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第七章
281:タイムリミット
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セスをメディットに運んだ翌日、オイゲン、ロビー、カネサキ、オオイダの四人が再びメディットを訪れた。
オイゲンとロビーはセスの主治医とアイネスの話を聞きに応接室へと移動する。
カネサキとオオイダは、朝一に一般病棟へ移されたセスの病室へと向かった。
コナカがECN社本社に残ったのは、カネサキとオオイダがメディットへ行くことを強く望んだため、控えめな彼女が引き下がったからだ。
オイゲンとロビーは、セスの主治医から手術の経緯と内容を聞かされた。
手術は成功したが対症療法的なもので、セスの症状の根治には至らないことが最初に知らされた。
今回は神経系への影響があるとのことで、会話と右半身の動作に障害が出ているだろうとも報告を受けた。
ただし、これは一時的なものの可能性が高く、リハビリ次第ではほぼ以前の状態に戻るだろうとのことであった。
それを受けてオイゲンは以前ウォーリーがメディットに入院したことがあることを指摘して、セスとの兄弟関係を鑑定する方法はないだろうか、と問うた。
オイゲンは既にセス達から報告を受けた事柄をアイネスに伝えており、ウォーリーがセスの兄らしいことをアイネスも知っている。
オイゲンの質問にはアイネスが回答した。セスの主治医はウォーリーを知ってはいたが、彼を担当したことがないからだ。
アイネスは必要な材料が院内に残されていない、と答えた。
そして、こう付け加えた。
「仮に材料が院内にあっても、ウォーリー・トワさんの了解がなければ鑑定には使用出来ません。人道的な問題もありますし、当院のガイドラインでも定められていることです」
これを聞いたロビーが、
「ウォーリー・トワ氏に了解してもらって、材料を持ってくればいいということですか?」
とアイネスに問うと、アイネスはその通りですとうなずいた。
この瞬間、ロビーは最悪一人でもインデストへ赴き、ウォーリーと接触しようと考えた。
セスが動けなければ自分が動けばよいのだ。
「実際のところ、クルス君の状態はどうなのでしょうか? 我々はどの程度の覚悟が必要でしょうか?」
ロビーの横でオイゲンが神妙な面持ちで問うた。
「当初の予想よりも症状が悪い。生命に関しては確率論的な部分が大きいので、確実なことは言えないが、夏を越すところまでは持たせたい」
というのが、主治医からの回答であった。
今は三月であるから、あと半年程度、という意味であろう。
ロビーはそれを聞いて天の采配を呪いたくなる気分になった。
先日、セスは誕生日を迎えたが、まだニ一歳である。
これからが人生楽しい時期であるはずだ。
この年齢で生き別れの兄と会えるのでれば、この先いくらでも失われた時を取り戻せるはずだった。
しかし、得られたのはセスの残りの命数はそれほど多くないという答えであった。
せっかくセスの兄の有力候補が判明しても、会うことができなければ意味がない。
それに、まだ、セスの兄とは確定していないのだ。
ロビーはウォーリーがセスの兄であることは確認するまでもないと思っている。
目と顔の輪郭を除いてあまり似たところがないように思われるが、何故かロビーには確信めいたものがあるのだった。
医師からの説明が終わって、オイゲンとロビーは部屋を後にした。
前を歩いているロビーにオイゲンが遠慮がちに声をかけた。
「クルス君を見舞った後でいいですが……内密でお話したいことがあります」
「あ? ここで話してくださいよ」
「いえ、ここだとちょっと支障がありますね……」
「……まあいいです。社長さんにお付き合いしましょう」
「助かります」
ロビーとオイゲンがセスの病室を訪れると、そこには甲斐甲斐しくセスの世話をしているカネサキとオオイダの姿があった。二人とも面倒見は良いようだ。
「お……?! 大丈夫なのか、セス?」
カネサキとオオイダの様子を見てロビーがセスに声をかけた。
セスは力なくうなずいた。意識はあるようだ。
「タカミ君、今、クルス君は言葉を普通に話せないはず……」
ロビーの耳元にオイゲンが小声でささやいた。セスに聞かれまいと気遣ったのであろう。
「あ、そうか……」
オイゲンの指摘にロビーがしまったという表情を見せた。
セスは何か言おうと口を開いたが、意味不明の音声が発せられただけだった。
「なに、リハビリをすれば二ヶ月もしないでもとに戻るってよ。そうしたら、出発すればいいさ。その間の準備は俺たちでやっておくから心配するなって」
ロビーの言葉にセスは何度もうなずいた。
それでも何か言いたそうで、自由な左半身を動かしているのだが、その動きはばらばらで何を言いたいのか、周辺の者にはまったく理解できなかった。
この日は治療の都合なのか、面会は午前中までとされていた。
オイゲンが時計を見て面会時間の終了を確認すると、ロビー、カネサキ、オオイダに声をかけて昼食へ同行するように依頼した。
オオイダがオイゲンのおごりを条件にしたので、オイゲンはそれを承諾するとともに、モリタとコナカを呼ぶようにそれぞれロビーとオオイダに伝えた。
オイゲンとロビーはセスの主治医とアイネスの話を聞きに応接室へと移動する。
カネサキとオオイダは、朝一に一般病棟へ移されたセスの病室へと向かった。
コナカがECN社本社に残ったのは、カネサキとオオイダがメディットへ行くことを強く望んだため、控えめな彼女が引き下がったからだ。
オイゲンとロビーは、セスの主治医から手術の経緯と内容を聞かされた。
手術は成功したが対症療法的なもので、セスの症状の根治には至らないことが最初に知らされた。
今回は神経系への影響があるとのことで、会話と右半身の動作に障害が出ているだろうとも報告を受けた。
ただし、これは一時的なものの可能性が高く、リハビリ次第ではほぼ以前の状態に戻るだろうとのことであった。
それを受けてオイゲンは以前ウォーリーがメディットに入院したことがあることを指摘して、セスとの兄弟関係を鑑定する方法はないだろうか、と問うた。
オイゲンは既にセス達から報告を受けた事柄をアイネスに伝えており、ウォーリーがセスの兄らしいことをアイネスも知っている。
オイゲンの質問にはアイネスが回答した。セスの主治医はウォーリーを知ってはいたが、彼を担当したことがないからだ。
アイネスは必要な材料が院内に残されていない、と答えた。
そして、こう付け加えた。
「仮に材料が院内にあっても、ウォーリー・トワさんの了解がなければ鑑定には使用出来ません。人道的な問題もありますし、当院のガイドラインでも定められていることです」
これを聞いたロビーが、
「ウォーリー・トワ氏に了解してもらって、材料を持ってくればいいということですか?」
とアイネスに問うと、アイネスはその通りですとうなずいた。
この瞬間、ロビーは最悪一人でもインデストへ赴き、ウォーリーと接触しようと考えた。
セスが動けなければ自分が動けばよいのだ。
「実際のところ、クルス君の状態はどうなのでしょうか? 我々はどの程度の覚悟が必要でしょうか?」
ロビーの横でオイゲンが神妙な面持ちで問うた。
「当初の予想よりも症状が悪い。生命に関しては確率論的な部分が大きいので、確実なことは言えないが、夏を越すところまでは持たせたい」
というのが、主治医からの回答であった。
今は三月であるから、あと半年程度、という意味であろう。
ロビーはそれを聞いて天の采配を呪いたくなる気分になった。
先日、セスは誕生日を迎えたが、まだニ一歳である。
これからが人生楽しい時期であるはずだ。
この年齢で生き別れの兄と会えるのでれば、この先いくらでも失われた時を取り戻せるはずだった。
しかし、得られたのはセスの残りの命数はそれほど多くないという答えであった。
せっかくセスの兄の有力候補が判明しても、会うことができなければ意味がない。
それに、まだ、セスの兄とは確定していないのだ。
ロビーはウォーリーがセスの兄であることは確認するまでもないと思っている。
目と顔の輪郭を除いてあまり似たところがないように思われるが、何故かロビーには確信めいたものがあるのだった。
医師からの説明が終わって、オイゲンとロビーは部屋を後にした。
前を歩いているロビーにオイゲンが遠慮がちに声をかけた。
「クルス君を見舞った後でいいですが……内密でお話したいことがあります」
「あ? ここで話してくださいよ」
「いえ、ここだとちょっと支障がありますね……」
「……まあいいです。社長さんにお付き合いしましょう」
「助かります」
ロビーとオイゲンがセスの病室を訪れると、そこには甲斐甲斐しくセスの世話をしているカネサキとオオイダの姿があった。二人とも面倒見は良いようだ。
「お……?! 大丈夫なのか、セス?」
カネサキとオオイダの様子を見てロビーがセスに声をかけた。
セスは力なくうなずいた。意識はあるようだ。
「タカミ君、今、クルス君は言葉を普通に話せないはず……」
ロビーの耳元にオイゲンが小声でささやいた。セスに聞かれまいと気遣ったのであろう。
「あ、そうか……」
オイゲンの指摘にロビーがしまったという表情を見せた。
セスは何か言おうと口を開いたが、意味不明の音声が発せられただけだった。
「なに、リハビリをすれば二ヶ月もしないでもとに戻るってよ。そうしたら、出発すればいいさ。その間の準備は俺たちでやっておくから心配するなって」
ロビーの言葉にセスは何度もうなずいた。
それでも何か言いたそうで、自由な左半身を動かしているのだが、その動きはばらばらで何を言いたいのか、周辺の者にはまったく理解できなかった。
この日は治療の都合なのか、面会は午前中までとされていた。
オイゲンが時計を見て面会時間の終了を確認すると、ロビー、カネサキ、オオイダに声をかけて昼食へ同行するように依頼した。
オオイダがオイゲンのおごりを条件にしたので、オイゲンはそれを承諾するとともに、モリタとコナカを呼ぶようにそれぞれロビーとオオイダに伝えた。
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