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第八章
345:OP社インデスト支店に突入せよ!
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「責任者かこの建物にいるOP社の最上位者を出してくれないか?」
「サウスセンター」の建物に入ったウォーリーは、受付の女性にまるで知り合いに話しかけるかのような気軽な口調で言った。
「『タブーなきエンジニア集団』の関係者と接触することはできませんっ!」
受付の女性が強い調子で拒絶した。
「そこは何とかならないかなぁ? 労働者組合が責任者と話をしたい、ってことだぜ。OP社はどうだか知らないが、少なくともグループのECN社じゃ『組合の申し出があった場合、社長および役員は会合に応じる』と内規で決まっているんだぜ。グループの親玉に適用されないってのはどういうことだ?」
ウォーリーの論理も無茶だが、確かにECN社に関してはその通りだった。
「……ECN社はECN社です。私どもには私どもの規程があります。お引取りください!」
受付の女性の回答はにべもなかった。
ウォーリーは最後まで受付の答えを聞かずにアカシの方を向いた。
「何階だ?」
「最上階……一一階です」
「わかった、行くぜ」
ウォーリーはアカシとエリックに合図をすると、受付の静止を完全に無視して建物の奥へと入っていった。
これより奥に入るためには開錠に生態認証が必要なドアを開ける必要がある。
しかし、この認証システムについては事前にウォーリーとエリックの手によって弱点が調べあげられており、認証を回避して開錠する方法も既に判明していた。この手の技術力においては『タブーなきエンジニア集団』がOP社を遥かに凌駕している。
ウォーリーが難なくドアを抜けると、五人は最上階へと向かって進んでいった。
先頭を進むウォーリーとアカシはこれから昼食のために外出するような雰囲気で談笑しながら歩いている。
「それにしても、五人でよかったのですか?」
エリックがウォーリーに小声で耳打ちした。
「心配するな。いざとなったら走って逃げればいい。それに俺が手に持っている端末のボタンを押せばそれが突入の合図になる」
「僕は、腕っぷしにはまるで自信が無いんですよ……」
エリックの声は不安げだ。
「モトムラさん、ここは話し合いの場ですからね。相手は社長ではないのだし、そんなに無理な手段にも出てこないでしょう」
アカシがからからと笑った。多少エリックの小心さをからかう様子でもある。
「そういうことだ。それにここは従業員の勤務している建物の中だ。武器を使うことはねえだろうよ」
ウォーリーがアカシの言葉に付け加えた。
エリックは少し恥じたように言葉を引っ込めた。
彼が言葉を発するのは不安があるからだ。不安に感じるのは皆も同じだろうと彼は思う。
五人は階段を使って上の階へと進んでいる。エレベータを使うと閉じ込められる危険があるからだ。
今のところ行く手を阻む者はない。というより五人の他に人の姿が見えない。
フロアから人の声は時折聞こえるので、建物の中に人はいるのだろう。
五人が他の者と鉢合わせしないのはアカシの予想よりも建物の中にいる従業員の数が少ないことが関係しているようだ。
階段を上がるにつれて軽口を叩いていたウォーリーやアカシの口数も徐々に減っていく。
これは緊張が増してきたというよりも、一気に一一階まで階段で上がっていったためであろう。その証拠に両者とも徐々にだが息が荒くなっている。
「……ったく! この建物、やたら階段が長いな。背が高いと思ったらフロアの天井が高いのかよ!」
ウォーリーが愚痴ったが、誰も相手にはしなかった。
十分ほどかけて五人が一一階に到達し「支店長室」の表示があるドアを開けて中に入る。
「失礼するぜ」
先頭で中に入ったのはウォーリーだ。
中で待ち構えられていたらどうするのだとエリックなどは心配になるが、ウォーリーを止めるのは容易ではない。
「オソダ支店長代理ですね?」
アカシが中にいた細身の中年男性に声をかけた。
ナオノリ・オソダというのが彼の名前でOP社インデスト支店の支店長代理の地位にある。OP社インデスト支店には支店長は存在せず、支店長代理がトップとなっている。
「そうだが、何か用か?」
オソダの返答は素っ気ない。
「OP社グループ労働者組合、委員長のサン・アカシです。組合からの交渉依頼だ。ここの責任者に応じてもらいたい」
「責任者は私だが、社の規程で従業員が徒党を組むことは禁じられている。そのまま帰りなさい! 私は君たちの解散を命ずる!」
オソダは強いがあまり抑揚のない声でそう命じた。
ウォーリーがオソダの方へと詰め寄った。
「お前、OP社のインデスト支店の代表だろうが! グループの従業員の代表に向かってその態度は何だ!」
ウォーリーにはオソダの態度が看過出来なかった。
交渉はアカシに任せるつもりだったのだが、オソダのまるで他人事のような口調に苛立ちを覚えたのだ。
「責任者は責任者らしく逃げずに振舞え! お前は当事者だろう?!」
ウォーリーがオソダに掴み掛らんほどの勢いでまくし立てる。
オソダは冷ややかな目でウォーリーを見やった。
それに反応したウォーリーがオソダの胸倉をつかんで引っ張り出そうとした瞬間、支店長室のスピーカーがけたたましくベルを鳴らした。
「サウスセンター」の建物に入ったウォーリーは、受付の女性にまるで知り合いに話しかけるかのような気軽な口調で言った。
「『タブーなきエンジニア集団』の関係者と接触することはできませんっ!」
受付の女性が強い調子で拒絶した。
「そこは何とかならないかなぁ? 労働者組合が責任者と話をしたい、ってことだぜ。OP社はどうだか知らないが、少なくともグループのECN社じゃ『組合の申し出があった場合、社長および役員は会合に応じる』と内規で決まっているんだぜ。グループの親玉に適用されないってのはどういうことだ?」
ウォーリーの論理も無茶だが、確かにECN社に関してはその通りだった。
「……ECN社はECN社です。私どもには私どもの規程があります。お引取りください!」
受付の女性の回答はにべもなかった。
ウォーリーは最後まで受付の答えを聞かずにアカシの方を向いた。
「何階だ?」
「最上階……一一階です」
「わかった、行くぜ」
ウォーリーはアカシとエリックに合図をすると、受付の静止を完全に無視して建物の奥へと入っていった。
これより奥に入るためには開錠に生態認証が必要なドアを開ける必要がある。
しかし、この認証システムについては事前にウォーリーとエリックの手によって弱点が調べあげられており、認証を回避して開錠する方法も既に判明していた。この手の技術力においては『タブーなきエンジニア集団』がOP社を遥かに凌駕している。
ウォーリーが難なくドアを抜けると、五人は最上階へと向かって進んでいった。
先頭を進むウォーリーとアカシはこれから昼食のために外出するような雰囲気で談笑しながら歩いている。
「それにしても、五人でよかったのですか?」
エリックがウォーリーに小声で耳打ちした。
「心配するな。いざとなったら走って逃げればいい。それに俺が手に持っている端末のボタンを押せばそれが突入の合図になる」
「僕は、腕っぷしにはまるで自信が無いんですよ……」
エリックの声は不安げだ。
「モトムラさん、ここは話し合いの場ですからね。相手は社長ではないのだし、そんなに無理な手段にも出てこないでしょう」
アカシがからからと笑った。多少エリックの小心さをからかう様子でもある。
「そういうことだ。それにここは従業員の勤務している建物の中だ。武器を使うことはねえだろうよ」
ウォーリーがアカシの言葉に付け加えた。
エリックは少し恥じたように言葉を引っ込めた。
彼が言葉を発するのは不安があるからだ。不安に感じるのは皆も同じだろうと彼は思う。
五人は階段を使って上の階へと進んでいる。エレベータを使うと閉じ込められる危険があるからだ。
今のところ行く手を阻む者はない。というより五人の他に人の姿が見えない。
フロアから人の声は時折聞こえるので、建物の中に人はいるのだろう。
五人が他の者と鉢合わせしないのはアカシの予想よりも建物の中にいる従業員の数が少ないことが関係しているようだ。
階段を上がるにつれて軽口を叩いていたウォーリーやアカシの口数も徐々に減っていく。
これは緊張が増してきたというよりも、一気に一一階まで階段で上がっていったためであろう。その証拠に両者とも徐々にだが息が荒くなっている。
「……ったく! この建物、やたら階段が長いな。背が高いと思ったらフロアの天井が高いのかよ!」
ウォーリーが愚痴ったが、誰も相手にはしなかった。
十分ほどかけて五人が一一階に到達し「支店長室」の表示があるドアを開けて中に入る。
「失礼するぜ」
先頭で中に入ったのはウォーリーだ。
中で待ち構えられていたらどうするのだとエリックなどは心配になるが、ウォーリーを止めるのは容易ではない。
「オソダ支店長代理ですね?」
アカシが中にいた細身の中年男性に声をかけた。
ナオノリ・オソダというのが彼の名前でOP社インデスト支店の支店長代理の地位にある。OP社インデスト支店には支店長は存在せず、支店長代理がトップとなっている。
「そうだが、何か用か?」
オソダの返答は素っ気ない。
「OP社グループ労働者組合、委員長のサン・アカシです。組合からの交渉依頼だ。ここの責任者に応じてもらいたい」
「責任者は私だが、社の規程で従業員が徒党を組むことは禁じられている。そのまま帰りなさい! 私は君たちの解散を命ずる!」
オソダは強いがあまり抑揚のない声でそう命じた。
ウォーリーがオソダの方へと詰め寄った。
「お前、OP社のインデスト支店の代表だろうが! グループの従業員の代表に向かってその態度は何だ!」
ウォーリーにはオソダの態度が看過出来なかった。
交渉はアカシに任せるつもりだったのだが、オソダのまるで他人事のような口調に苛立ちを覚えたのだ。
「責任者は責任者らしく逃げずに振舞え! お前は当事者だろう?!」
ウォーリーがオソダに掴み掛らんほどの勢いでまくし立てる。
オソダは冷ややかな目でウォーリーを見やった。
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