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第八章
346:無血開城?
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「?!」「何だ?!」
けたたましいベルの音に、支店長室内の皆の視線が音の方に集まった。
「連絡が入ったようだ。静かにしてくれ」
オソダがウォーリーに胸倉をつかまれたままの姿勢で周囲を制した。
「……いいだろう」
ウォーリーは油断なくオソダの胸倉をつかんだまま答えた。
「何をしている! 早く人を出せ! 採掘場に集めろ! 何度言わせればわかるんだ?!」
スピーカーから耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた。
「ハドリか?」
ウォーリーがアカシに小声で尋ねた。彼はハドリの声を知らないのだ。
ハドリは滅多なことで人前に姿を現さないし、社外に向けた発表も彼以外の社員が読み上げる。そのためハドリの姿や声はほとんど知られていない。
「……違いますね。知らない声ですが、本社のお偉いさんじゃないですかね?」
アカシが首を傾げた。彼の知らない声のようだ。
「何だ。下っ端か」
ウォーリーが露骨に残念そうな顔をしてみせた。
「支店にはもう人手がない! これで全員だ」
オソダは不機嫌そうな口調でスピーカーの声に答えた。
よく見るとネクタイピンがマイクになっており、そこから声が伝わるようだ。
「嘘を言うな! 一五〇〇人ほど人数が足りないではないか! セキュリティ・センター長のほうが支店長代理より職位が高いということを忘れたか?!」
「いないものはいない。今から事務所に来て中を見てみればよかろう。できるものならな」
スピーカーの声とオソダとのやり取りを聞いて、エリックがウォーリーに耳打ちする。
「どうも、本当の権限はセキュリティ・センターにあるようですね……」
「ああ……ならば建物を借りておくか。アカシ、奴からマイクを取ってくれ」
「了解っす」
アカシは難なくマイクを奪って、ウォーリーの目の前に差し出した。
ウォーリーがマイクに向かって怒鳴る
「ハドリの回し者だな?! お前が責任者か? 早急に労働者組合との交渉に応じろ! 話はそれからだ!」
しかし、返答はなく、ブツッと通信が切れる音が聞こえた。
「ちっ! 話にならんな。エリック、何人か呼んで建物の中を調べさせろ」
ウォーリーが舌打ちしながらエリックに命じた。
「わかりました」
エリックが携帯端末を取り出して外にいるメンバーを呼びに一旦部屋の外に出た。
「アカシ、支店長代理を見張っておけ!」
「トワさん、拘束する必要はないですかね?」
「見張っておけばいいだろう。不穏な動きさえとらなければ問題ない」
「ちょっと信用できない人間なのですが……まあいいでしょう」
アカシも携帯端末を使って五人ほどの組合員を呼び出した。彼らにオソダの見張りをさせようというのだ。
三〇分ほどで支店長室には十数名が集まった。「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合のメンバーがほぼ半々である。
「マネージャー、建物の中を調べましたが、OP社の関係者は数名がいるだけでした!」
「タブーなきエンジニア集団」のメンバーの一人がウォーリーに報告した。
オソダは「ほらみろ」という表情を見せている。
「ならば、建物を使ってしまって問題ないだろう。エリック、外へ行って建物の中に入りたい奴は中に入れ、と伝えてくれ。長期戦になる可能性もあるからな」
「わかりました」
エリックが走って下へ降りていった。
「サウスセンター」を犠牲なしに占拠できたのは意外だったが、ウォーリーもアカシも良いほうへと考えていた。
人がいない、と言っていたオソダの言葉は事実であった。
そして、その足りないとされた一五〇〇名というのは、この二週間ほどで労働者組合に加入した人数と一致している。労働者組合の者は建物の外にいるから、採掘場に集まるわけがない。
要するに労働者組合の人数が増えたから、その分採掘場へ行く人数が減ったということだ。ウォーリーやアカシの予想よりも多くの支持が得られているということに他ならない。
「これで、ハドリの奴を引っ張り出す、ってことだ!」
ウォーリーがアカシに目配せした。
「そうですね。建物を占拠してしまえばこっちのものです。ここは本社の次に大きな事業所ですからね……」
アカシがそう言い終えないうちに、建物の下の方が騒がしくなってきた。
ウォーリーが窓のほうに走り寄って外を見ると、通りの先のほうで人々がもみ合っているような様子が見えた。
(来やがったか!)
「アカシ! 見張りは誰かに任せて行くぞ!」
そう叫んでウォーリーが部屋を飛び出した。
直後に携帯端末が鳴る。エリックからだ。
「マネージャー! OP社の部隊が来ました! インデストの治安改革センターのようです!」
「戦闘チームを向かわせろ!」
「もう、向かわせていますっ! 今一緒に移動しているところです!」
「わかった、俺も行く!」
ウォーリーはアカシに戦える人員を集めるように指示すると、自身は走って現場へと向かった。
(インデストの連中が先に仕掛けてきたか! やられたらやり返すしかねーな!)
ウォーリーは自身の体内で血が沸き踊るのを感じていた。強大な敵に立ち向かうのは決して嫌いではない。
けたたましいベルの音に、支店長室内の皆の視線が音の方に集まった。
「連絡が入ったようだ。静かにしてくれ」
オソダがウォーリーに胸倉をつかまれたままの姿勢で周囲を制した。
「……いいだろう」
ウォーリーは油断なくオソダの胸倉をつかんだまま答えた。
「何をしている! 早く人を出せ! 採掘場に集めろ! 何度言わせればわかるんだ?!」
スピーカーから耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた。
「ハドリか?」
ウォーリーがアカシに小声で尋ねた。彼はハドリの声を知らないのだ。
ハドリは滅多なことで人前に姿を現さないし、社外に向けた発表も彼以外の社員が読み上げる。そのためハドリの姿や声はほとんど知られていない。
「……違いますね。知らない声ですが、本社のお偉いさんじゃないですかね?」
アカシが首を傾げた。彼の知らない声のようだ。
「何だ。下っ端か」
ウォーリーが露骨に残念そうな顔をしてみせた。
「支店にはもう人手がない! これで全員だ」
オソダは不機嫌そうな口調でスピーカーの声に答えた。
よく見るとネクタイピンがマイクになっており、そこから声が伝わるようだ。
「嘘を言うな! 一五〇〇人ほど人数が足りないではないか! セキュリティ・センター長のほうが支店長代理より職位が高いということを忘れたか?!」
「いないものはいない。今から事務所に来て中を見てみればよかろう。できるものならな」
スピーカーの声とオソダとのやり取りを聞いて、エリックがウォーリーに耳打ちする。
「どうも、本当の権限はセキュリティ・センターにあるようですね……」
「ああ……ならば建物を借りておくか。アカシ、奴からマイクを取ってくれ」
「了解っす」
アカシは難なくマイクを奪って、ウォーリーの目の前に差し出した。
ウォーリーがマイクに向かって怒鳴る
「ハドリの回し者だな?! お前が責任者か? 早急に労働者組合との交渉に応じろ! 話はそれからだ!」
しかし、返答はなく、ブツッと通信が切れる音が聞こえた。
「ちっ! 話にならんな。エリック、何人か呼んで建物の中を調べさせろ」
ウォーリーが舌打ちしながらエリックに命じた。
「わかりました」
エリックが携帯端末を取り出して外にいるメンバーを呼びに一旦部屋の外に出た。
「アカシ、支店長代理を見張っておけ!」
「トワさん、拘束する必要はないですかね?」
「見張っておけばいいだろう。不穏な動きさえとらなければ問題ない」
「ちょっと信用できない人間なのですが……まあいいでしょう」
アカシも携帯端末を使って五人ほどの組合員を呼び出した。彼らにオソダの見張りをさせようというのだ。
三〇分ほどで支店長室には十数名が集まった。「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合のメンバーがほぼ半々である。
「マネージャー、建物の中を調べましたが、OP社の関係者は数名がいるだけでした!」
「タブーなきエンジニア集団」のメンバーの一人がウォーリーに報告した。
オソダは「ほらみろ」という表情を見せている。
「ならば、建物を使ってしまって問題ないだろう。エリック、外へ行って建物の中に入りたい奴は中に入れ、と伝えてくれ。長期戦になる可能性もあるからな」
「わかりました」
エリックが走って下へ降りていった。
「サウスセンター」を犠牲なしに占拠できたのは意外だったが、ウォーリーもアカシも良いほうへと考えていた。
人がいない、と言っていたオソダの言葉は事実であった。
そして、その足りないとされた一五〇〇名というのは、この二週間ほどで労働者組合に加入した人数と一致している。労働者組合の者は建物の外にいるから、採掘場に集まるわけがない。
要するに労働者組合の人数が増えたから、その分採掘場へ行く人数が減ったということだ。ウォーリーやアカシの予想よりも多くの支持が得られているということに他ならない。
「これで、ハドリの奴を引っ張り出す、ってことだ!」
ウォーリーがアカシに目配せした。
「そうですね。建物を占拠してしまえばこっちのものです。ここは本社の次に大きな事業所ですからね……」
アカシがそう言い終えないうちに、建物の下の方が騒がしくなってきた。
ウォーリーが窓のほうに走り寄って外を見ると、通りの先のほうで人々がもみ合っているような様子が見えた。
(来やがったか!)
「アカシ! 見張りは誰かに任せて行くぞ!」
そう叫んでウォーリーが部屋を飛び出した。
直後に携帯端末が鳴る。エリックからだ。
「マネージャー! OP社の部隊が来ました! インデストの治安改革センターのようです!」
「戦闘チームを向かわせろ!」
「もう、向かわせていますっ! 今一緒に移動しているところです!」
「わかった、俺も行く!」
ウォーリーはアカシに戦える人員を集めるように指示すると、自身は走って現場へと向かった。
(インデストの連中が先に仕掛けてきたか! やられたらやり返すしかねーな!)
ウォーリーは自身の体内で血が沸き踊るのを感じていた。強大な敵に立ち向かうのは決して嫌いではない。
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