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第六章
259:ウォーリー、調子を取り戻す
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「よくもまあ、こんなに集めたものだな……」
ウォーリーが端末を操作する手を止めた。
端末に登録されている情報は膨大であり、その収集には非常な手間がかかったことが予想される。エリックの苦労が窺い知れる。
OP社の情報はハドリの性格もあり厳重に保管されているものも多かったが、エリックは巧妙に侵入しその多くを引き出していた。
エリックは本質的にはこういった侵入よりもシステムを作り上げるほうを得意としているエンジニアだとウォーリーは思うが、よくやっている。
ウォーリー自身は「タブーなきエンジニア集団」の活動を終えたら、次なるステップへ進もうと考えている。
放浪するエンジニアの集団を率いて、サブマリン島の各地を訪れた。
特に彼の興味を引いたのは各地の食事なのだが、一エンジニアとして食事を楽しみに各地をしばらく放浪してみるか、という気になった。
現在も放浪していることには変わりないが、率いている集団が大きすぎる。
また、市民運動をしている関係もあって、それぞれの土地で一エンジニアとして仕事をすることが十分にできる環境にない。
ウォーリーが目指すのは、一エンジニアとして各地を放浪し、顧客一人一人が満足する様をその目で見ることであった。
OP社の余計な活動が終われば、ウォーリーとしても自分の好きなように各地を回ることができるであろう。数年この活動を続けてみて、また他にやりたいことが見つかれば、それをやってみればいいのだ。
次の活動へ移るためにも、ウォーリーはハドリの活動を止めなければならない。
やはり将来のことを考えずにはいられないようだ。
(それにしても、あの男は理解できんな……そこまで他人を疑ってどうするんだ?)
ウォーリーは端末に記録されたハドリの活動記録を見ながら首を傾げた。
彼には、人は信頼されてはじめて動くものだという信念がある。
その信念からすれば、ハドリの行動はまるで正反対である。
他社のこととはいえ、従業員の一挙手一投足まで監視して何になるというのだろうか?
それどころかハドリは、「治安改革活動」と称して一般市民の監視まで始めた。
薬物中毒者や犯罪性のある事件を取り締まりたい気持はわからないでもないが、その権利は市民一人一人に帰すべきであって、一私企業が独占するものではないはずだ。
自身のやり方に反対する者を叩き潰すやり方に関しては、論外である。
それが市民に選ばれたトップならともかく、一私企業の社長が実施しているところはウォーリーの理解を超えているのだ。
ウォーリーはそうした正義に反する行動に正当な罰を与えるべきだと考えている。
少なくとも彼の行ってきた行動は多くの市民の支持を得てきているのだ。
暴力に頼るつもりはないが、相手が暴力に訴えるのなら当然同じ方法でやり返さなければならない。目には目を、歯には歯を、だとウォーリーは考えているからだ。
いきなり有無を言わさず殺されるほどのことはしていないと思うが、OP社、いやハドリからはそれなりの報復はあるだろう。
しかし、OP社の報復に屈していては、事態は好転しない。
「市民の怒りも知っておいた方がいいぜ、ハドリよ」
ウォーリーとしてはこの市民の怒りを伝えたかったのだ。
胸襟を開いて話をすれば大抵の相手は話が通じると思うのだが、ハドリ相手ではウォーリーも確信が持てない。話して駄目ならとことん殴り合ってみるのも手だ。
巻き込まれる者はたまったものではないだろうが、そうまでしないとわからない人間もいるのだろうと、過去の経験からウォーリーは理解している。
正直なところ、ウォーリーはこうした騒ぎが嫌いではない。
戦うための小細工 (と本人は思っていないが)を考えるのは、彼の楽しみの一つである。
エリックなどから言わせれば、戦いの小細工を考えているときのウォーリーは、美味そうな飲み屋を探しているときと同じ表情をしているのだ。
(さて、ハドリが出てきたらどう料理してやろうかな……)
戦力的には圧倒的に不利なのだが、それならそれなりに何か企んでやろうとかえって意欲が湧くのが彼らしいところだ。
OP社のグループ会社の労働者組合と手を組んだのもそうした考えあってのことである。
(物言わぬ従順なはずの部下が敵と組んだらどう考えるかな?)
ウォーリーにはハドリの出方を楽しんでいる節がある。
OP社治安改革センターから敢えて職員を追放するに留めたのも、ハドリの出方を見たかったという欲があったからかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」として真面目にやるべきところは真面目にやらなければならない。
言い換えればそれさえやっていればどこで遊ぼうと構わない、というのがウォーリーのモットーだ。
「OP社による市民の監視」は止めさせなければならないが、その目的に合っていれば、その手段に多少の楽しみを求めることを気にするタマではないのだ。
ウォーリーは自身をそこまで狭量ではないと思っている。
エリックが作業に出て行ってから、相当の時間が経っている。ウォーリー自身の調子も少し戻ったようだ。
そろそろエリックの作業を確認しに行くか、と考え、ウォーリーは部屋を後にした。
ウォーリーが端末を操作する手を止めた。
端末に登録されている情報は膨大であり、その収集には非常な手間がかかったことが予想される。エリックの苦労が窺い知れる。
OP社の情報はハドリの性格もあり厳重に保管されているものも多かったが、エリックは巧妙に侵入しその多くを引き出していた。
エリックは本質的にはこういった侵入よりもシステムを作り上げるほうを得意としているエンジニアだとウォーリーは思うが、よくやっている。
ウォーリー自身は「タブーなきエンジニア集団」の活動を終えたら、次なるステップへ進もうと考えている。
放浪するエンジニアの集団を率いて、サブマリン島の各地を訪れた。
特に彼の興味を引いたのは各地の食事なのだが、一エンジニアとして食事を楽しみに各地をしばらく放浪してみるか、という気になった。
現在も放浪していることには変わりないが、率いている集団が大きすぎる。
また、市民運動をしている関係もあって、それぞれの土地で一エンジニアとして仕事をすることが十分にできる環境にない。
ウォーリーが目指すのは、一エンジニアとして各地を放浪し、顧客一人一人が満足する様をその目で見ることであった。
OP社の余計な活動が終われば、ウォーリーとしても自分の好きなように各地を回ることができるであろう。数年この活動を続けてみて、また他にやりたいことが見つかれば、それをやってみればいいのだ。
次の活動へ移るためにも、ウォーリーはハドリの活動を止めなければならない。
やはり将来のことを考えずにはいられないようだ。
(それにしても、あの男は理解できんな……そこまで他人を疑ってどうするんだ?)
ウォーリーは端末に記録されたハドリの活動記録を見ながら首を傾げた。
彼には、人は信頼されてはじめて動くものだという信念がある。
その信念からすれば、ハドリの行動はまるで正反対である。
他社のこととはいえ、従業員の一挙手一投足まで監視して何になるというのだろうか?
それどころかハドリは、「治安改革活動」と称して一般市民の監視まで始めた。
薬物中毒者や犯罪性のある事件を取り締まりたい気持はわからないでもないが、その権利は市民一人一人に帰すべきであって、一私企業が独占するものではないはずだ。
自身のやり方に反対する者を叩き潰すやり方に関しては、論外である。
それが市民に選ばれたトップならともかく、一私企業の社長が実施しているところはウォーリーの理解を超えているのだ。
ウォーリーはそうした正義に反する行動に正当な罰を与えるべきだと考えている。
少なくとも彼の行ってきた行動は多くの市民の支持を得てきているのだ。
暴力に頼るつもりはないが、相手が暴力に訴えるのなら当然同じ方法でやり返さなければならない。目には目を、歯には歯を、だとウォーリーは考えているからだ。
いきなり有無を言わさず殺されるほどのことはしていないと思うが、OP社、いやハドリからはそれなりの報復はあるだろう。
しかし、OP社の報復に屈していては、事態は好転しない。
「市民の怒りも知っておいた方がいいぜ、ハドリよ」
ウォーリーとしてはこの市民の怒りを伝えたかったのだ。
胸襟を開いて話をすれば大抵の相手は話が通じると思うのだが、ハドリ相手ではウォーリーも確信が持てない。話して駄目ならとことん殴り合ってみるのも手だ。
巻き込まれる者はたまったものではないだろうが、そうまでしないとわからない人間もいるのだろうと、過去の経験からウォーリーは理解している。
正直なところ、ウォーリーはこうした騒ぎが嫌いではない。
戦うための小細工 (と本人は思っていないが)を考えるのは、彼の楽しみの一つである。
エリックなどから言わせれば、戦いの小細工を考えているときのウォーリーは、美味そうな飲み屋を探しているときと同じ表情をしているのだ。
(さて、ハドリが出てきたらどう料理してやろうかな……)
戦力的には圧倒的に不利なのだが、それならそれなりに何か企んでやろうとかえって意欲が湧くのが彼らしいところだ。
OP社のグループ会社の労働者組合と手を組んだのもそうした考えあってのことである。
(物言わぬ従順なはずの部下が敵と組んだらどう考えるかな?)
ウォーリーにはハドリの出方を楽しんでいる節がある。
OP社治安改革センターから敢えて職員を追放するに留めたのも、ハドリの出方を見たかったという欲があったからかもしれない。
「タブーなきエンジニア集団」として真面目にやるべきところは真面目にやらなければならない。
言い換えればそれさえやっていればどこで遊ぼうと構わない、というのがウォーリーのモットーだ。
「OP社による市民の監視」は止めさせなければならないが、その目的に合っていれば、その手段に多少の楽しみを求めることを気にするタマではないのだ。
ウォーリーは自身をそこまで狭量ではないと思っている。
エリックが作業に出て行ってから、相当の時間が経っている。ウォーリー自身の調子も少し戻ったようだ。
そろそろエリックの作業を確認しに行くか、と考え、ウォーリーは部屋を後にした。
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