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第七章
294:トニーの決断
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トニーはOP社へECN社を売るというアイデアの実現可能性を探ることにした。
彼が率いる「リスク管理研究所」へのダメージが小さく、かつOP社の戦力を削ることができる有力な案だと思えたからだ。
OP社が「タブーなきエンジニア集団」を打倒することは避けられない事態だと考えられる。
「タブーなきエンジニア集団」には一定数の市民の支持がある、
また、彼らはゲリラ的な動きを得意としているが、いかんせん戦力差が大きすぎる。
OP社がその気になれば二万を超える戦闘部隊をインデストに送り込むことは可能だろう。それに対し、「タブーなきエンジニア集団」の戦闘部隊など数百に過ぎないのだ。
インデストの住民がどれほど「タブーなきエンジニア集団」を支持しているかは不明だが、現在はまだ大多数ではないと思われる。
ウォーリーがハドリの暗殺を否定している以上、「タブーなきエンジニア集団」が勝機を掴むとしたら、多くの支持者の獲得が不可欠であろう。
過半数の住民が「タブーなきエンジニア集団」に味方すれば、OP社といえどもその攻略は容易ではない。
戦闘中に住民が大挙して割って入ることになれば、OP社が壊滅させられることはないにしても、攻めあぐねて撤退する可能性は大いに考えられる。
攻めるのはOP社であり、守るのは「タブーなきエンジニア集団」なのだから。
OP社が情報システム関連の事業で大幅に利益を減らしているのは、「タブーなきエンジニア集団」を支持する者がOP社を避けて彼らに仕事を発注しているという要因が大きい。
こうしてOP社の利益を削ることにより、彼らにダメージを与えることも可能だ。
事実、OP社は削られた利益の影響で、その成長速度が鈍っている。
トニーとしては、OP社に先にECN社を討ってもらったところで、「タブーなきエンジニア集団」と対峙させたい。
ECN社はトップが無能であるが、OP社が攻撃するとなればそれなりの損害を受けることは必至だ。
社員同士が武器を持って戦うことはないだろう。「タブーなきエンジニア集団」に友好的であったり、OP社の方針に反抗的なものをあぶりだして処分する、といったあたりになると思われる。ハドリの場合「処分」に「生命を奪う」ことが含まれるのは、過去の事例からもあり得る話だが。
このような形で攻撃された場合、ECN社は主に現場や中堅どころがサボタージュや反抗的な態度で応戦する可能性が高い。そうなればECN社、OP社の双方から人材と顧客が流出することが考えられる。
それでもOP社は「タブーなきエンジニア集団」より戦力的にはかなり優位な位置にあるはずだ。「タブーなきエンジニア集団」とは人材の数が違いすぎる。
この状態でOP社に「タブーなきエンジニア集団」を攻撃させる。
こちらは武器を用いた戦闘になる可能性が高い。
ハドリが明確に敵と認定している相手であるし、ウォーリーの側も戦闘を想定した準備を進めているからだ。
戦いの結果ウォーリーが屈服したとしても、OP社の損害は相当大きくなることが予想される。
この時点で流出した人材や顧客を「リスク管理研究所」に取り込めば、トニーが圧倒的優位な状態に立てる可能性がある。
それならそれでよい。OP社の損害が大きければ大きいほど「リスク管理研究所」にとって有利になるから、そのための根回しをしておくことも考慮すべきである。
ウォーリーが倒れた場合は次のリーダーが誰になるかを考慮する必要がある。
「タブーなきエンジニア集団」でリーダーが務まるのはミヤハラくらいだろう。
サクライは貫禄と知名度がなさ過ぎるし、エリックはただの技術屋だ。
この場合は次のリーダーが誰になるかを見極めてから対処すべきだ。
可能性としてはミヤハラが一番高いだろうが、地味な分、ウォーリーほどのカリスマ性は期待できないと思われる。
ハドリが屈服するか倒れた場合は簡単だ。
ウォーリーが「リスク管理研究所」を攻撃する理由もないし、仮に攻撃したとしても話の通じる相手だ、どうにでも対処できる。
トニーがハドリであったとするならば、ECN社の中でウォーリーと折り合いの悪かった者を集め、彼らに「タブーなきエンジニア集団」を攻撃させるだろう。自社の危険がもっとも小さいからだ。
しかし、ハドリはトニーほどECN社の内情に通じていないようなので、この方法が取れないに違いない。攻撃に出した者が寝返ることを警戒しているのかもしれない。
現在、OP社はECN社から治安改革部隊に人員を出させている。
だが、ECN社の者に武器を持たせていないし、「タブーなきエンジニア集団」の攻撃から自社のメンバーを守る盾のような使い方をしている。これではECN社の関係者が「タブーなきエンジニア集団」の力を削ることができない。
ECN社のメンバーを「タブーなきエンジニア集団」に対する直接攻撃や諜報に活用すればより効率的に力を削ることができるはずだ。もっとも、今の段階でこれをやられるとさすがにトニーもお手上げになるので、その面では救われているといえよう。
やはりハドリに倒れてもらうのが一番都合がよい。
そのためにはハドリの猜疑心を利用しない手はない。
トニーは早速、「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合、そしてECN社が結んでOP社に対抗した場合のシナリオの作成を開始した。
(自分にとって害をなす者は倒れてもらうことに越したことはないからな……
そうでなければ、俺が人生を楽しめない)
トニーは表情を殺したまま、業務用の端末の方を向いた。
彼が率いる「リスク管理研究所」へのダメージが小さく、かつOP社の戦力を削ることができる有力な案だと思えたからだ。
OP社が「タブーなきエンジニア集団」を打倒することは避けられない事態だと考えられる。
「タブーなきエンジニア集団」には一定数の市民の支持がある、
また、彼らはゲリラ的な動きを得意としているが、いかんせん戦力差が大きすぎる。
OP社がその気になれば二万を超える戦闘部隊をインデストに送り込むことは可能だろう。それに対し、「タブーなきエンジニア集団」の戦闘部隊など数百に過ぎないのだ。
インデストの住民がどれほど「タブーなきエンジニア集団」を支持しているかは不明だが、現在はまだ大多数ではないと思われる。
ウォーリーがハドリの暗殺を否定している以上、「タブーなきエンジニア集団」が勝機を掴むとしたら、多くの支持者の獲得が不可欠であろう。
過半数の住民が「タブーなきエンジニア集団」に味方すれば、OP社といえどもその攻略は容易ではない。
戦闘中に住民が大挙して割って入ることになれば、OP社が壊滅させられることはないにしても、攻めあぐねて撤退する可能性は大いに考えられる。
攻めるのはOP社であり、守るのは「タブーなきエンジニア集団」なのだから。
OP社が情報システム関連の事業で大幅に利益を減らしているのは、「タブーなきエンジニア集団」を支持する者がOP社を避けて彼らに仕事を発注しているという要因が大きい。
こうしてOP社の利益を削ることにより、彼らにダメージを与えることも可能だ。
事実、OP社は削られた利益の影響で、その成長速度が鈍っている。
トニーとしては、OP社に先にECN社を討ってもらったところで、「タブーなきエンジニア集団」と対峙させたい。
ECN社はトップが無能であるが、OP社が攻撃するとなればそれなりの損害を受けることは必至だ。
社員同士が武器を持って戦うことはないだろう。「タブーなきエンジニア集団」に友好的であったり、OP社の方針に反抗的なものをあぶりだして処分する、といったあたりになると思われる。ハドリの場合「処分」に「生命を奪う」ことが含まれるのは、過去の事例からもあり得る話だが。
このような形で攻撃された場合、ECN社は主に現場や中堅どころがサボタージュや反抗的な態度で応戦する可能性が高い。そうなればECN社、OP社の双方から人材と顧客が流出することが考えられる。
それでもOP社は「タブーなきエンジニア集団」より戦力的にはかなり優位な位置にあるはずだ。「タブーなきエンジニア集団」とは人材の数が違いすぎる。
この状態でOP社に「タブーなきエンジニア集団」を攻撃させる。
こちらは武器を用いた戦闘になる可能性が高い。
ハドリが明確に敵と認定している相手であるし、ウォーリーの側も戦闘を想定した準備を進めているからだ。
戦いの結果ウォーリーが屈服したとしても、OP社の損害は相当大きくなることが予想される。
この時点で流出した人材や顧客を「リスク管理研究所」に取り込めば、トニーが圧倒的優位な状態に立てる可能性がある。
それならそれでよい。OP社の損害が大きければ大きいほど「リスク管理研究所」にとって有利になるから、そのための根回しをしておくことも考慮すべきである。
ウォーリーが倒れた場合は次のリーダーが誰になるかを考慮する必要がある。
「タブーなきエンジニア集団」でリーダーが務まるのはミヤハラくらいだろう。
サクライは貫禄と知名度がなさ過ぎるし、エリックはただの技術屋だ。
この場合は次のリーダーが誰になるかを見極めてから対処すべきだ。
可能性としてはミヤハラが一番高いだろうが、地味な分、ウォーリーほどのカリスマ性は期待できないと思われる。
ハドリが屈服するか倒れた場合は簡単だ。
ウォーリーが「リスク管理研究所」を攻撃する理由もないし、仮に攻撃したとしても話の通じる相手だ、どうにでも対処できる。
トニーがハドリであったとするならば、ECN社の中でウォーリーと折り合いの悪かった者を集め、彼らに「タブーなきエンジニア集団」を攻撃させるだろう。自社の危険がもっとも小さいからだ。
しかし、ハドリはトニーほどECN社の内情に通じていないようなので、この方法が取れないに違いない。攻撃に出した者が寝返ることを警戒しているのかもしれない。
現在、OP社はECN社から治安改革部隊に人員を出させている。
だが、ECN社の者に武器を持たせていないし、「タブーなきエンジニア集団」の攻撃から自社のメンバーを守る盾のような使い方をしている。これではECN社の関係者が「タブーなきエンジニア集団」の力を削ることができない。
ECN社のメンバーを「タブーなきエンジニア集団」に対する直接攻撃や諜報に活用すればより効率的に力を削ることができるはずだ。もっとも、今の段階でこれをやられるとさすがにトニーもお手上げになるので、その面では救われているといえよう。
やはりハドリに倒れてもらうのが一番都合がよい。
そのためにはハドリの猜疑心を利用しない手はない。
トニーは早速、「タブーなきエンジニア集団」とOP社グループ労働者組合、そしてECN社が結んでOP社に対抗した場合のシナリオの作成を開始した。
(自分にとって害をなす者は倒れてもらうことに越したことはないからな……
そうでなければ、俺が人生を楽しめない)
トニーは表情を殺したまま、業務用の端末の方を向いた。
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