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第六章
255:ユニヴァースが得たもの その2
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ユニヴァースは態度にこそ出していないが、長年求めていた情報が得られたことに満足していた。
喜怒哀楽が表に出る者なら狂喜乱舞していても不思議ではない状態だった。そのくらいの興奮状態にはあるのだ。
だが、ユニヴァースは少なくとも表面上は冷静そのものであった。
そのため、近くにいるセス達にも気付かれてはいない。
ユニヴァースが求めていた「フジミの大虐殺」に関する情報がECN社の情報端末に残っていたのには訳がある。
当時、サブマリン島にあった殆どのコンピュータシステムやネットワークはECN社が独占的に構築したものだった。島内でやり取りされるほぼすべての通信情報はこれらを通っていた。その気になればECN社の関係者はそのほとんどを知ることができた。
コンピュータシステムやネットワークの管理もECN社が実施していたからだ。
当時の社長はカズト・イナ、すなわちオイゲンの父であった。
カズト・イナは、こうした情報の一部に目を通していた。
社の規定に反しない限り、業務としてこれらの情報に目を通すこと自体は問題ない。
コンピュータシステムやネットワークが正常に稼働していることを確認する上で必要な行為だからだ。
コンピュータシステムに格納された情報や、ネットワークを流れる情報の中には、カズト・イナの目を引くものがいくつかあった。彼は一線を越え、他の者には内緒で独自に情報を保管していった。
保管したものの中には「フジミの大虐殺」に関する情報も含まれていたのである。
システム事業者として許されるべき行為でないことは承知していたが、見方によっては犯罪に繋がる情報である。将来的に何かの奴に立つかもしれないとカズト・イナは自分に言い訳しながら情報を集めた。それでも社の規定に反していることには変わりない。
取り扱いに苦慮しながらも社の情報端末にこれらの情報を格納し、プライベートなものとして保管したのだ。
他者には公開しないことで、カズト・イナは秘密を守ったと無理矢理自分を納得させたのかもしれなかった。それでも許されない行為であることには間違いないのだが。
カズト・イナがこうした情報を持っていることをユニヴァースが知ったのは、彼が亡くなるニ年ほど前だった。
たまたま「はじまりの丘」を訪れた彼がユニヴァースと話をした際に、こうした情報を持っていることをほのめかしたのである。軽率のそしりを受けても仕方ない行為であったが、カズト・イナには何故か自分のしたことが誤りだとは思えなかった。そう思いたくなかったのかもしれない。
話を聞いたユニヴァースは半ば強引に情報の提供を求めた。
最初は頑なに拒否していたカズト・イナであったが、ユニヴァースの執拗な求めに結局折れざるを得なくなった。
そして、カズト・イナが亡くなるまでの約二年間、ユニヴァースは彼から少しずつ情報を得ていたのである。少しずつしか情報を出さなかったことは、カズト・イナのせめてもの抵抗であったのだろう。
しかし、彼が亡くなる時のゴタゴタで数台の端末が行方不明になってしまった。
行方不明になった端末は運悪くユニヴァースが端末に登録されていた情報を閲覧する前のもので、ユニヴァースも事件の全容を把握することができなかった。
端末の行方を気にかけることなく漫然とカズト・イナの葬儀に出席したユニヴァースは自身を責めたが後の祭りだった。
それでも情報を諦めきれなかったユニヴァースが独自に調べると、端末の情報が漏れることを懸念したカズト・イナがすべての端末を破壊した上で廃棄した、という話が流れてきた。
事実、数十台の端末は破壊された上で廃棄されていた。
ユニヴァースもカズトの葬儀の際、その現場を見ていたから、流れてきた情報の少なくとも一部は真実であると信じていた。
葬儀の前にユニヴァースが確認したところでは、廃棄された端末の情報についてはすべて閲覧が済んでいたはずであった。閲覧が終わっていない端末は秘密裏にECN社の倉庫に保管される予定だった。
しかし、調査を進めていくと、予定が変わってすべての端末が廃棄されることになったことがわかった。
ユニヴァースはこれ以上カズト・イナが収集した情報を知ることができなくなった、はずだった。
しかし、天はユニヴァースを見捨ててはいなかった。
カズト・イナの息子であるオイゲン・イナがどういう訳か廃棄されずに残されていた端末の存在を知り、ユニヴァースの旧知の友人であるヴィリー・アイネスを経由して彼のもとにやってきたのだ。ユニヴァースにとっては「戻ってきた」という感覚であった。
ユニヴァースのもとに再び情報が戻ってくるまで四年近くの期間を要したが、永遠に情報が失われるのと比較すれば、遥かにましなことだった。
更に端末を持ってきた青年が携えていた記録ディスクには、他の誰もが知り得ないであろう貴重な情報が格納されていたのであった。
これらの偶然のいたずらにより、ユニヴァースは自らの知識欲を満足させたのであった。
それには暗号を一つ一つ手作業で解読していくという膨大な労力と二ヶ月以上の期間が対価として必要であったが、得られたものはそれ以上に大きかったようだった。
彼がこの地に居を構えた目的の一つが達成できた瞬間であった。
喜怒哀楽が表に出る者なら狂喜乱舞していても不思議ではない状態だった。そのくらいの興奮状態にはあるのだ。
だが、ユニヴァースは少なくとも表面上は冷静そのものであった。
そのため、近くにいるセス達にも気付かれてはいない。
ユニヴァースが求めていた「フジミの大虐殺」に関する情報がECN社の情報端末に残っていたのには訳がある。
当時、サブマリン島にあった殆どのコンピュータシステムやネットワークはECN社が独占的に構築したものだった。島内でやり取りされるほぼすべての通信情報はこれらを通っていた。その気になればECN社の関係者はそのほとんどを知ることができた。
コンピュータシステムやネットワークの管理もECN社が実施していたからだ。
当時の社長はカズト・イナ、すなわちオイゲンの父であった。
カズト・イナは、こうした情報の一部に目を通していた。
社の規定に反しない限り、業務としてこれらの情報に目を通すこと自体は問題ない。
コンピュータシステムやネットワークが正常に稼働していることを確認する上で必要な行為だからだ。
コンピュータシステムに格納された情報や、ネットワークを流れる情報の中には、カズト・イナの目を引くものがいくつかあった。彼は一線を越え、他の者には内緒で独自に情報を保管していった。
保管したものの中には「フジミの大虐殺」に関する情報も含まれていたのである。
システム事業者として許されるべき行為でないことは承知していたが、見方によっては犯罪に繋がる情報である。将来的に何かの奴に立つかもしれないとカズト・イナは自分に言い訳しながら情報を集めた。それでも社の規定に反していることには変わりない。
取り扱いに苦慮しながらも社の情報端末にこれらの情報を格納し、プライベートなものとして保管したのだ。
他者には公開しないことで、カズト・イナは秘密を守ったと無理矢理自分を納得させたのかもしれなかった。それでも許されない行為であることには間違いないのだが。
カズト・イナがこうした情報を持っていることをユニヴァースが知ったのは、彼が亡くなるニ年ほど前だった。
たまたま「はじまりの丘」を訪れた彼がユニヴァースと話をした際に、こうした情報を持っていることをほのめかしたのである。軽率のそしりを受けても仕方ない行為であったが、カズト・イナには何故か自分のしたことが誤りだとは思えなかった。そう思いたくなかったのかもしれない。
話を聞いたユニヴァースは半ば強引に情報の提供を求めた。
最初は頑なに拒否していたカズト・イナであったが、ユニヴァースの執拗な求めに結局折れざるを得なくなった。
そして、カズト・イナが亡くなるまでの約二年間、ユニヴァースは彼から少しずつ情報を得ていたのである。少しずつしか情報を出さなかったことは、カズト・イナのせめてもの抵抗であったのだろう。
しかし、彼が亡くなる時のゴタゴタで数台の端末が行方不明になってしまった。
行方不明になった端末は運悪くユニヴァースが端末に登録されていた情報を閲覧する前のもので、ユニヴァースも事件の全容を把握することができなかった。
端末の行方を気にかけることなく漫然とカズト・イナの葬儀に出席したユニヴァースは自身を責めたが後の祭りだった。
それでも情報を諦めきれなかったユニヴァースが独自に調べると、端末の情報が漏れることを懸念したカズト・イナがすべての端末を破壊した上で廃棄した、という話が流れてきた。
事実、数十台の端末は破壊された上で廃棄されていた。
ユニヴァースもカズトの葬儀の際、その現場を見ていたから、流れてきた情報の少なくとも一部は真実であると信じていた。
葬儀の前にユニヴァースが確認したところでは、廃棄された端末の情報についてはすべて閲覧が済んでいたはずであった。閲覧が終わっていない端末は秘密裏にECN社の倉庫に保管される予定だった。
しかし、調査を進めていくと、予定が変わってすべての端末が廃棄されることになったことがわかった。
ユニヴァースはこれ以上カズト・イナが収集した情報を知ることができなくなった、はずだった。
しかし、天はユニヴァースを見捨ててはいなかった。
カズト・イナの息子であるオイゲン・イナがどういう訳か廃棄されずに残されていた端末の存在を知り、ユニヴァースの旧知の友人であるヴィリー・アイネスを経由して彼のもとにやってきたのだ。ユニヴァースにとっては「戻ってきた」という感覚であった。
ユニヴァースのもとに再び情報が戻ってくるまで四年近くの期間を要したが、永遠に情報が失われるのと比較すれば、遥かにましなことだった。
更に端末を持ってきた青年が携えていた記録ディスクには、他の誰もが知り得ないであろう貴重な情報が格納されていたのであった。
これらの偶然のいたずらにより、ユニヴァースは自らの知識欲を満足させたのであった。
それには暗号を一つ一つ手作業で解読していくという膨大な労力と二ヶ月以上の期間が対価として必要であったが、得られたものはそれ以上に大きかったようだった。
彼がこの地に居を構えた目的の一つが達成できた瞬間であった。
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