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第六章
261:エリックからの警告
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ウォーリーに引っ張られるようにしてエリックはOP社グループ労働者組合の第二事務所を出た。
近所の弁当屋に向かい、昼食を購入して第二事務所へと戻った。
事務所の中に食堂はないので、食事をする際は外で食べるかどこかで調達してくる必要があるのだ。
これからの行動のことを話すとなると、人目につく外の食堂などは都合が悪い。
そのためよほどのことがない限り、昼食は外で買ってきたものを事務所の中で食べることになる。
食事をとりながらエリックはウォーリーと今後の活動について話をしている。
話をするのと同時にエリックは自分が何をすべきか考えている。
エリックの見立てではハドリがインデストに攻め入るのはほぼ確実に思える。
これをいち早く察知することが、当面の課題であろう。
「タブーなきエンジニア集団」の幹部を見回した場合、警報機役は自分がやらなければならない、と思う。
それがゆえにエリックはウォーリーに笑われても危機意識を喚起する情報を流すことを止めないことにした。
ウォーリーが本気で怒れば止めてしまうとは自分でも思うのだが、幸いウォーリーもそこまで狭量ではない。
エリックとしても技術以外の部分で、ウォーリーの組織に貢献できるのは本望だ。
ウォーリーの部下を務めてきて気付いたことだが、エリックはフォロー役を務めるのが事前に思ったほど嫌いではない。
他の幹部と同じ分野で競争するよりも、自分の役立てる分野で優位に立てているほうが気分よく感じる自分を自覚できたのは意外だった。
今のエリックはウォーリーの大願成就のために動いている。
自分自身のために動くよりも彼にとっては動きやすく、何故か充実感も得られるのだ。
気の小さい彼だが、今は「ハドリでもOP社でも来てみなさい」という気持ちがない訳ではない。
ウォーリーという頼りになるトップがあるからかもしれないのだが、「タブーなきエンジニア集団」にできないことはほとんど無いようにすらエリックには思われるのだ。
ウォーリー達の能天気に毒されたのか、それともエリックの本来の気質がそう思わせるのかはエリック自身にもわからない。
今、彼がやることは自分の役割を果たし、組織としての目的を実現することにある。
「おい、実際のところOP社の……ハドリの狙いは何だと思っているんだ?」
食事の手を止めて不意にウォーリーが問うてきた。
箸を持ったままなので、エリックには危なっかしく思われたが、敢えて指摘せずに少し身を引いた。
「やはり最悪の場合はマネージャーとアカシさんの身柄、だと思います。お二人が屈服しない限り、殺害することも辞さないのではないでしょうか?」
エリックが自分の思うところを述べた。
彼とてハドリの目的が必ずしもウォーリーやアカシの殺害にあると信じている訳ではない。
しかし、過去の実例がある。こうした場合、過去の実例から最悪の事態を想定しておくのがベストだと思われる。だから、ウォーリーやアカシの殺害を想定しているのだと。
ウォーリーは悪い方に考えすぎだ、と言いながらもエリックの考えに一定の正当性があるのを認めた。過去の実例があることはウォーリーも理解している。
ウォーリーは自身が狙われることはともかく、アカシが殺害されるのは問題だと考えている。
「タブーなきエンジニア集団」と比較して、OP社グループ労働者組合は組織の基盤が弱い。
アカシの人柄で持っている部分があるのがウォーリーにも見てとれるのだ。
そのアカシが倒れてしまっては、組合そのものが瓦解する可能性が大きい。
共闘する組織が瓦解するのは「タブーなきエンジニア集団」としても痛手が大きすぎる。
実際のところ、ウォーリーもエリックもハドリの意図を完全に読み違えていた。
ハドリの意図はウォーリーの殺害にあり、それがウォーリーの出自に基づいているなどというのは彼らの想像を超えている。
ウォーリーは彼の両親の出自を詳しく知っていた訳ではないし、ハドリと血のつながりがあるという事実も知らない。
特にハドリの母、すなわちウォーリーの祖母とその叔父の関係などは身内の中でも伏せられていた話だから、ウォーリーがこのことを知る由などないのである。
エリックに至ってはウォーリーの家族構成すら知らない。
また、二人に共通していえることだが、ハドリがその母の叔父に対して持つ憎悪の念を知ったところで、それを理解できる精神構造を持っていない。
ウォーリーは激昂しやすいが、その分冷めるのも早い。基本的に根に持つ性格ではないのだ。
一方でエリックは温厚で与えられた環境を受け入れやすい人間だ。
周りに流されやすいともいえるが、少なくともハドリのように何かに憎悪を抱きにくい性格ともいえる。
こうした二人がハドリの意図とその根底にある考えを見抜けなかったとしても、無理はない。
「おっと、お二人もここで食事中でしたか。自分も混ぜてもらいますよ」
ウォーリーとエリックが雑談に興じているところに、アカシが割り込んできた。
近所の弁当屋に向かい、昼食を購入して第二事務所へと戻った。
事務所の中に食堂はないので、食事をする際は外で食べるかどこかで調達してくる必要があるのだ。
これからの行動のことを話すとなると、人目につく外の食堂などは都合が悪い。
そのためよほどのことがない限り、昼食は外で買ってきたものを事務所の中で食べることになる。
食事をとりながらエリックはウォーリーと今後の活動について話をしている。
話をするのと同時にエリックは自分が何をすべきか考えている。
エリックの見立てではハドリがインデストに攻め入るのはほぼ確実に思える。
これをいち早く察知することが、当面の課題であろう。
「タブーなきエンジニア集団」の幹部を見回した場合、警報機役は自分がやらなければならない、と思う。
それがゆえにエリックはウォーリーに笑われても危機意識を喚起する情報を流すことを止めないことにした。
ウォーリーが本気で怒れば止めてしまうとは自分でも思うのだが、幸いウォーリーもそこまで狭量ではない。
エリックとしても技術以外の部分で、ウォーリーの組織に貢献できるのは本望だ。
ウォーリーの部下を務めてきて気付いたことだが、エリックはフォロー役を務めるのが事前に思ったほど嫌いではない。
他の幹部と同じ分野で競争するよりも、自分の役立てる分野で優位に立てているほうが気分よく感じる自分を自覚できたのは意外だった。
今のエリックはウォーリーの大願成就のために動いている。
自分自身のために動くよりも彼にとっては動きやすく、何故か充実感も得られるのだ。
気の小さい彼だが、今は「ハドリでもOP社でも来てみなさい」という気持ちがない訳ではない。
ウォーリーという頼りになるトップがあるからかもしれないのだが、「タブーなきエンジニア集団」にできないことはほとんど無いようにすらエリックには思われるのだ。
ウォーリー達の能天気に毒されたのか、それともエリックの本来の気質がそう思わせるのかはエリック自身にもわからない。
今、彼がやることは自分の役割を果たし、組織としての目的を実現することにある。
「おい、実際のところOP社の……ハドリの狙いは何だと思っているんだ?」
食事の手を止めて不意にウォーリーが問うてきた。
箸を持ったままなので、エリックには危なっかしく思われたが、敢えて指摘せずに少し身を引いた。
「やはり最悪の場合はマネージャーとアカシさんの身柄、だと思います。お二人が屈服しない限り、殺害することも辞さないのではないでしょうか?」
エリックが自分の思うところを述べた。
彼とてハドリの目的が必ずしもウォーリーやアカシの殺害にあると信じている訳ではない。
しかし、過去の実例がある。こうした場合、過去の実例から最悪の事態を想定しておくのがベストだと思われる。だから、ウォーリーやアカシの殺害を想定しているのだと。
ウォーリーは悪い方に考えすぎだ、と言いながらもエリックの考えに一定の正当性があるのを認めた。過去の実例があることはウォーリーも理解している。
ウォーリーは自身が狙われることはともかく、アカシが殺害されるのは問題だと考えている。
「タブーなきエンジニア集団」と比較して、OP社グループ労働者組合は組織の基盤が弱い。
アカシの人柄で持っている部分があるのがウォーリーにも見てとれるのだ。
そのアカシが倒れてしまっては、組合そのものが瓦解する可能性が大きい。
共闘する組織が瓦解するのは「タブーなきエンジニア集団」としても痛手が大きすぎる。
実際のところ、ウォーリーもエリックもハドリの意図を完全に読み違えていた。
ハドリの意図はウォーリーの殺害にあり、それがウォーリーの出自に基づいているなどというのは彼らの想像を超えている。
ウォーリーは彼の両親の出自を詳しく知っていた訳ではないし、ハドリと血のつながりがあるという事実も知らない。
特にハドリの母、すなわちウォーリーの祖母とその叔父の関係などは身内の中でも伏せられていた話だから、ウォーリーがこのことを知る由などないのである。
エリックに至ってはウォーリーの家族構成すら知らない。
また、二人に共通していえることだが、ハドリがその母の叔父に対して持つ憎悪の念を知ったところで、それを理解できる精神構造を持っていない。
ウォーリーは激昂しやすいが、その分冷めるのも早い。基本的に根に持つ性格ではないのだ。
一方でエリックは温厚で与えられた環境を受け入れやすい人間だ。
周りに流されやすいともいえるが、少なくともハドリのように何かに憎悪を抱きにくい性格ともいえる。
こうした二人がハドリの意図とその根底にある考えを見抜けなかったとしても、無理はない。
「おっと、お二人もここで食事中でしたか。自分も混ぜてもらいますよ」
ウォーリーとエリックが雑談に興じているところに、アカシが割り込んできた。
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