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第八章
333:ウォーリーの目論見
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デモを仕掛ける対象を「サウスセンター」に絞り込んだのには理由がある。
「サウスセンター」の周辺は込みいった繁華街で、大集団を展開しにくい。
正門前の通りを除けば、他は通用口に面している路地に毛の生えた程度の道があるだけだ。
こうした地形であれば正門前の通りを塞ぐようにデモに参加する市民を配置し、通りの両端と正門を戦闘チームで埋めておけば、市民への危険は少ない。
「サウスセンター」正門へ移動する途中を狙われることが心配だが、そこまで手を回せるほど、ウォーリーの手元にある戦力は豊富ではない。
デモの会場に到着した市民は全力でその安全を確保する。
また、「サウスセンター」はインデストにおけるOP社の指揮命令系統の中枢部であると同時に、治安改革部隊が使用する武器屋消耗品の類が保管されている倉庫でもある。
指揮命令自体は通信ネットワークで行われるのが大多数であるから、周辺を市民で囲っただけではその機能を停止させることはできない。
しかし、命令を発しているのは人である。
人の壁で人の出入りを止めてしまえば、通信ネットワークは生き残っても、通信を行う人を中に入れずに済ませるか、逆に中に閉じ込めたままにできる。
前者なら、「サウスセンター」から命令を発することができなくなる。
後者であるなら命令を発する者を疲弊させ、判断や伝達のミスを誘うことができる。
また、どちらのパターンでも武器や消耗品の補充が困難になる。ウォーリーの狙いはまさにこれだ。
事前の調査で「サウスセンター」から発せられる命令は、治安改革センターに出されるものが殆どであることがわかっている。
また、OP社本社から発せられる命令も「サウスセンター」に集められる。
このことから、「サウスセンター」の封鎖が情報伝達と作戦継続のふたつの面からもっとも有利だとウォーリーは判断している。
「サウスセンター」を封鎖してしまえば、他の施設が指揮命令系統を担う可能性もある。
しかし、OP社のもと従業員であるジン・ヌマタやアカシなどから、「サウスセンター」以外の施設は通信ネットワーク環境が脆弱であるという情報を得ている。
ウォーリー率いる「タブーなきエンジニア集団」は名前のとおり、エンジニアの集まりだ。それもこの地におけるトップクラスのエンジニアだ。
ウォーリーは今回エンジニアのエース的存在であるエリックを同行させている。
脆弱な通信ネットワークの無力化など彼らにとってはたやすい。
指揮命令系統が混乱すれば、多数の人員を抱えていてもそれを機動的に活用することは難しい。
OP社を支える三つの事業のうちの一つである鉄鋼事業に混乱が生じれば、その打撃は無視できないものになる。
また、二万以上の部隊を本社から程遠いインデストに送り込み、何ら生産に寄与しない活動に従事させている。
この二つの状態が長期化すれば、OP社の運営に支障が出るであろう。
OP社は公共団体でもなければ、慈善団体でもない。サブマリン島の人口の一五パーセント近くで構成されている集団とはいえ、利益を出さねばならない営利企業なのである。
通常の営業活動に支障が出れば、OP社とていつまでも「タブーなきエンジニア集団」と争ってはいられない。また、今回「タブーなきエンジニア集団」にはOP社や関連会社の従業員で構成される労働者組合も味方している。
つまり、OP社の事業活動に重大な支障が起きる可能性を孕んでいるのである。
事態が長期化すれば、OP社が譲歩しなければならない場面が出るであろう。
そこでハドリを交渉のテーブルに引っ張り出し、次の条件を飲ませればよい。
すなわち、
・ 司法警察権の放棄、および不当に拘束された者の解放
・ OP社における労働者組合の活動の公認
・ 「タブーなきエンジニア集団」に加えた攻撃への公開謝罪
・ インデスト侵攻中の部隊の解散と、「タブーなきエンジニア集団」、OP社グループ労働者組合、そしてデモに参加した市民への攻撃停止と安全の保障
の四つである。
他にもECN社との提携の解消や、治安改革センターの施設の一般開放なども求めていくつもりだが、最低限、先に示した四つの条件が無条件で受け入れられれば、当初の目的は果たせる、とウォーリーは考えている。
長期戦は自身の体調に不安があるが、ある程度は覚悟しなければならないだろう。
OP社側の人数は二万を少し超える程度という情報が入っており、そのほとんどが戦闘部隊だ。
一方、「タブーなきエンジニア集団」は戦闘チームが二五〇名、市民の支持者が一万五千を少し超える程度だと思われる。
協調体制をとるアカシ率いるOP社グループ労働者組合は、幹部が二〇名ほど、組合員は三千に少し足りないという。
インデストにいるOP社とその関連会社の従業員は合わせて二万ほどであるから、加入率は一五パーセント程度だ。社長のハドリを恐れている人間が多いことを考えれば健闘しているといえる数字なのだが、ウォーリーからするとやや物足りない。
だが、ハドリを恐れて日和っている者は少なくない、とウォーリーも考えている。
「タブーなきエンジニア集団」や労働者組合が十分頼りになる、と判断されればこうした日和見グループが味方につくのではないか、という見通しがある。
「サウスセンター」の周辺は込みいった繁華街で、大集団を展開しにくい。
正門前の通りを除けば、他は通用口に面している路地に毛の生えた程度の道があるだけだ。
こうした地形であれば正門前の通りを塞ぐようにデモに参加する市民を配置し、通りの両端と正門を戦闘チームで埋めておけば、市民への危険は少ない。
「サウスセンター」正門へ移動する途中を狙われることが心配だが、そこまで手を回せるほど、ウォーリーの手元にある戦力は豊富ではない。
デモの会場に到着した市民は全力でその安全を確保する。
また、「サウスセンター」はインデストにおけるOP社の指揮命令系統の中枢部であると同時に、治安改革部隊が使用する武器屋消耗品の類が保管されている倉庫でもある。
指揮命令自体は通信ネットワークで行われるのが大多数であるから、周辺を市民で囲っただけではその機能を停止させることはできない。
しかし、命令を発しているのは人である。
人の壁で人の出入りを止めてしまえば、通信ネットワークは生き残っても、通信を行う人を中に入れずに済ませるか、逆に中に閉じ込めたままにできる。
前者なら、「サウスセンター」から命令を発することができなくなる。
後者であるなら命令を発する者を疲弊させ、判断や伝達のミスを誘うことができる。
また、どちらのパターンでも武器や消耗品の補充が困難になる。ウォーリーの狙いはまさにこれだ。
事前の調査で「サウスセンター」から発せられる命令は、治安改革センターに出されるものが殆どであることがわかっている。
また、OP社本社から発せられる命令も「サウスセンター」に集められる。
このことから、「サウスセンター」の封鎖が情報伝達と作戦継続のふたつの面からもっとも有利だとウォーリーは判断している。
「サウスセンター」を封鎖してしまえば、他の施設が指揮命令系統を担う可能性もある。
しかし、OP社のもと従業員であるジン・ヌマタやアカシなどから、「サウスセンター」以外の施設は通信ネットワーク環境が脆弱であるという情報を得ている。
ウォーリー率いる「タブーなきエンジニア集団」は名前のとおり、エンジニアの集まりだ。それもこの地におけるトップクラスのエンジニアだ。
ウォーリーは今回エンジニアのエース的存在であるエリックを同行させている。
脆弱な通信ネットワークの無力化など彼らにとってはたやすい。
指揮命令系統が混乱すれば、多数の人員を抱えていてもそれを機動的に活用することは難しい。
OP社を支える三つの事業のうちの一つである鉄鋼事業に混乱が生じれば、その打撃は無視できないものになる。
また、二万以上の部隊を本社から程遠いインデストに送り込み、何ら生産に寄与しない活動に従事させている。
この二つの状態が長期化すれば、OP社の運営に支障が出るであろう。
OP社は公共団体でもなければ、慈善団体でもない。サブマリン島の人口の一五パーセント近くで構成されている集団とはいえ、利益を出さねばならない営利企業なのである。
通常の営業活動に支障が出れば、OP社とていつまでも「タブーなきエンジニア集団」と争ってはいられない。また、今回「タブーなきエンジニア集団」にはOP社や関連会社の従業員で構成される労働者組合も味方している。
つまり、OP社の事業活動に重大な支障が起きる可能性を孕んでいるのである。
事態が長期化すれば、OP社が譲歩しなければならない場面が出るであろう。
そこでハドリを交渉のテーブルに引っ張り出し、次の条件を飲ませればよい。
すなわち、
・ 司法警察権の放棄、および不当に拘束された者の解放
・ OP社における労働者組合の活動の公認
・ 「タブーなきエンジニア集団」に加えた攻撃への公開謝罪
・ インデスト侵攻中の部隊の解散と、「タブーなきエンジニア集団」、OP社グループ労働者組合、そしてデモに参加した市民への攻撃停止と安全の保障
の四つである。
他にもECN社との提携の解消や、治安改革センターの施設の一般開放なども求めていくつもりだが、最低限、先に示した四つの条件が無条件で受け入れられれば、当初の目的は果たせる、とウォーリーは考えている。
長期戦は自身の体調に不安があるが、ある程度は覚悟しなければならないだろう。
OP社側の人数は二万を少し超える程度という情報が入っており、そのほとんどが戦闘部隊だ。
一方、「タブーなきエンジニア集団」は戦闘チームが二五〇名、市民の支持者が一万五千を少し超える程度だと思われる。
協調体制をとるアカシ率いるOP社グループ労働者組合は、幹部が二〇名ほど、組合員は三千に少し足りないという。
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だが、ハドリを恐れて日和っている者は少なくない、とウォーリーも考えている。
「タブーなきエンジニア集団」や労働者組合が十分頼りになる、と判断されればこうした日和見グループが味方につくのではないか、という見通しがある。
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