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第八章
351:この屈辱忘れまじ
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「きりがない! いい加減飽きた!」
サクライが大声をはり上げながら、ミヤハラの方へとやってきた。
ミヤハラの周りにいた仲間は大きくその数を減らしていた。皮肉にもその状況がサクライの移動を容易にしていたのだ。
サクライの服は返り血や埃で汚れている。
しかし、その顔はきれいで、ほとんど一方的に相手を痛めつけてきたに違いないようだった。
「ああ、そろそろ、だな……」
ミヤハラが周囲を見回して撤退を決意する。
もう少し時間を稼いでおきたかったが、これ以上はデメリットのほうが大きい。
ミヤハラの周囲も仲間より敵のOP社治安改革部隊や彼らを支持する市民の数の方が多いように見える。これ以上の犠牲は意味がないだろう。
「これ以上やると市民の犠牲が大きすぎますね。うちのメンバーはともかく、これ以上、一般の人に犠牲を強いるのは無茶だと思います!」
サクライの言葉にミヤハラも賛成だ。
問題はどうやって撤退するか、である。
ミヤハラは事前にそれほど念入りに方策を立ててきたわけではない。
時間もなかったのだが、活動に対してどれだけの支持が得られるか、どれだけの人数が集まるかも予測できなかった。その状況で綿密な作戦を立てても意味がないと考えていたのだ。
戦える者が結集して活路を開く、という程度のことは考えてあるが、今戦える者がどれだけいるだろうか。
ミヤハラはやや困惑した様子を見せながらも、辺りを見回してどうにか戦えそうな一〇名ほどの仲間を集めた。
そして集めた仲間にはサクライから指示を出させる。
「これ以上は無理するな! 戦える者が道を開けるから、俺たちに続け!」
ミヤハラの代わりにサクライが叫んだ。
そして、サクライを先頭に戦える一〇名ほどが敢えて敵味方入り乱れて争っているところ目掛けて突き包んでいく。
この期に及んで味方を救いつつ活路を開こうと試みたのだ。
これはサクライの独断であった。
ミヤハラは面倒なことを、と思ったが、サクライが臍を曲げても困るので、敢えて苦言を呈することをしなかった。
OP社側は活路を切り開くなら陣容の薄いところを突かれる、と考えていた。
そして、陣容の薄い西側の建物の中に数百名を隠しておいたのだが、これが裏目に出た。
予想もしていなかった方向からの攻撃に、OP社の部隊は算を乱し、しばしの間混乱に陥ったのだ。
彼等は犯罪捜査や小規模の乱闘には慣れているものの、このような大規模な争いに対する脆弱さを露呈することとなった。
「今だ、一気に行くぞ!」
サクライの指揮のもと、「タブーなきエンジニア集団」とその支持者からなるデモ隊の残党は、切り開かれた道を一気に駆け抜けた。
OP社側は隠した部隊の分戦力が減少し、思うように相手を追えない。
デモ隊の残党は四五分ほどかけて三キロばかりを一気に進み、ようやく息をつくことができた。
OP社側にも負傷者が多数あったことと、拘束した者が多く、追撃に十分な人員が割けないという事情があったのもミヤハラ達にとっては幸運であった。
落ち着いたところで、ミヤハラが残った人数を数えさせた。
ミヤハラやサクライについて来ることができたのは六〇〇名に満たなかった。
最大で三千名近くに達したはずのデモ隊は、いまやその人数を五分の一までに減らしていた。
「サクライ! この様子は映像に残しているか?」
「ああ、残していますよ! 無様な姿ですけどね!」
サクライは投げやりに答えたが、ミヤハラはそれでいい、という。
「事務所に戻ったら、映像のデータをよこせ。この屈辱を忘れぬために、帰ったら映像を何度でも観てやるからな」
「はぁ、そうですか……」
サクライは半ば呆れた様子だったが、それでもジンの事務所に戻った後、ミヤハラに映像のデータを渡した。
そして、ミヤハラは映像を早送りで再生した後、そのまま椅子に寄りかかって眠りについたのだった。
彼の目の前にある画面は、エンドレスで映像を流し続けていた……
サクライにその表情は見て取れなかったが、何か得体の知れない空気のようなものがミヤハラを覆っているのを感じたのだった。
サクライが大声をはり上げながら、ミヤハラの方へとやってきた。
ミヤハラの周りにいた仲間は大きくその数を減らしていた。皮肉にもその状況がサクライの移動を容易にしていたのだ。
サクライの服は返り血や埃で汚れている。
しかし、その顔はきれいで、ほとんど一方的に相手を痛めつけてきたに違いないようだった。
「ああ、そろそろ、だな……」
ミヤハラが周囲を見回して撤退を決意する。
もう少し時間を稼いでおきたかったが、これ以上はデメリットのほうが大きい。
ミヤハラの周囲も仲間より敵のOP社治安改革部隊や彼らを支持する市民の数の方が多いように見える。これ以上の犠牲は意味がないだろう。
「これ以上やると市民の犠牲が大きすぎますね。うちのメンバーはともかく、これ以上、一般の人に犠牲を強いるのは無茶だと思います!」
サクライの言葉にミヤハラも賛成だ。
問題はどうやって撤退するか、である。
ミヤハラは事前にそれほど念入りに方策を立ててきたわけではない。
時間もなかったのだが、活動に対してどれだけの支持が得られるか、どれだけの人数が集まるかも予測できなかった。その状況で綿密な作戦を立てても意味がないと考えていたのだ。
戦える者が結集して活路を開く、という程度のことは考えてあるが、今戦える者がどれだけいるだろうか。
ミヤハラはやや困惑した様子を見せながらも、辺りを見回してどうにか戦えそうな一〇名ほどの仲間を集めた。
そして集めた仲間にはサクライから指示を出させる。
「これ以上は無理するな! 戦える者が道を開けるから、俺たちに続け!」
ミヤハラの代わりにサクライが叫んだ。
そして、サクライを先頭に戦える一〇名ほどが敢えて敵味方入り乱れて争っているところ目掛けて突き包んでいく。
この期に及んで味方を救いつつ活路を開こうと試みたのだ。
これはサクライの独断であった。
ミヤハラは面倒なことを、と思ったが、サクライが臍を曲げても困るので、敢えて苦言を呈することをしなかった。
OP社側は活路を切り開くなら陣容の薄いところを突かれる、と考えていた。
そして、陣容の薄い西側の建物の中に数百名を隠しておいたのだが、これが裏目に出た。
予想もしていなかった方向からの攻撃に、OP社の部隊は算を乱し、しばしの間混乱に陥ったのだ。
彼等は犯罪捜査や小規模の乱闘には慣れているものの、このような大規模な争いに対する脆弱さを露呈することとなった。
「今だ、一気に行くぞ!」
サクライの指揮のもと、「タブーなきエンジニア集団」とその支持者からなるデモ隊の残党は、切り開かれた道を一気に駆け抜けた。
OP社側は隠した部隊の分戦力が減少し、思うように相手を追えない。
デモ隊の残党は四五分ほどかけて三キロばかりを一気に進み、ようやく息をつくことができた。
OP社側にも負傷者が多数あったことと、拘束した者が多く、追撃に十分な人員が割けないという事情があったのもミヤハラ達にとっては幸運であった。
落ち着いたところで、ミヤハラが残った人数を数えさせた。
ミヤハラやサクライについて来ることができたのは六〇〇名に満たなかった。
最大で三千名近くに達したはずのデモ隊は、いまやその人数を五分の一までに減らしていた。
「サクライ! この様子は映像に残しているか?」
「ああ、残していますよ! 無様な姿ですけどね!」
サクライは投げやりに答えたが、ミヤハラはそれでいい、という。
「事務所に戻ったら、映像のデータをよこせ。この屈辱を忘れぬために、帰ったら映像を何度でも観てやるからな」
「はぁ、そうですか……」
サクライは半ば呆れた様子だったが、それでもジンの事務所に戻った後、ミヤハラに映像のデータを渡した。
そして、ミヤハラは映像を早送りで再生した後、そのまま椅子に寄りかかって眠りについたのだった。
彼の目の前にある画面は、エンドレスで映像を流し続けていた……
サクライにその表情は見て取れなかったが、何か得体の知れない空気のようなものがミヤハラを覆っているのを感じたのだった。
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