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第八章
334:決起は五月一日に
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「アカシ、決起の準備はいつできる?」
ウォーリーが組合事務所の隅の方で打ち合わせ中のアカシに問うた。
ウォーリー、というより「タブーなきエンジニア集団」の方はほぼ全ての準備を終えている。あとは決起の日が決まればそれに合わせて必要なメンバーを動かすだけだ。
アカシ率いる組合に決起の日を決めさせるのは、このデモ活動をあくまでOP社グループ労働者組合のものとするためだ。「タブーなきエンジニア集団」はあくまで協力者の立場を貫く。
「五月一日に決起したいと思います。組合員は普段仕事をしていますからね。この日なら日曜ですし、メーデーですから組合の決起にふさわしいと思います」
「一週間後か、時間がかかりすぎるな。もう少し早くならないのか?」
「市民への周知の期間もあります。一人でも多くの参加者を得るための時間があった方がいいに決まっています」
「いや、待てばそれだけハドリの大部隊が近づいてくる。俺達はハドリと戦闘をするんじゃない、交渉でハドリの奴が手を出している悪行から手を引かせるのが目的だ。市民を戦闘の巻き添えにする危険を無視するな!」
ウォーリーとアカシの声が熱を帯びてくる。
それぞれの思惑は大差ないのだが、現在の状況に関する情報の量や分野に違いがあるためだ。
ウォーリーには実際に直接OP社と戦った経験がある。戦いというよりも、相手の攻撃から一方的に逃れるだけではあったのだが。
戦闘への備えがなかった当時とは異なり、今なら逃げ惑うだけではなく戦うことも可能だ。
だが、大勢の非戦闘員を抱えて彼らを守りながら戦えるほど戦力は潤沢ではない。
正直なところ、デモに参加する市民に対してOP社がどの程度の苛烈さで対応するか、ウォーリーには見当もつかない。
戦闘になれば、最悪銃火器や爆発物を使う可能性も考えられる。さすがにこうされたら対処が困難だ。
そのため可能な限り戦闘になるのを避けたいというのがウォーリーの思惑だ。
一方、アカシはOP社治安改革センターの活動がそれほど活発ではないインデスト在住である。そのためポータル・シティなどのサブマリン島西部におけるこれらの活動の苛烈さをあまり知らない。
しかし、インデストにおける鉱山労働者の状況は熟知しており、彼らが活動に参加しやすいことに重きを置いている。多くの賛同者を集めることで、OP社に対する影響力を強めようと考えている。
「しかし、デモは人数を集めてこそ効果があります。平日では人が集まりません!」
「アカシ、平日も休日も関係ないだろう! ことは重大なんだぞ!」
「だからこそ、人数が必要なんです! 人が集まらなければデモにならないじゃないですか!」
「わからない奴だな! 時間が経てばそれだけハドリが近づいてくる! ハドリの部隊がインデストに到着したら手遅れなんだぞ! 早急に決起して『サウスセンター』を包囲するなり占拠するなりしないと間に合わないだろうが!」
ウォーリーが壁を手で打った。
それにアカシが反論しかけたとき、彼の後ろでテーブルを叩く音がした。
ウォーリーとアカシが音の方へ顔を向けると、ヌマタが腕を組んで無言で座っている。その表情は険しい。
「何だ?」
ウォーリーが訝し気に問うた。
「実際のところ、多くの人数を効果的にさばく準備には無理をして急いでもあと三、四日かかるでしょう。準備不足の段階でデモを仕掛けるのは危険だと思いますね」
ヌマタが落ち着いた声で言い放った。
ウォーリーは少し考えてから、
「……ハドリの部隊はどのあたりにいる? 確かヌマタとエリックで調べていたよな?」
と聞き返した。準備にかけられる時間を把握するためだ。
ヌマタはOP社の部隊がインデストの西一ニ〇キロの地点におり、今から動いて最速で五月三日頃にインデストに達する見込み、と答えた。
「ならば……ハドリを引きつけても問題はないわな……」
ウォーリーはそう言って一旦沈黙すると、やおら立ち上がった。
「よし、五月一日でいいだろう! その代わり、絶対に準備を間に合わせろ。俺は支持者を集めに明日からまた街に出る!」
この一声で決まった。
「承知しました! 五月一日にやってやりましょう! 組合の力を見せつけてやります!」
アカシガ立ち上がってウォーリーに握手を求めた。
「いいぞ、その意気だ」
ウォーリーがアカシの手を取った。その脇ではヌマタが安堵の表情を浮かべていた。
詳細はこの後、エリックを加えた話し合いで決定された。
こうして「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合は、LH五一年五月一日に「サウスセンター」でデモ活動を行うことを正式に決めたのである。
ウォーリーが組合事務所の隅の方で打ち合わせ中のアカシに問うた。
ウォーリー、というより「タブーなきエンジニア集団」の方はほぼ全ての準備を終えている。あとは決起の日が決まればそれに合わせて必要なメンバーを動かすだけだ。
アカシ率いる組合に決起の日を決めさせるのは、このデモ活動をあくまでOP社グループ労働者組合のものとするためだ。「タブーなきエンジニア集団」はあくまで協力者の立場を貫く。
「五月一日に決起したいと思います。組合員は普段仕事をしていますからね。この日なら日曜ですし、メーデーですから組合の決起にふさわしいと思います」
「一週間後か、時間がかかりすぎるな。もう少し早くならないのか?」
「市民への周知の期間もあります。一人でも多くの参加者を得るための時間があった方がいいに決まっています」
「いや、待てばそれだけハドリの大部隊が近づいてくる。俺達はハドリと戦闘をするんじゃない、交渉でハドリの奴が手を出している悪行から手を引かせるのが目的だ。市民を戦闘の巻き添えにする危険を無視するな!」
ウォーリーとアカシの声が熱を帯びてくる。
それぞれの思惑は大差ないのだが、現在の状況に関する情報の量や分野に違いがあるためだ。
ウォーリーには実際に直接OP社と戦った経験がある。戦いというよりも、相手の攻撃から一方的に逃れるだけではあったのだが。
戦闘への備えがなかった当時とは異なり、今なら逃げ惑うだけではなく戦うことも可能だ。
だが、大勢の非戦闘員を抱えて彼らを守りながら戦えるほど戦力は潤沢ではない。
正直なところ、デモに参加する市民に対してOP社がどの程度の苛烈さで対応するか、ウォーリーには見当もつかない。
戦闘になれば、最悪銃火器や爆発物を使う可能性も考えられる。さすがにこうされたら対処が困難だ。
そのため可能な限り戦闘になるのを避けたいというのがウォーリーの思惑だ。
一方、アカシはOP社治安改革センターの活動がそれほど活発ではないインデスト在住である。そのためポータル・シティなどのサブマリン島西部におけるこれらの活動の苛烈さをあまり知らない。
しかし、インデストにおける鉱山労働者の状況は熟知しており、彼らが活動に参加しやすいことに重きを置いている。多くの賛同者を集めることで、OP社に対する影響力を強めようと考えている。
「しかし、デモは人数を集めてこそ効果があります。平日では人が集まりません!」
「アカシ、平日も休日も関係ないだろう! ことは重大なんだぞ!」
「だからこそ、人数が必要なんです! 人が集まらなければデモにならないじゃないですか!」
「わからない奴だな! 時間が経てばそれだけハドリが近づいてくる! ハドリの部隊がインデストに到着したら手遅れなんだぞ! 早急に決起して『サウスセンター』を包囲するなり占拠するなりしないと間に合わないだろうが!」
ウォーリーが壁を手で打った。
それにアカシが反論しかけたとき、彼の後ろでテーブルを叩く音がした。
ウォーリーとアカシが音の方へ顔を向けると、ヌマタが腕を組んで無言で座っている。その表情は険しい。
「何だ?」
ウォーリーが訝し気に問うた。
「実際のところ、多くの人数を効果的にさばく準備には無理をして急いでもあと三、四日かかるでしょう。準備不足の段階でデモを仕掛けるのは危険だと思いますね」
ヌマタが落ち着いた声で言い放った。
ウォーリーは少し考えてから、
「……ハドリの部隊はどのあたりにいる? 確かヌマタとエリックで調べていたよな?」
と聞き返した。準備にかけられる時間を把握するためだ。
ヌマタはOP社の部隊がインデストの西一ニ〇キロの地点におり、今から動いて最速で五月三日頃にインデストに達する見込み、と答えた。
「ならば……ハドリを引きつけても問題はないわな……」
ウォーリーはそう言って一旦沈黙すると、やおら立ち上がった。
「よし、五月一日でいいだろう! その代わり、絶対に準備を間に合わせろ。俺は支持者を集めに明日からまた街に出る!」
この一声で決まった。
「承知しました! 五月一日にやってやりましょう! 組合の力を見せつけてやります!」
アカシガ立ち上がってウォーリーに握手を求めた。
「いいぞ、その意気だ」
ウォーリーがアカシの手を取った。その脇ではヌマタが安堵の表情を浮かべていた。
詳細はこの後、エリックを加えた話し合いで決定された。
こうして「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合は、LH五一年五月一日に「サウスセンター」でデモ活動を行うことを正式に決めたのである。
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