間の停電を断続的に繰り返す、ということは考えにくい。
「タブーなきエンジニア集団」を攻撃するのであれば、彼等の勢力の強いジンを狙って電力供給を停止すればよいことである。しかし、停電はジンに留まっていない。
ウォーリーは予想以上に早くOP社の事業に綻びが出たことに小躍りした。
身体の方が落ち着かないが、これを利用しない手はない。
ウォーリーはアカシを呼び、マスコミを集めるよう指示した。
「マスコミを集めてどうするのですか?」
「簡単だ。お前もニュースを見ただろう?
あの停電は、ハドリの会社が治安改革とやらにかまけていて、本業の電力供給に人や資源を投下することを怠ったために発生したものだ。
それをマスコミに向けて喧伝して、奴等の活動を非難するのさ! 正義は俺たちにある」
「なるほど。それは我々が正義、ということですね」
アカシはウォーリーの説明に納得したのか、朝一番に会見を開く手配を始めた。
(まあ、ハドリの奴は黙っちゃいないだろうな。あいつはやられたらやり返す奴だ。
市民を攻撃してみろ、俺たちが容赦なく反撃してやるからな)
ウォーリーは翌三日の午前六時に戦闘チームに集合するよう指示を出した後、自室へと引き上げた。
午前六時までそれほど時間は残されていない。
軽く仮眠を取ってシャワーを浴びると、五時半を少し回ったところだった。
急いで戦闘用の服装に着替え、建物の裏口へと走る。
六時少し前に裏口に到着すると、既に戦闘チームの二〇〇名ほどが集まっていた。
偵察に出した「タブーなきエンジニア集団」のメンバーからの報告によれば、午前中の早い時間にハドリ率いるOP社の部隊の先頭がインデスト市街に達する見込みだとのことであった。
先行部隊の到着に備えて、ウォーリーは先んじて戦闘チームをインデストの市街に分けて配置することにした。戦力差が大きすぎてゲリラ戦でも展開しない限り対抗し得ないからだ。
ここに集まっていない者は、「サウスセンター」の守りとして、エリックとアカシに指揮を任せることにしている。
「よし、外へ出てハドリの奴を迎え撃つぞ!」
ウォーリーがそう声をあげた瞬間、外から銃声が響いてきた。
「何事だ?」
言い終わるか否かのタイミングで、ウォーリーが正面玄関へと向かって走る。
戦闘チームもウォーリーに続く。
正面玄関ではアカシとエリックが逃げ惑う人々を必死で誘導していた。
「何事だ!」
「どうもこうもないですよ! いきなり攻撃されたんじゃ話になりませんっ!」
ウォーリーの問いに答えるアカシの声は、怒りに満ちていた。
既にアカシは自らが率いる労働者組合の組合員に命じて相手を迎撃させている。
「マネージャー! 怪我人が……」
アカシの隣にはエリックの姿があった。
顔面蒼白でその場に立ち尽くしている、という印象であるが何とか言葉を発することはできるようだ。
「一般の連中は、建物の中に匿ってやるんだ! 敵の侵入を許すな!」
ウォーリーは声を張り上げたが、先手を打たれたことは否めない。
本業の電力事業に打撃を受けたと知ってOP社の出足が鈍るかと思ったのだが、実際はそうではなかったようだ。
「トワさん、こいつはインデストにいる部隊だけじゃないようですぜ」
アカシの声が響いた。
ウォーリーが振り返ると、アカシはOP社治安改革センターの制服を着た男の首根っこを捕まえていた。
「急げ! 打って出るぞ!」
ウォーリーは後ろに控えていた戦闘チームを率いて、再び裏口へと走った。
そして、裏口を出て路地を駆け抜ける。
その先では「タブーなきエンジニア集団」やOP社グループ労働者組合の支持活動をするために集まった市民たちが、OP社の治安改革部隊に蹂躙されていた。早朝であるにもかかわらず多くの市民が集まっていたのだが、今となってはそれが仇になりかねない状況であった。
散発的ではあるが、銃声まで鳴り響いていたからだ。
「一気に行くぞ!」
ウォーリーは先頭に立って騒乱の中へ飛び込んでいった。
市民とOP社の治安改革部隊が入り乱れているが、それすら意に介していない。
「一般の奴は逃げろ! ここは『タブーなきエンジニア集団』が相手をする! ハドリの犬どももよく聞いておけっ!」
そう叫びながらウォーリーは手にした金属棒で敵をなぎ倒していく。
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